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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
プロローグですわー

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アーデルハイド

クラウ「出番っす」

 憂鬱ですわー……とうとうお葬式ですわー……。

 遺体が屋敷に搬送された後に会いに行きましたが、遺体はきれいなものでしたわね……。

 ただただ打ちどころが悪かったみたいですわー……王子は完全に潰れていたそうですわー……庇ったんですのね、本来なら逆なのに。見直しましたわ、今更ですけど……。


 今にも起き上がりそうな姿を見たら流石に何も言えませんでしたわね。みんなもただ泣くだけで帰りも会話がありませんでしたわ……

 侯爵も憔悴して掛ける言葉がありませんでしたわね。ドゥエイン君はワタクシ達の弟分として可愛がることは伝えましたわ。


「やっぱり本当に亡くなったのですのね……」

「それは先日確認しましたわー……」

「ベスは心労でまだ寝込んでいるそうです」

「気持ちはわかりますわー……」

「アンとマーグは儀仗兵としてアーデルハイドの棺の横に控えてます」

「見えてますわー」

「クラウはまだ……」

「連絡もありませんわー」


 やっぱり何かをしていたいんですわね。ワタクシも剣を振るか編み物でもしていたいですわー……おちつきませんわー……。

 ジーナとシャーリーはどこかしら?あっ、いましたわー!


「おはようさん、いい天気やね……アーデルハイドが好きそうな天気やね」

「雲ひとつない快晴(小声)」

「心と違って悲しいくらいに晴れ模様ですわー」

「ええ…」


 お空にアーデルハイドの笑顔が浮かんでるようですわー、目に浮かびますわー。寂しいですわー……悲しいですわー……気が滅入りますわー……侯爵も黙りこくってますわー……陰気ですわー……葬式ですから当たり前でしたわね。

 ワタクシもどうかしてましたわね。


 それにしても会話がありませんわね……話し方を忘れたかのような感じですわ……雨の日の鳥みたいですわね。あら詩的。

 式自体は淡々と進みましたわ……参列者が少ないですわね……第1王子婚約者であって王太子妃になる前ですし仕方ないとはいえ……薄情ですわね。

 沈む船だから逃げ出すのは正しい判断だと思いますわ、でも船を降りる際に一言くらいあってもいいと思いませんこと?


 アンとマーグも人死には慣れてるとはいえ流石につらそうですわ……涙をこらえてるのはよくわかりますし。


 本来はブランケット侯爵家から儀仗隊を出すはずだったのですが、土壇場で担当する貴族家達が派閥の鞍替えをしたそうですわ。

 葬儀の儀仗隊もやらないなんてずいぶんと恩知らずですわね、よーく覚えおきますわ。


 葬儀までの間に色々なことがありましたわね……近衛騎士団長の失職、自裁、粛軍。第2王子との婚約、王家に恩を売り宰相にダメージを与えて公爵派閥は強くなりましたわ。お友だちの皆様もそれぞれ、うん!それぞれ強くなりましたわ。

 キャスは本人が強くなればいいですわね、宰相のことは諦めてくださいまし……。


 埋葬のために移動する時間ですわ……これが今生の別れですわ……

 埋葬で使う言葉かはわかりませんけど、最後に顔を見て……もう一度見て……おきますわ。

 誰か走ってきますわね……もう葬儀が終わるとこですわよ?


「クラウ……」

「お久しぶりですわー、最後にアーデルハイドの顔を見るところですわー」

「葬儀だけは間に合ったっすね……」


クラウディア・レズリー伯爵令嬢、経済大臣息女でワタクシの親友の一人ですわ。普段は事情があって男装してるんですけど……。


「今日はスカートですのねー……素敵ですわー」

「珍しい(小声)」

「流石に葬儀に男装では来ないっす……」

「いつ王都に着いたんや?」

「さっき、馬を飛ばして、馬車の支度してる間に着替えて汗拭いただけっす」

「馬を……いえ、間に合ってよかったです」


 キャス、いま文句言いそうになってましたわね。でも飲み込んだあたり丸くなったのかもしれませんわ。葬儀だから遠慮しただけかもしれんませんけど。

 親友ですもの、葬儀に間に合うかもしれないなら自分でもそうするかと思ったのかもしれませんわね、キャスは自分では馬に乗れないはずですけど。


「あの……シャーリー……商品なんすけど……置いてきたんでまだかかるっす……」

「かまへんよ、そっち優先しろとかぎゃーぎゃー言うやつはさすがに縁切ったほうがええで。クラウが間に合ったんだったらどうでもええわ」

「ワタクシの頼んだものもどうでもいいですわー」

「同じく(小声)」

「私は特に頼んでないので問題ありません」


 それにしてもよく間に合いましたわねー絶対間に合わないと思ってましたわー。何かツテでも使ったのかもしれませんわねー。ああ、順番ですわ……行きませんと。


「そろそろですわ……最後にアーデルハイドの顔を見ますわよ、私達は一度見ましたけど」

「今生の別れっすね……あれ?ベスは?」

「寝込んでる(小声)」

「そうっすか……」


 こうして明るい空の下見ると全然死んでるようには思えませんわね……。寝たふりをしていきなり起き上がってワタクシたちを驚かせるような、そんな気がしますわ。そんなことして驚かせるのが好きでしたわね。

 涙が止まりませんわね、本当に、本当に、悲しみだけが心を支配してますわ。

 これだけ友人がそろってもどうにもなりませんのね。





「アーデルハイドならアーデルですわね」

「その名前は嫌!」

「じゃあハイド(小声)」

「男じゃない!」

「デルハどうっす?」

「何がなんだかわからない!」

「アイドはどうだ?」

「ダサい!」

「もう……変えようがない……」

「アルイドはどうでしょう?」

「一番センスがない!」

「センスがない!?」

「あーあーキャスのセンスがないのは禁句っすよ」

「そうなの?ごめんね……でもセンスないよ……」

「……」

「家名と混ぜたらどうや?アーケットみたいな」

「それ愛称じゃなくね?」

「そもそもなんでアーデルは駄目ですの?」

「祖父の名前だから嫌、かわいくない」

「アーデルおじいちゃん……」

「愛称と被るだけで嫌がられるの可愛そうっすね」

「でもあーしも祖父がジーナだったら考えるわー」

「アーデルおじいちゃんがボケたらとばっちりだね(小声)」

「じゃあアーデルハイドでいいですわね、いつかアーデルにしますわ」

「嫌よ!」

「距離があるみたいで……嫌ですね……」

「…………わかったわよ、じゃあいつか!いつかね!私の覚悟が決まって、アーデルといえば絶対に私だって時!その時には……その言葉で呼んで!そのときこそ本当の親友よ!」

「今でもそうですわー」

「愛称じゃないのが嫌なの!親友じゃないみたいじゃない!」

「ウチ愛称やないで」

「私もアンだからな……」

「…………それとは別よ!私の価値観!その時は親友として呼んで!終わり!」

「だからもう親友ですわー、愛称になるだけですわー変わりませんわー、呼ばせない間は親友じゃないって思ってるのはアーデルハイドだけですわー」

「エリー、もうそのくらいで……」

「もう!でもいつか!アーデルって呼んで!」

「待ちますわー、あと12年は待ちますわー」

「学院卒業してるじゃない!そこまでは待たせないわよ!」




「第1王子の婚約者に選ばれたらわらわって一人称に変えるわ!いえ、今からわらわにする!」

「選ばれるのはワタクシですわー!王妃になってこの国を強大にして大陸制覇ですわー!女帝ですわー!」

「私がなるの!」

「フフ(小声)」

「わらわじゃなくて?」

「わらわがなるの!」

「ワタクシですわー!」

「貴公はわらわになるのか!?あっはっは!」

「貴公なんて言葉使うのに言われたくないわ!」

「ほんとっすね」

「男装してるやつにも言われたくない!」




「わらわは最近面白い本を見つけたのじゃ!」

「のじゃは流石にババア過ぎますわ……ねぇキャス?」

「ノーコメントです」

「あーしは好きー」

「わらわは最近面白い本を見つけたぞ!」

「仕切り直しましたわー……でもそこはかとなくババアっぽいですわー」

「ベスが見つけた本よ!王宮の陰謀って本!」

「しれっとキャラ変ですわー第1王子婚約者に確定したら迷走が続きそうですわー」

「おもしろいから読んでみて……アーデルハイドもおすすめ……」

「それおもろかったらウチ仕入れたいんやけど」




「トップに立つものは剣技も鍛えなければなりませんわー!」

「護身術で十分じゃない?わらわはそっちを鍛えるわ」

「近衛が役に立つとは限りませんわー!優先度は王族!危機になれば王太子妃や王妃なんて盾でしかありませんわー」

「穿ち過ぎでしょ……」

「いや?そうだぞ?」

「当たり前でしょ?あーしもアーデルハイドと王子だったらしぶしぶ王子助けるよ?そういう家系だしさ」

「まぁそうでしょうね……」

「世の中はそんなものです……」

「商隊が盗賊に襲撃されることもあるっすよ?」

「ウチの商会は護衛マシマシやでー王族より積荷や!」




ブブッ!


「なんですのこれは!!」

「エリー、淑女がそんな大きな……音を出すのは……」

「キャス!違いますわよ!ワタクシは屁なぞこきませんわ!仮にこいたとしたら天使の歌声ですわ」

「臭いっす」

「天使の歌声が屁だと思うと……今後賛美歌聞けないですね……」

「天使の歌声って汚いんだね(小声)」

「なんですの!この……風船みたいなのは!…………シャーリー!」

「ウチやないで!」

「あははははは!クラウに頼んで仕入れてもらったのよ!エリーがわらわの椅子を引いた音をおならだっていうから!仕返しよ!」

「よく考えたら臭くなかったっす!」

「クラウ!アーデルハイド!お待ちなさい!」

「あーしを抱えながら追っかけないで!」

「クラウーこれ仕入れたいわー何処で買ったん?」




「アーデルハイド!またキャスが怒ってますわ!なだめてくださいまし!」

「またー?どうせなにかしたんでしょ?」

「茶会に男装で来たクラウにブチギレてますわ!アンやマーグは許されてるのに文句を言うのはおかしいって言い返したら火山が大噴火ですわー!」

「2人は進路が騎士と軍人だからねぇ……」

「エリー!あなたが茶会の参加規定に対して何も言わないから!」

「とばっちりですわー!ここまで追いかけてきましたわー!」

「逃げてきたの……?じゃあ……もう、わらわの手には終えないわ」

「助けてくださいまし!助けてくださいまし!キャスの説教は話が長くて同じことしか言わないから嫌ですわ!」

「エリー!!!そんなことを思ってたの!」

「ハァ……キャス、クラウも好きで男装してるわけじゃないんだから……もう少し視野を大きく持って、いつか失敗するわよ?」

「ルールを守って失敗したのなら仕方がないでしょう!」

「わらわは第1王子の婚約者が確定するとルールでがんじがらめにされるけど……妊娠報告の手紙にまで正式に検閲と王家の判と記録として残すように写すわけではないわ、嫌でしょそんなの?」

「それとこれとは別です!」

「同じよ……緊急時は緊急時、最低限伝える情報はすぐに伝える、鉄則よ」

「たしかにそうだな、軍でもそんな感じだ!」

「軍とは違います!令嬢なのですよ!」

「同じですわー!細かいですわー!そもそもクラウが男装したくてしてるなんて言ったことはありませんわー!」

「…………そうですか」

「そうっすよ、必要でやってるだけっす」

「いつの間にきましたの!?」

「本当にそうだったのですか……?すみません……」




「第1王子婚約者、おめでとうございますわ」

「ありがとう、エリーに祝ってもらって嬉しいよ」

「今後はわらわにしますの?」

「…………ちょっと様子見かな」

「拙者はどうっすか?」

「迷走していた頃の貴公ではないか!」

「どちらかといえば奇行でしたね……行動含めて……」

「それにしてもワタクシが選ばれないなんて思いませんでしたわー!能力だけなら勝っていましたわー!愛嬌では完敗ですけど」

「じゃあ、愛嬌で勝ったのかな?エリーに勝てるとこがあって嬉しいよ」

「素直に認められると悔しいですわー……愛されキャラを狙いますわー……」

「それはもう十分なんじゃない?」

「俺もそう思う(小声)」

「そうでしょうか?」

「キャスもひどいこというわなぁ」




「これからエリーはどうするの?トップを狙うってことは謀反?托卵?」

「そんなことはしませんわー!先に手を挙げられたらやり返しますけど……その場合私が勝っても友人たちは見逃しますわー!その程度で壊れるようなやわな友情じゃありませんわー!」

「じゃあ手を挙げないように貴族たちを見張っておかないとね……眠った獅子はそのままにしておかないと」

「ワタクシは眠りませんわー!公爵家の兵を使って隣国と戦って領地獲得ですわー!サミュエル王国の貴族と並行して独立国を作れば問題ありませんわー!」

「それは無茶じゃない?」

「もし第2王子と婚約して婿にしたらバーゼル山脈を超えて蛮族を下し新王国を作りますわー!周辺国が蛮族に悩まされてることを考えたら第2王子に独立国を作らせてしまえばいいのですわー!公爵夫人と王妃の座を獲得ですわー!第2王子がダメダメなら適当に幽閉しておきますわー!これで私が女王ですわー女公爵ですわー」

「蛮族を平定?流石に無理だよ、私の婚約が決まった後でそんなことみんなに言ってたのかい?王子はまぁ、まぁ……幽閉されるんだろうね」

「これはアーデルハイドにしか言ってませんわー、勝算は十分ですわー!すでに手を打ってますわー!あとはお友達の皆様の助けが少しでもあれば確実ですわー!あと第2王子やっぱダメなんですのね、女王、いやエリーゼ皇帝誕生ですわー!」




「前言ってたけど本当に蛮族を平定できるの?前に旅行で行った時も結構服属させてたけど……」

「計算上9割は平定できますわー、だめでもその9割で独立してしまえば数ヶ月で平定に持っていけますわー!あとは政治事情でお父様が失脚しなければ余裕ですわー、ワタクシの名誉が地に落ちても独力でなんとかできますわー、でもなるべくあっさり完全平定がいいから名誉は維持したいおきたいですわ-。ある程度はもう動いてますしね……蛮族はほら、一部はもう下してるでしょう?」

「そうね…………もし、もしもだよ?エリーが、内務大臣が失脚するようなことがあったら、追い詰められたら……バーゼル越えさえすればなんとかなるの?」

「なりますわー!蛮族平定して王国に兵を挙げてアイル・ビー・バックしますわー!」

「あははははは!あっはっはっは!わかったよ!もしもエリーが、公爵家が負けたら、わらわが庇えない状況になったら、バーゼルの向こうに逃がしてあげる」

「勝手に逃げますわー」

「じゃあ、見逃してあげる!誰を連れて行っても私が、わらわが全部ごまかしてあげる!来週の王太子の儀が終わったら事実上王太子妃として扱われるから、コネを作っておくわ!」

「そしたら王国を征服するために帰ってきますわー、ライヒベルク王国じゃなくてエリーゼ帝国にしますわー。偉大な帝国の一部になることに喜ぶがいいですわー!」

「いいよ、エリーに勝ちきれなかったほうが悪い、わらわをエリー排除で説得できなかったほうが悪い、数年で作ったエリーの軍に勝てないほうが悪い!それに……」

「なんですの?」

「友達は見逃してくれるんでしょ?わらわの夫と子供くらいは守らせてよ」

「もちろんですわー!その時はアーデルハイドはエリーゼ帝国公爵ですわー!」

「まぁ、本当に功績を上げたらライヒベルク公爵兼適当な地域の独立を説得してもいいよ、うまくいくかわかんないけどね」

「頼もしいですわー!これでトップに立てますわー!おーっほっほっほ!でもアーデルハイドに子供ができる前に終わらせたいですわー!」

「じゃあ卒業から2年くらいね、あと……帰ってきたらアーデルって呼んでよ」

「!?……もちろんですわー!みんなで呼んでやりますわー!」






 そんな未来にあなたがいたらどれほどよかったかわかりませんわ……

 子供どころかあなたまでいないじゃありませんの……

 試案や一部はともかく建国計画の全容まで明かしたのはあなたが初めてでしたわー……チクられてもいけると思っていったけど……結局誰にも言いませんでしたのね。

 さようならアーデル、私の、ワタクシ達の親友

アーデル「私の出番だったわね」

クラウ「……」

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