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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
オーランデルク

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エセル敗走記15

「それにしてもあなた達姉妹は大当たりであちらは外れですか。托卵されたんじゃありませんの?」

「流石にないだろう、顔は似ているからな」

「まーた顔だけ王子ですか。政治に必要なのは顔ではありませんわ、どうせ国民は顔なんて遠くて見えないのですからブサイクでもどうとでもなるでしょう。戦場でも顔がいいから勝てるなんてことありませんわよ」

「そうか、私は少しは自信があるがな」

「でしょうね。だからこそ、なおさら顔だけ王子にため息を付きたくなるのですわ」


 そういえばそちらのバカ王子も顔だけは評判がいいからな。

 それ以外は国外からも最低最悪だが。


「ロンドニで栄光を迎えるはずだった王子はもういませんしね、次があれでは人々も嘆こうというもの。ワタクシで持ち直しましたわね」

「オーランデルクの使節団はどうするのだ?ロンドニ市民は殺伐としていたぞ。この演説だけで抑え込めるとは思えない」

「何しにきたのかもわからないのですわよね……。王都の連絡がないのが気がかりですが……」

「我が主、それなのですが……」


 公爵家騎士長のキサルピナがおずおずと話に入ってくる。

 これほど自信がなさそうな、気まずそうな表情も見せるのか。


「キサルピナ知ってますの」

「シュライヒャーが手を回して握りつぶしたそうです。先程ロンドニにいた彼の配下から連絡が」

「…………そうですの、自分の判断で動けて、こうして連絡もしたのなら問題ありませんわね」


 内心思うところはありそうだがな。そうか、あの男か。

 問題ないの返答を聞いたあとキサルピナ騎士長はいつもの待機するような無表情に戻り安堵を見せていた。

 キサルピナ騎士長をよく従わせられるな、まさか本当にキサルピナ騎士長より強いのか?

 流石にないと思うのだがな。


「それで?なんと言ってましたの?」

「オーランデルク使節団の受け入れ要請を足止めして王都に使者を送るふりをしてそのまま嘘の許可を出して使節団受け入れ許可を出させた、ほぼその後の使節団も軟禁状態で押し付けたのでロンドニで顛末をして散ると思う。ロバツとの戦争推移や結果は到着した部下に聞いてほしいとのことです」

「それで部下は?」

「連れてまいります」


 そうして連れてきたのは私にも見覚えのある男であった。

 こやつは確か……。


「エリー、殺していいっすか?」

「クラウ?それはダメですわ。グリーリー、あなたクラウになにかしましたの?例えば痛めつけてほしいと言ったとか」

「いえ!とんでもございません!大族長様!私のような矮小なる存在がそのようなこと決して!決してございません!」

「貴様、サミュエル王国で財務・経済大臣であったシャハトではないか?」


 私の質問にビクリと肩を震わせどんどん真っ青になっていく。

 そういえばそいつって反ライヒベルク公爵家の急先鋒じゃなかったか?


「そのような人間ではございません!そいつはどこかで王家に殺されたと聞いております!私のような一介の平民が大臣だなど!私はシュライヒャー族長の元でこうして!大族長様の元で一心不乱に忠節を持って働いております!」

「エリー、こいつ間違いなくシャハトっすよ。失脚直前まで王家派閥をまとめていた」

「そのようなことがあろうはずがございません!私はただの蛮族にございます!」

「…………グリーリー、私の目を見て答えなさい。あなたはあのシャハト?当家と敵対し、貴族を踊らせ、王家の懐刀として戦ったあのシャハト?」


 シャハトは目線を右往左往させているが、エリーゼがいつのまにか取り出した扇子で顔をぐいとあげられていた。


「あなたはシャハト?」

「え……えぁ……」

「あーなーたーはーシャーハートー?」

「は、はい……前の名前はシャハトです」

「先の経済・財務……、失礼先の経済大臣にして2代前の財務大臣の?」

「お、おっしゃるとおりでございます……」


 他人事だが楽しくなってきたな。

 眼の前で内紛か?対岸の火事ほど楽しいものはないな。


「どうやって蛮族領域に逃げ込みましたの?」

「こ、公爵領に逃げ込むとは誰も思わなかったので……馬車を山奥に捨てて……そのままキャンプ生活をしながら西部へ……。バーゼル山脈に到達した際に開拓中のシュライヒャー伯爵に保護されて……」

「ああ、なるほど。昔の部下だと説明されたので気には止めてませんでしたけど。そう」


 ニッコリと笑みを深めたエリーゼ・ライヒベルクは失言したシャハトにそれを指摘した。


「やはり彼はユークリウッド・シャライヒャーでしたのね?」

「…………?」


 シャハトは気がついていないのか何をいまさら?というような表情で自分の大族長をみつめていた。


「!?」


 ようやく気がついたようで先ほどとは違う尋常ではない慌てようを示し膝から崩れ落ちた。


「お許しください!お許しください!私の口から出たという言葉は!何もなかったことに!」

「まぁ薄々が確信に変わっただけだから気にしなくていいと思いますわ。そう、そうなると謎が増えたわね。絶対にクラウとかち合うのにここに残されたのはなぁぜ?」

「そ、そろそろ身元を明かして許しを請うようにとシュライヒャーは……族長から言われて……キサルピナ大族長代行からも、シュライヒャー族長から聞いていてとりなすからと」

「キサルピナ?」

「流石に彼がシャハトなのは知りませんでしたが……そうですか、因果なこともあるものですね。私は特になにかされた覚えがないので言う事はありませんが。私が言われたのはシュライヒャーと同じく公爵家と対立して敗北していたので正式に許しを請いたいとのことでした。なので請け負いました」


 大族長の顔になったエリーゼ・ライヒベルクは苦笑しながら考え込み始めていた。

 本当に対岸の火事ほど面白いものはないな。

ゴットワルト「きれいな丘、美しい、素晴らしい」

エセル「これが詩でいいのか?」

ゴットワルト「はい」

エセル「そうか……」

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