貴族って国営の悪の組織みたいなもんですわよ?
あの世のアーデルハイド「悪が言うと真実味が増すわね」
あの世の第1王子「ノーコメント」
「…………」
「そもそもあなた勘違いしています、貴族がなにか」
「なんですか……?」
「貴族は権力を持ったらならず者に過ぎないのです。ゴロツキでもヤクザでもマフィアでも好きなようにおっしゃればいい。わたしたちの先祖はそのならず者が集まって国を作って金策担当や暴力担当や交渉担当に戦闘担当など簡単だった役職を爵位と国家の職というドレスとスーツに仕立て上げて、さも聖人ぶって平民に衣服と宝石を見せびらかせて敬服させてるに過ぎない。裏町で孤児に窃盗をやらせて上前をピンハネする、あれが貴族の真の姿ですわ、爵位と華美な服で騙されてるだけ。だから自分のメンツを傷つけるやつは潰す、なりふり構わず報復する、しなければ舐められてもっとメンツを潰し利益を奪い裸にされる。たとえ自分が多少不利になっても相手がもっと不利益を被るなら……実行する。例えば蛮族に臣従するにせよ、協力するにせよ王都までの道を開けるでしょう。そうしてくだらない闘いが終わってすべてを失った時に……たとえそうならなくても……いずれは夢が覚めれば王都の民は……いえ、平民は気が付くでしょう。貴族の政争は立派そうに見えて縄張り争いで、そのどうでもいいことに自分達は振り回されていたのだと、連中も人間だから殺せると……行き着く先はどの道を通るにせよ国家の滅亡です」
まぁ、ワタクシが勝ってすべての罪を王家になすりつけてうまくやる予定ですけど……本当ですわよ?そのために王家を失墜させようと頑張ってるんですから。
アーデルハイドに会う前は蛮族と武装蜂起、王都攻撃占領、王族全員死刑って感じの計画でしたし。当時は第1王子次第で変える予定ではありましたけど……あれならうまく国を立て直せるから別に蛮族生息地でエリーゼ帝国作って適当な国に侵略でも良かったですしね。一応王国に籍をおいての計画もありましたけどまぁ今は無用の長物ですわね。
まぁ計画は何処に主軸を置くかによって変わりますけど独立と建国だけはする気でしたし結局変わりませんわね。
結局ワタクシの覇気とやる気ってアーデルハイドに相乗していたのかしら?
ううん、逆ですわね。第1王子とアーデルハイドを失ったことで立て直せると思った国が手からすり抜けたと皆が無意識に思ってるじゃないかしら?
だから簡単にいうまくいってワタクシがあっけなさを感じてるだけですわね。
「国民は!そのような短絡的ではありません!」
「あなたの公爵家に関する短絡的な思考よりも平民が内省的であるならこの1年でこの国は滅んでますわ。エロイーズさん……この1年で進める予定だった政策何が通ったかわかりますの?」
「……わかりません」
「でしょうね、ゼロです。第1王子から引き継いで早急に進める予定だった政策が何一つとして進んでいません。新聞で喧伝され王国民から待望された数々の政策も、ああそうですね、検察の可視化も。覚えがあるでしょう『シュテッチ』子爵令嬢」
「…………」
「第1王子が亡くなった後に反故になさいましたね?公益のなんでしたっけ?例の事件で貴族が減った事を考えれば……不祥事も多い中では必要なことだと私は思いますけど……?」
「……」
「もう一度聞きましょう、公益とはなんですか?公爵家が舐められ侮られ最後の一手を打つことよりも優先することってなんですの?」
「なぜですか?なぜ民衆を巻き込むのです!」
「なぜって巻き込んだのは王家でしょう?どうして領地の民でもないのに気を使うと思っていますの?」
「な、何を!」
「蛮族がお前は襲わないから王都で略奪させろと言ったら通しますよ?軍隊で道路を囲って歩かせて。だって王家にそんな恩はないですので、せいぜい恨みだけです。そもそも王都の民をどうして我々が助けなければいけないのです?我々が王都の統治を担当しているのですか?」
まぁ周辺蛮族はワタクシの支配下ですからその場合はワタクシの命令で王都を襲うことになりますけど。
いや、しませんわよ?いつもの皆からあー、やりそうって思われた気がしましたけど流石にやりませんわよ?将来の支配地ですから。
エロイーズさんの心をへし折るために強く出てるだけですからね?特にキャスあたりは又聞きしてキレそうだからフォローしておく必要がありますわね。
「ねぇ?ゲルラッハ伯爵家とルーデンドルフ侯爵家が王家に王都の民を救えと言われたらどうします?」
「何もしませんが?」
「ええ、災害ならともかく知ったことではありません」
「な、なぜですか……2人共……」
子爵家の限界が見えましたわね、伯爵や侯爵の治める土地なんて領民優先に決まってるじゃありませんの。なぜ領民の税金で無関係な王都の人間を助ける必要がありますの?役職についていても差配することが高位貴族は多いんですの、家宰に投げておけば王都でぼーっとしてられる有象無象の男爵子爵とは違いますわ。
下級貴族は……子爵家が下級かと言われるとちょっと疑問ですが小さな領地、寄り親がいるならそれに従い働く、いわば使われる側。まぁ最近は戦いもないから寄り親制度もなぁなぁでしょうけど。下手に高い地位にいるから使いづらいでしょうしね、何なら職務上高位貴族を使って吊るし上げる側ですし。
あなたがたは王都を主戦場にしているからそれがわからないんですの、王都を守るべき民に入れているんですの。
貴族の領地で食料不作や物品値上げ、疫病が流行った際に王都の民が何をしますの?高く売りつけて王都の出入りを禁止するだけじゃありませんの。
覚えがある貴族は多いでしょう。2家も覚えがあるのでしょう、ルーデンドルフ侯爵なんて無役になった際に親しい王都商人から定期で買うものを値上げされたとか、まぁシャーリーが適正価格で売って御用商人に滑り込みましたが。そうなったら適正価格に戻して今までの付き合いを盾に御用商人にしてほしいとゴネたそうで拒否なさったんですって。誠意がない商人なんてなんの価値もないと思うんですけど、北方組合みたいに。
領地にいる貴族は本質的に王都の民のことが反吐が出るほど嫌いなんですのよ、勉強になりましたわね。
領地があるのに法衣貴族みたいなことしてるからそうなるんですのよ?読み違えましたわね?ワタクシたちは本質的に自分の所有物、領民が傷つかなければ誰の領地で誰が何人死のうがどうでもいいんですの。だって関係ありませんもの。関係ある時しか動きませんわ。仮に王都で疫病が流行ったら役職持ち以外は皆逃げ出しますわ。
ちゃんと領土に顔を出して家宰に仕事を投げずに数年でも領政を見れば、金鉱でも持ってない限りはそんな発言でてきませんわ。
ね、この事実に気がついたら巻き込まれた側の平民は貴族を殺してやろうって思うでしょ?
ワタクシたちの仕事はドレスを着てそう思わせないように、殴れば早い話をダラダラ話し合い、訴えたり怒ればいい話を商人に圧力をかけて物を売らせなかったりセコセコとやって貴族は頭が良いからなぜこんな面倒なことをするからわからないと思わせることですの。
「検察が公爵家を舐めて、大臣に4代連続で選ばれているスペンサー男爵家を舐めて、どうして無事でいられますの?検察という地位にかまければ殴られないと思うのは、明日生きられるかわからぬ貧民の前で私は貴族だから殺せないだろうとナイフを渡していたぶるのと同じことですわ。検察が機能しているのならそもそもこんなことにはなりませんし、機能した上で無罪なら誰も文句はつけませんわ、先代ゲルラッハ『伯爵』のように」
領地貴族「(王都民ってだけで偉いと思ってんじゃねぇぞ、手数料多めに採りやがって)」
地方貴族「(値段釣り上げやがってクソ商会どもめ……)」
商人・王都民「(王都では王都民が一番偉いんだよ!貧乏貴族が!)」
マッセマー商会「そんなあなたに適正価格で売りまーす!定期購入するなら領地に大きな商会を置かせてねー!土地代おまけしてくれればちゃんとリターンもありまーす!東西南北どこでも行きまーす!」
地方貴族「マッセマーは神」
領地貴族「手数料が無くなった!王都では買えるものは全部マッセマーにするぞ!マッセマーしか勝たん」
王都民「マッセマーのほうが安い!」
既存商人「やめろ!やめろ!!」
公爵家「うるせぇぞヘボ商人、あ?やんのか?」
貴族「いったれいったれ!」
王都民「いったれいったれ!」
貴族「(こいつら……もしかして芯が通ってない?)」




