~軍務省、司法省炎上事件~後編一部抜粋
一般貴族令嬢「限度がある」
「ようこそ、ワタクシが公爵令嬢のエリーゼ・ライヒベルクですわー!お久しぶりですわね?」
「は、はい……エリーゼ様に置かれましては……ご機嫌うる、麗しゅう存じます」
ものすごい圧を感じる、こんな……座ってるだけで気圧されるような方だったかしら?
椅子を勧められそっと座る私にエリーゼ様は言葉をかけてきた。
「そ・れ・で?なんの御用ですの?ワタクシ紹介状があるからお会いしましたけど便宜を図るとかは別ですのよ?友人同士でも互いに利益があること前提で進めるくらいですしね」
「聞きたいお話がありまして……」
「ワタクシの?この前蛮族を素手でのした武勇伝でしたら別に話しますけど?」
えぇっ!?そんなことしてたの!?冗談だよね……?貴族ジョークですよね?
「本当ですか、貴族の女性ってそんなに……?」
「えっ!?貴族ですわよ!?いざとなったら戦場に出て鼓舞して場合によっては決闘をしたり突撃に加わったり、命かけて戦う存在が弱くてどうするんですの!?弱くて領地を助けなくて頭の弱い貴族に統治されたい人なんているんですの!?」
えっ、貴族令嬢ってそんな命かけてたの!?学院でお茶会ばっかりして裏方でやってるほうが多いと思ってた!
ローズも男爵令嬢だしやっぱり強いのかしら……?
「全貴族も軍人も含めたら王太子妃殿下の護身術は最強ですし、ワタクシでも流石に負けますわ。ワタクシその代わりなんでもありの戦いでは無敗ですわ。いつも本を読んでるベスも弓矢の腕は王国で10本の指に入ると思いますわ、こんな感じで皆令嬢は鍛えてますわよ?」
えっ、そうなの……?どうしよう、私全くそんな事やってない……。
「そんなに鍛えないと駄目なんですか……?」
「だって継承じゃ女性が当主になることも普通にあるんですもの、敵が攻めて来たのにわたしぃ~女の子だしぃ~こわくてぇ~戦場にでられなぁ~いなんていう当主見てそうだって蹂躙される側の平民は納得しますの?」
「しません」
確かに……絶対納得しない。子供ならまだしも成人女性が言ってたら怒る。おばあちゃんなら仕方ないけど絶妙に許せない。
「私……何も鍛えてないんですけど……」
「当主にはならないから多分大丈夫だと思いますわ……嫁の平民が鍛えてないなんていう貴族がいたら多分アホ以下の存在だから気にしなくて大丈夫ですわー!貴族には貴族と貴族の名を語るカスがいるので気をつけた方が良いですわー!」
「そ、そうなんですか……」
よかった、今から護身術とか剣術とか習ってどうにかなると思えないよ……。
「ところで本当にワタクシの武勇伝聞きに来たんですの?」
「正直聞きたいのですが……本命は7年前の軍務省、司法省炎上事件です」
「うっわ、面倒くさいこと聞きますわねぇ……」
「こちらのセーターをお収めください、今朝マッセマー商会からはお墨付きをいただきまして」
おずおずとセーターを差し出すとひょいとあっさり受け取り広げ始めた。
「すっ……素晴らしいですわー!!!この意匠!構図!図案!細かさ!色使い!こんな素晴らしいものを朝シャーリーは見た上でもう1つ持ってるんですの!?」
「は……はい……」
力作だけどそこまで言われることかな?裏でシャーリーさんが話をつけてくれたのかな?
「これ、もっといいもの作れたりしますの?これ期間は1月くらいでしたわよね?」
「は、はい……え、ええと時間があれば……色々試行錯誤したので同じようなアイディアなら1月以内で作れますが……マッセマー商会に収める分があるので……」
「問題ありませんわ、ワタクシがその数を変えさせます」
「あの、友人同士でも互いに利益がないとと……」
「ありますわ、ワタクシの領土に商会の出店を許可します。まぁ月1着程度なら恩として収めてももいいとは思いますわ、でこっちは後で顔出した時にまとめておきますわ。改めて考えましょう。それで軍務省、司法省の炎上の話でしたわね?あれは第2王子殿下を担ぎ上げて王太子殿下、当時は第1王子殿下を失脚させようとして国家の逆鱗に触れて見せしめで燃やされたのですわ」
本当に国家規模の壮大な陰謀だった……。
「そ、そんな出来事が……あったんですか……?」
「もちろん、そうでもなければ適当に放火魔が処刑されているはずでしょう?もしくは失火で処理されてるか。どっちもされてなかったでしょう?」
「は、はい。最初にノーマンが調べたときには……」
「あら?司法大臣は教えてくれなかったのね?」
「お義父様は自分で調べるようにと、事情は職務上あかせないと。シャーリーさんが皆様を当事者や関係者にあげてたのはなぜなんですか?」
全員令嬢なのは友達だからかもしれないけど……。
どの家も関係が読めない……。
「あー…………ちなみにこの情報何に使うんでしたっけ?」
「あっ、いい忘れてました。ノーマンは実力で司法省入省を目指しているので司法省にこの調査結果を実力として提示しようと思っているんです」
「その場合司法省に入れるのは独力でワタクシにまで面会にこぎつけたあなたでは……?」
「そうなんですか?でも妻は夫を支えて助けるものでしょう?」
「…………まぁ、いいですわ……あなたが次に持ってくるセーター次第で口利き位はしてあげますわ。ワタクシから聞き出せたくらいのことをいえば評価位は上がるでしょう。これも実力だし実力入省に当たるでしょう」
「そうなんですか!ありがとうございます!立派なセーターを作るので待っててください!」
「そこだけは楽しみに待ってますわ!で話を戻しますけど……まぁ……正直に言えばこの2つを燃やしたのはアーデル、ワタクシの友人にして現王太子妃ですわー!まぁ当時はワタクシと同じ婚約者候補でしたけど」
えっ!あの優しそうな王太子妃殿下がそんな事を!?
「そしてそれを手伝ったのが紹介状のメンツ、マッセマー商会、いいえ、シャーリーは油を届けてたのですわ。ワタクシは脅されて火を付けていた一人、あの時点で内定寸前でしたからね、王家を盾にされたら流石に逆らえなかった。だから知ってる貴族は全員口を噤んでいるんですわ。王太子妃で未来の王妃が軍務省と司法省燃やしたなんてスキャンダルですもの、結局婚約者内定後に王家の人間たちがワタクシに責任を押し付けた、それだけの話しですわー!立場が逆ならアーデルがこうなっていただけの話ですわー!」
「そ、そんな事になってエリーゼ様は平気なのですか!」
そう言うとエリーゼ様はキョトンとして考え込んだ。
「何が平気じゃないんですの……?どういうことですの……?」
「そんな偉い人から責任を押し付けられてです!」
「え?別に……。押し付けた連中全員貸しにしただけだからそれいいだして文句行ってきたら潰しますわ、貴族ってそう言うものですし……」
貴族ってそんな覚悟も必要なものなの……?貴族がこんな大変なんて学院にいる間は全くわからなかった。たしかにそこまで接点がなかったからではあるんだけど……私も貴族の生活は聞いてもそう言う話は聞かなかったから……。
「まぁ、兎にも角にもあの事件はアーデルが2つ省を焼いて婚約者に内定した事件ですわ。それが真実。他に聞きたいことがあったらまた会いに来てくれればいいですわー」
これ司法省に持ってっていいのかな?
「じゃあ、蛮族との武勇伝を……」
「いいですわー!とくとお聞き遊ばせー!」
私はエリーゼ公爵令嬢の蛮族領域冒険記を聞いてワクワク・ドキドキしながら時間を過ごした。
「ララ!司法省に受かったんだ!」
「本当!ノーマン!」
「明日から出仕だ!これも全部……君のおかげだ!」
「エリーゼ様のおかげね、この後会ってくるから私もお礼をいってくるわ!」
「ああ、私もからもお礼を言いに行きたいが……婚約者の立場で行くのはまだよくない、そうだね?」
「わかったわ!楽しくお茶会をしてくるね、ノーマンがお礼を言ってたことも伝えておくね!」
「うん、頼むよ!」
「俺が司法省次官のジョージアナ・スペンサー、知ってるか……」
「……」
「気まずそうだな?俺は婚約破棄に感謝してるくらいなんだが、おかげでやりたいこともやれるしな。デストラン秘書官、俺では気まずいそうだから案内役は変えてあげてくれ」
謎の『(૭ ◉༬◉)૭⁾⁾⁾⁾』のページのスケッチブックを見えるように司法省次官のプレートの一つ奥に広げたジョージアナ・スペンサーはそう伝えると書類をささっと片付け始め、検察に行ってくるといい立ち去っていった。
なんだからいたたまれないものを見るようにフルシアンテ・デストラン司法大臣秘書は私が案内役をやりますので……頼むので次官をいらっとさせないでくださいねと言われ。私は司法省の下っ端から始まるのに少しだけ丁重に扱われ、書類管理課に配属された。
「うーん!今日も素晴らしいですわねー!ララの作る製品は!このまま我が家で働きませんこと!」
「婚約者の家のこともあるので……」
「じゃあ司法省の給料が安かったらこっちで稼げばいいのでうすわー!どうせ下っ端はそんな稼げないし夫のために出稼ぎする妻は美しいものですわー!」
そうなのかな?
「この質なら1着金貨100枚で買い取りますわー!」
「100枚!?」
「これ以上ならもっと積みますわー!」
「やります」
「じゃあシャーリーも呼んで商談開始ですわー!」
こうして数年後、私は北部の冬将軍を倒せる毛糸の魔術師として名声を手にした。夫は司法省で経験を積んでいくので将来は司法大臣も狙えるかもしれない。
今はノーマンの収入に不安はないけど、でも私も頑張って働いて家を支えるからね!
エリー「北方組合?このセーターよりいいもん持ってこないからポイですわポイ!」




