血まみれエリーゼ
「私が公爵令嬢にして公爵代理のエリーゼ・ライヒベルクですわー!卑怯卑劣矮小ゴミカス蛮族共の皆さまー!以後お見知りおきをー!貴方達の大族長ですわー!」
せせこましい真似をする割にあっさり族長決闘を受け入れるガルバドス大族長。
4歳が決闘申し込んで断ったら……まぁ、族長としてどうなのか思いますね、降した部族長が一日で降されてる状況では……。
「私はガルバドス!この辺りの大族長だ!南の蛮族は礼儀を知らないと見える、教育がよろしくないようだ!」
はっ倒してやろうか?誰のせいだと思ってるんだこの……。
いえ、冷静に……冷静に……。
よく見ると、ガルバドス大族長はところどころ負傷している。意外といい線いってたんですねリスクス族長。
流石にリスクス族長を降して翌日私に送り込ませて……リスクス族長が負けたその日のうちに族長決闘を申し込まれるのは計算外だったようですね。計算内だったら単純にそれを覆せるだけ強いだけでしょう。
後ろにいる数千人くらいの蛮族は観光客だと思いましょう。
「私の教育は私の身内に見せるものであって今は敵でしかない蛮族程度に見せる必要はありませんわー!それとも……私の礼儀正しさに免じて降伏するような蛮族がいるとでも?」
相手を見て自分より強いから負ける、だから逃げるならまだしも、礼儀正しい4歳を見て降伏する蛮族がいるとでも?
「最低限礼儀というものがあるだろう?」
「貴方がたの礼儀に従う理由はございませんわー?貴方達が私達のルールや礼儀を守ったことがありまして?今回のことがあなた方の礼儀なら私にとっては非礼そのもの!礼儀を向けてほしいのは傲慢ではなくって?」
本当に腹が立ちますね……。やはり蛮族の法、いや法未満のルールは私の手のもとで再編する必要がありますね……。
「我々が我々のルールで動いてなぜ悪い?子供にはわからないだろうが……」
「私がいつ貴方がたのような能無し無能の脳みそすっからかんの側になったんですの?私を、私達を勝手にそちらに入れないでくださいまし!私の部族は貴方がたのような品もなければ知恵もなければ勇気もない連中と一緒にしないでくださいまし!私はエリーゼ・ライヒベルク!蛮族を征服するものにして蛮族に光をもたらすもの、そしてこの大陸の頂点に立つもの!小物のマイナールールなんてお呼びではないですわ!」
「クソガキが!」
「いいからとっと閣下っていらしたら?4歳の子供に口で勝てないならその玩具の大剣でかかってくるといいですわ!我が騎士ガリアより小さく貧弱なその大剣で、小さな脳味噌と小さな器と矮小な心でこの私を降してご覧なさい!」
「ふっざけやがってぇ!!このクソガキが!俺がガリアより劣ると言うか!」
「我が騎士ガリアなら昨日直接来ていたはずですわー!ねぇみなさん?」
「「「「「おおおー!」」」」」
私もガリアなら直接家に押し入って決闘を申し込むくらいしてると思う。
なんとか勝った相手をこんな戦法で使い潰したりせずに怪我を直してから挑むか、ハンデとかいいながら決闘を申し込むだろう。
この男はガリアに何一つ届かない、それならガリアに大剣相手の対処を鍛錬をしていた私なら……全く不可能というわけではない!
「かかってきなさい、図体だけの大族長!私の未来に貴方はいりませんわ!蛮族としても失格!男らしくも蛮族らしくもありません!ここで死になさい!いいえ、殺しますわー!」
「一撃で殺してやるクソガキ!」
大剣を横に構えたガルバドスは一気に詰めよりそれを振った。
「クソが!」
私は振られた大剣のタイミングに合わせ、その下に滑り込み、ガルバドスの手を切り落と……浅いか……。
おや?何を驚いているんです?令嬢がきれいなワンピースを着ているからこんなふうに滑り込んで土まみれになって貴方を攻撃するとは思わなかったんですか?
甘すぎませんか?
「やりがったな!」
「当たり前でしょう?私が棒立ちで殺してくださいとでも言うと思ったんですの?」
「もう殺す!」
「殺さないつもりだったんですの?今ので?私のような子供もなら死んでますわよ?手加減も知らない辺りさすが蛮族ですわね!」
「殺してやる!」
「言葉より手を動かしなさい!蛮族の長は口で勝ち取りましたの!どーりでせこい手を使うと思いましたわ!だってあなた!弱いでしょう?」
その言葉を聞いた瞬間、ガルバドスは隙だらけで大ぶりの大剣を私に振り下ろしてきた。
当たりませんよ、そんなもの!ガリアと比べたら遅い!遅すぎる!私の体力が持つ間に煽って……殺す!
大振りの大剣を真横に避けて、近づく。
やっぱりね、ガルバドスは小手先の技がない!剣を横にぶつけることも、手放して握り直してこちらに斬りかかることも出来ない!
勝負は一瞬だった。私の両手での突きは恐らくガルバドスの重要な血管を捕らえ、無理やり左に動かした際に完全に切断した。
生臭い、それしか感想がない。血しぶきを浴びた私は死にゆくガルバドスを見て少しだけ憐憫を……覚えたか覚えなかったか。どちらかといえば自分の血まみれの服のほうが気になった気がする。
「私の勝ちですわー!恭順なさい!それとも、こうなりたい人物はでてきなさい!」
これで反発されてでてこられても恐らく……同レベルなら次は負けるな……体を鍛えよう、今よりもっと……。
的確に相手を倒そう、最小の動きで。
相手を読み切ろう、どのような戦い方をするか、どのような攻撃ができるか……。
なんだかビクビクしたような男が出てきたが私は油断をせず、剣を向ける。
「お次は貴方ですか?」
「いいえ……我々旧ガルバドス大族長傘下部族は……新族長に降ります。傘下部族は全員決闘で降されたものなので文句はございません……我々はこの後どうなるのでしょう……」
よかった、でもどうしようかしら……。
本当にどうしようかしら、この数千人全部?食料にしろ何にしろ私が面倒見る必要があるのかしら?
エリーゼ「卑怯卑劣矮小ゴミカス蛮族共の皆さまー!」
傘下蛮族「(負けたら皆殺しあるぞこれ……)」
血まみれエリーゼ「こうなりたいやつはでてきなさい!」
傘下蛮族「(ガルバドスより強いのか……宣言するくらいだし殺さないのかな?)降伏します!どうなるんですか?」
血まみれエリーゼ「(どうしよう?)」
傘下部族「(ゴミを見る目だ、やっぱ殺されるんじゃ)」




