一度やってみたかったんですの?かっこいいでしょう?
軍務大臣「なにこれ?」
帝国軍兵士「血ですね」
軍務大臣「見れば分かるわ!」
令嬢の皮をスッポリ脱ぎ捨て、アンとマーグに連絡。騎士団は邸宅の抑えを……いいえ、ここは近衛騎士団を動かしましょう。
大臣暗殺未遂は国家反逆ですわー!近衛騎士団は陛下の身を守るため動いていただきましょう。ゲドリドル近衛騎士団長にお任せして……2人と動かせる兵は仮省庁に来ていただきますわ。
さーてカマしますわよー、久々の立ち回りにウキウキワクワクドキドキハラハラですわー!やっぱ体動かしたほうが楽しいですわねー!
「捕物を始めます、場所をお借りしても?」
「ええどうぞ、抱えてる案件は終わったので最高裁判所長官室には他には誰も来ませんとも……なんなりとお使いください、破損請求は検察に押し付けるので。先程届いたものです」
「あらあらお手紙ですね……いい情報だと……あら!喜ばしいですわ、アン?」
「そうか、よかったな。…………本当にやるのか?」
「ええ、ではワタクシは一度お父様にあってきますわ、検察が役立たずなので司法大臣暗殺未遂の件で内務省として動くように向かったと噂が流れてるはずですわ、ベスとキャスがそれとなく父親が検察官のご友人に公然の事実として伝えましたわ、皆様大慌てで手紙を出してたそうですわ、後で押収して確認しましょう」
「マーグは?」
「ジーナと一緒、騎士団を連れてったほうが本気が伝わるでしょう?」
「帝国軍は?」
「軍務大臣のもとで執務室の謎の血痕の調査中、といいつつ検察官の逃走を抑えるために完全に退路を抑えてますわ、後検察から出たゴミを回収してますわね」
「…………仮省庁が仮仮省庁にならなければいいが」
「さぁ?火でも付けなければいいのでは?」
「誰がつけるんだ……」
「というわけですわ、お父様」
「よくわからないな……」
「ですからワタクシがここに来たら検察が大慌てするでしょう?司法大臣の権限を持って干渉させないようにと働きかけるでしょう。実際ジーナもやるとなれば介入は拒否すると思いますわ。でも自分たちが必死に働かず、あなたの暗殺未遂事件の証拠をもみ消しているからあなたの暗殺未遂事件への捜査介入を退けてくださいとのたまうのは恥を知りませんわね、多分部屋の外で待ち構えている検察官がいると思いますわ。どっちの人間かはしりませんけど」
「それで?内務大臣執務室の手前の部屋で我が娘を脅しでもするのか?」
「さぁ?ワタクシを脅せると思ってるのならぜひ脅してほしいですわね」
「私も出来るならぜひやってほしいね、お前を論破できたら新しい婚約者になってもらおう」
「どうせベテランのお祖父ちゃんか若手の小物でしょう、では行きますわ」
「わざわざおびき出して論破するのか?」
「いいえ、窓借りますわよ?お父様」
「は?」
窓を開けて小さなひさしに乗り、空いてる下の階に飛び込む。
「淑女がそんな事をするな!」
なんでお父様怒ってるのかしら?ひさしに手をかけて窓の空いた部屋に入る程度でワタクシがしくじるわけないじゃありませんの。片手にカバン持ってるだけでしくじるほど耄碌してませんわよ?蛮族と戦うんだったらこれくらいできないと死んじゃいますわよ?
「それに今の優雅な入室は淑女だと思いますけどね?」
「淑女の定義を見直したほうがいい」
「騎士ならいんじゃね?」
「いいますわね、じゃあ騎士の皆様上の階へ」
窓からひさしを伝い上に上がっていく数人の騎士、父の驚く声が聞こえるが察しが良いから検察官を捉える騎士だとすぐ気づくでしょう、防音はしっかりしてるから窓側はともかく張ってる検察官には聞こえないでしょう。
「何人かしら?」
「2人、じゃあ俺達は検察の捜査にいってくるよ、司法大臣が事件を立件できないなんてのたまってくれれば鼻で笑うんだけどね(小声)」
「こんな封建バリバリ社会で地位に特権がないと思ってるほうが笑えますわね、他ならぬ地位を悪用してた連中に」
「自分がやるときは当然の権利で他人がやるときは特権とのたまうのは上も下も変わんないでしょ(小声)」
「あーしの前の婚約者みたいなもん?」
「あれはアホっていうんですの、じゃあとで」
「うんあとで(小声)」
「まーたねー」
さて、行きましたわね?じゃさっと着替えて最高裁判所長官室へ行きましょうか。
「さーて始まりますわよ?ロープの準備は?」
「できてるぞ……」
「スーツを着た公爵令嬢は新鮮ですね」
「伯爵令嬢の方は見慣れているでしょうに……」
「ええ、まぁ……そうですがね……」
さて、そろそろ行きますわよー!先陣はワタクシ!まぁ普通の剣でいいですわね。
「司法に対する挑戦です!こんな暴挙が許されるわけがない!」
「こっちの台詞、私の暗殺未遂に検察が関わっていることは明白」
「どのような証拠で!」
「あなたは犯人に裁判以外で証拠を提示するの?」
検察とは思えない反論だ、所詮は先代の七光りと国王の操り人形か。まぁ同世代が第2王子に使い潰されてるのを見ると愚者と愚者は惹かれ合うのかもしれない。
「謀殺だ!間違いない!」
「シュテッチ検事総長、あなた責任を取らなければならない」
「…………そうですな」
「シュテッチ検事総長!司法大臣の行動は我々検察の……!」
「残念だ、次長検事。君を司法大臣室資料の隠匿で私の手で立件せねばならぬとは」
「え?」
「部下の不始末で私は責められるが……襟を正すほうが大切だ、そうでしょう司法大臣?」
「懸命な判断、俺も検事総長の判断を尊重する」
「暗殺者が言うには司法大臣室の資料は超法規的措置の事件に関わりがあるらしい、君が運び出したことはわかっている」
「冤罪でしょう!私はそのようなこと知らない!私のデスクを調べても構わない!」
「いえ、私のデスクを調べるべきでしょう。一定の日付の当たりに隠せばバレないでしょう」
「検事総長……?いえ、いいえ!司法大臣の陰謀です!検事総長室に侵入して書類を置いたのです」
「そもそも司法大臣室から持ち出されたものかわかりませんがね」
「……確かに!では問題ありません」
「君は私の部屋の捜査を止めたいのか進めたいのかどっちなんだね?」
「もちろん止めたいと思っています!」
「そうかい」
今疑いがかかってるのはシュテッチ検事総長じゃなくてあなたなんだけど?検事総長の部屋から出てきてもあなたの容疑は別になくならないんだけど?
検事総長室に入って少し間を置くまでもなく、シュテッチ検事総長は一つ二つ適当なファイルを開くと俺に資料を手渡してきた。間違いなく付け届けの記録だ。多種多様だな、いささか派手にやっていたようだ。山になっていく紛失書類を眺めるうちに付け届けと言うには収賄が過ぎると窓を開けながら思った。
「なんてことだ、これは陰謀です!検察をはめるための罠です!」
「俺の暗殺未遂があってから何日経ってると思ってる?資料自体は俺が大臣になる前に紛失してる事を覚えてるか?」
「……そうだ!内務大臣です!司法大臣暗殺未遂の捜査に内務省が介入しようとしています!」
「それは大事だ、でもそれは解決する」
「内務大臣の横暴を止めねばなりません!内務大臣は王家の……」
「検察官は公益の代表者として違法な働きを立件し裁判で追求するものであって王家のためだけに働くものではないと思いますが?」
「私もそう思います」
「……王家あっての国家です!」
馬鹿らしい、王家が無くなったら国民が悲観して自殺するとでも思ってるのか?度し難い阿呆だ。検事総長も絶句している。まぁ当たり前だな、組織のナンバー2で自分の右腕がこんなバカでは。
王家が消え去ってもしれっと残るようなやつほどこんなセリフを吐く
「そうです!司法の自由を守るため内務大臣と一丸となって司法省と戦いましょう!」
誰と手を結んで何のために何処と戦うつもりだよ、パニックになってるな。
「司法に介入する内務大臣を許すな!許すな!」
「無用の心配でしてよ?」
ロープでしれっと上の階からおりてくるスーツ姿のエリー、スーツ?
「内務大臣は司法には介入しませんわ、だって解決する事件に介入してもしょうがないでしょう?」
「こ、公爵令嬢……」
「ワタクシの名前を読んだら死ぬみたいな反応やめてほしいですわね」
「魔除けにされるよりはいいだろう」
アンもするりと降りてきて2人が次長検事に剣を向ける。
「脅迫だ!」
「いいえ?アウストリ・ゲルラッハ伯爵、あなたを逮捕します。容疑は超法規的措置の裁判における不手際、証拠の隠蔽、及び超法規的裁判における証人である司法大臣執務室のメンバーへの暗殺指令、彼らの個人情報漏洩に機密情報漏洩、司法大臣室資料の窃盗、検事総長に押し付けたことに司法大臣暗殺未遂」
「冤罪だ!でっち上げだ!」
「あら?じゃあこれはどうかしら?マッセマー商会の付け届けの横領、屋敷の裏帳簿にわざわざ付けてたんですのね?検察で横領したものを」
「な、違法捜査だ!」
「司法大臣として許可を出した、何もなかったら俺の辞任もあったんだけどね。近衛騎士団がちゃんと調査してくれたよ」
まぁマッセマー商会に確認したから無くてもこの資料を押収できればよかったんだけどな。裏帳簿なら余罪もあるだろう。
「司法大臣も検察官と同じ権限があるんだ、知らなかったのか?裁判では俺が検察官で立ってやるから安心して弁護士を雇ってくれ」
「な、なぜ……」
「司法大臣は独自の捜査ができるってこと?そもそも警察も何も挟まず超法規的措置と……」
「……」
「ああ、なぜ自分が負けたかってこと?先代と違って能力がなく信望もなく杜撰で短絡的だから?それとも近衛騎士団のこと?……だめだね、もういいよ、連れてって」
放心した元次長検事は連行されていった、すぐ死刑だな。自分も使い潰されてお疲れ様。
「案外あっさり終わりましたわね、検察官が机から剣を取り出して戦うとか想定してましたのに」
「そんな検察官はいない、でもなんでわざわざロープで窓から登場したかったの?」
「『王宮の陰謀』でやってたからちょうど似たようなシーンですしやってみたかったんですの、それだけですわ」
エリーってやっぱ頭おかしいな。
スーツを着た伯爵令嬢「なんっすか?」
検察庁「名前を言ってはいけない例の公爵令嬢」
エリー「呼びましたか?」




