お茶会ですわー!(通常メンバー不在)
エリー「演出なら激アツ感ありますわね」
キャス「なにがですか?」
「エリーゼ様、この度はご招待いただきありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます……」
「いえいえ、お招きできてうれしいですわ」
都合よく空いてて助かりましたわね、全員は来ないと思ってましたわ。
父が元王国警察長官のアレクシア・ルーデンドルフ侯爵令嬢。
父が王国最高裁判所長官のロゼリー・ゲルラッハ伯爵令嬢。
父が検事総長エロイーズ・シュテッチ子爵令嬢。
まぁたまたま空いてたのかしら?ロゼリーさんはお父様から伝えられてそうですわね。シュテッチ子爵令嬢はなんかビビり倒してますわね。なんでかしら?
「ゲルラッハ伯爵からお菓子が届いていますの、広場大通りの菓子店だそうですわ」
「ほう、あそこのですか?無役になった我が家では楽しめないものですね」
「御冗談を、前の事件でお父上がご活躍をなさったとか」
「いえいえ、エリーゼ様が仕事を回してくださっただけですよ」
「あの……?どうして私も誘われたのですか?それにいつもの方々がいらっしゃいませんが……?」
「いえいえ、たまにはいつもの友人以外と親交を深めることも重要でしょう?ロゼリー様とエロイーズ様は仲が良いそうですし」
「ええ、まぁ……家の都合ではありましたが友人です」
「はい、友人です」
あら?シュテッチ子爵令嬢はそこだけは顔色をうかがわないんですのね?友情は素敵ですわ。そのまま大事に育てた方がいいですわよ。失ってからじゃ遅いんですし。
さてと、いつもの茶会のように軽口も叩けませんし、よそ行きの令嬢モードにでもなるとしましょうか、令嬢の皮……令嬢の皮……これでいいですわね。
「アレクシア様はお二人とは?」
「エロイーズ様とは多少、といっても年に数回茶会や夜会で会って話すくらいですが」
「学院では?」
「家が無役ですからね、ある程度は離れましたよ」
「離れた人間は今後相手にしなくていいので楽でしょう?」
「まぁ……そうですね」
むしろ役立たずの整理に使えるのに落ち込むことがあるのかしら?断腸の思いで離れても気遣いはできるものですわ、ないということは気にしなくてもいいし返り咲いても遠ざければいいだけ、むしろ積極的に処分できるのだから喜ばしいことですのに……。
他愛もない話をして軽く時間を潰してそろそろ本題に行きましょうというときにメイド長のモリーからメモを渡される。まぁモリーがワタクシ係ですからね。ワタクシ係ってなんか嫌な名称ですわね?皆そう呼んでますけど。
まぁ侍女を置くと見動く取れなくなるから別にメイド長がワタクシ係でもいいですわ。どれどれ……はい。
「宴も酣 ですが、本題に入りましょうか、ジーナを暗殺しようとしたのは検察です」
キメのため扇子をバサッと開いてそう宣言すると。
「……!(ビクッ)」
シュテッチ子爵令嬢がやたらと怯える?もしかしてグルですの?
「エリーゼ様、エロイーズは扇子が開くことに怯えているのでやめていただけますか?」
「あら?そうでしたか、ごめんなさいね」
なんでそんなことに怯えてるんでしょう?まぁ猫が怖いとか尖ったものが怖い令嬢もいるからそういう方がいらっしゃってもおかしくはないですわね。
扇子をパシンと閉じて話を続ける、これ扇子が痛むけどかっこいいんですのよ?
「検察側にはメスを入れる必要がありますわね」
「検察は……!検察官は公益の代表者です!そのために公訴権を持つのです!そのようなことで介入されるいわれは、ありません!」
あら?さんざんビビり倒してたのにちゃんと出るところは出られるじゃありませんの。見直しましたわ、シュテッチ子爵令嬢……いいえ、エロイーズさん。
「公益とはなんですか?検察が公益のために働いていると?超法規的措置では随分な醜態をさらしていたではありませんか」
「それは私にも耳が痛いですね」
「最高裁判所長官とはいえすべての裁判官を制御できるわけではないでしょう?お気になさらずロゼリーさん」
「国王、並びに第2王子の訴追は国家に混乱を……」
「舐められた公爵家が反乱すると思わないのかしら?」
「そのようなこと……違法です!」
「超法規的措置は違法ではないのかしら?権利に関してではないわ、そもそも発動しないのだから違法ではなくて?そもそもあなた勘違いしてるわねエロイーズさん」
「なにがですか?」
「どこぞの子爵は国王の機密漏洩を立件してその職務を褒められ伯爵に陞爵なさいましたね、それで?今の検察は?王の言いなりで働くだけの愚者。公益?公とは何処ですの?公爵家でないのは確かですけど、貴族でもありませんわね、こんな勝手がまかり通るような国で誰が得するのでしょう?エロイーズ・シュテッチ子爵令嬢?公益とは?」
「社会の利益です」
「社会とは?王家のことですか?王家が良ければなんでもいいと?」
「今、王家が倒れたら国家が潰れます。北方の蛮族のこともありますし公爵家が兵を挙げたら蛮族国境ががら空きになります!王家を倒しても蛮族がなだれ込めば……!」
「あらあら、社会福祉のためにあんな愚物を残しますのね?」
「っ!!?」
他の2人は別に驚きませんわね、まぁ片や父の辞任の原因が第2王子で、片やその第2王子に踊らされた明らかな違法行為を合法だとのたまい裁判も雑に処刑された初撃の原因になっていたのなら。
失望するでしょうね、腐敗国家そのものですもの。たった1年でこうも腐り果てれば多感な時期のワタクシたちは厭世観のほうがはびこるでしょう。
「……蛮族の侵入だけは防がねばなりません!」
「シュテッチ家は蛮族と領地を接してなかったと思いましたけど?」
「蛮族の虐殺の現場検証についていったことがあります……!」
あらあら、スパルタ教育だこと。シュテッチ子爵は検事総長なのに現場主義なのかしら?もしくは就任前の話かしら?まぁ高職に会っても直接捜査指揮する貴族は、いえ平民もいらっしゃいましたから適切ではありませんわね、少ないないですものね、真面目な理由にしろ不真面目な理由にしろそんな検察官は。
「なら公爵家が傷つけば蛮族に負ける可能性もありますわ、蛮族に道を開けるかもしれませんし……そんな自分の家に責を押し付ける国なんてどうでもいいと思いますけど?」
「そんな……!?なんのための爵位ですか!その公爵位は……王家の、国家の盾になるの」
「では聞きますけど、蛮族を撃退して王家やあなたは何をくれましたの?」
「え?ですから……そのための……」
「蛮族が私が生まれてから12年一度も攻めて来ず小競り合いしてるだけだと?族長の数人は討ち取ってますわ。それで王都にはその話は一切通ってませんの?恩賞もなしで?その挙げ句気に入らないから公爵家を貶めるけど公爵家だから良いと?誰も死なずに蛮族に勝って村も焼かれていないだろうし、なんの問題も起きてないだろうから何もしなくて良いと?起きていても嘘だから何もしなくていいと?そのためなら違法な超法規的措置で公爵が失脚することがあっても、死刑になろうがどうなろうが公爵家が蛮族を真面目に撃退してくれるだろう、公爵家ならそれが当然と本当にそうおっしゃいますか?」
そもそも知っていたら言えませんわよね?我が家が蛮族とどれだけ戦ってきたか、祖父の時に蛮族を支援して公爵家を潰そうとした方々、知っていてみていた方々、見ていた方々は見逃しただけですわ?許されたと思ったら大間違いですわね。
あなたが見てきた……たかだか村の一つの虐殺程度の感情なんてワタクシから言わせればレストランの水槽の魚を見て食べられるのが可愛そうという子どもの戯言程度のものですわ。
その虐殺場所以外ではそれより少ない数しか死んでないとでも思ってるのかしら?
なんのためにワタクシが蛮族の族長共を殺し、はっ倒して服属させてきたと思ってるんですの?
よく考えたら蛮族の族長はっ倒すのはメインじゃなかったですわね……まぁいいですわ。
エリー「お前蛮族だろ、決闘しろよ!」
蛮族「うわぁ蛮族!」




