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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
オーランデルク

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慶事

 バンサ伯爵はおそらく公爵令嬢に操られているか協力関係にある。そして周知の事実であるからこそバルカレス騎士団長も反応していない。

 いったい大使館は何をしていたのか?大使館の職員が死んでから根回しをしたというのか?

 ライエン侯爵家の直系が何故残っているのか、なぜ宰相含め後見しているのか?バンサは伯爵を使った代理戦争なのか、それともバンサ伯爵は宰相とライヒベルク公爵令嬢を手玉に取っているのか?怒涛の情報にジマーマンは大使館職員の死からこの1ヶ月足らずで起きたことを把握するほうが先であるととうとう白旗を上げざるをえなかった。


「さすがはバンサ伯爵、名だたる貴族の方々が後見人に名乗り出ましたね。誰が後見してないかのほうが早そうです」

「そうですね、もちろん国王陛下でしょうか」


 きつい嫌味ではあるがジマーマンには通じない。

 ライエン侯爵の直系が残ってるということはサミュエル国王も把握しているであろうからもちろんの意味をもちろんそこまで肩入れできないから国王陛下ですとジマーマンは受け取った。

 実際はもちろん自分を殺して財産を没収しようとした国王陛下は後見してませんよというピアの皮肉でしかない。


「ははは、そうでしょうね」

「ふふふ、そうですね」


 ジマーマンはライヒベルク公爵は後見していないのですかと聞くべきだったのかもしれない。

 それであればライヒベルク公爵は後見しないが宰相や公爵令嬢が後見してることを考え、もしかしたらなにか政治的に大きななにかが起きたのかもしれないと着地点は違えど全体像は見えたのかもしれない。

 だが彼はエリーゼの名前を最初に出され、その友人が次々と読み上げられる中で多少の考え事をしたこともあり聞き逃したか聞いたと錯覚してしまった。

 宰相だけはいい忘れたという補足のせいで余計に……。なかには公爵令嬢の友人の父や母の名前があったことも聞いているからこその聞き逃し、あるいは思い込み。

 その想定すらしていないジマーマンはやはり衝撃を受けすぎていたのだろう。


「いや、名高きバンサ伯爵は安泰ですな。これからはどのように立ち回るのですか」

「無論王家に殉じますとも」

「ほう……王家に?」

「ええ、もちろん。私があるのは王家あってのものですから」

「忠誠心厚いバンサ伯爵の復活に国王陛下もお喜びでしょう」

「さて、後見はいただいておりませんので」

「おっと、そうでしたな」


 ピアは今の王家ともサミュエル王家ともウィリアム国王とも言っていない。

 王家は王家でも次期王家になるライヒベルク王家である。

 もっともエリーゼは帝国建国のつもりなのだが。

 さらりと国王陛下はお喜びでしょうに先程の会話からそんなわけ無いだろうとやんわりと皮肉を込めている。

 最も後見をいただいておりませんはジマーマンからしたら国王陛下の後見はないが感謝をしているとも受け取れるのだから難しいものだろう。


「それにしてもサミュエル王国は慶事が続いているとか、もしやバンサ伯爵の就任も慶事ですかな?」

「さぁ?どうでしょう?私がこの地位につくのが誰にとっての慶事なのかはわかりかねますね。ですがそう考える人もいるでしょう」


 どのような慶事が続くか、バンサ伯爵から聞き出してしまうのも手だろう。

 最も答えてくれるかはわからないが、バルカレス騎士団長以外の反応を知りたいのだ。


「ちなみに他に何が会ったのでしょうか」

「ああ…………ご存じないのですね?たしかロンドニを通ってきたと聞きましたが」

「ええ、人々が暗かったのですよ」

「ほう、それはそれは……おかしなことですね?ロンドニはもしかしたら帝都より明るはずですが……」

「では、我々の滞在した場所が悪かったのかもしれませんね」


 変な場所に滞在させたのだろうというジマーマンの皮肉はピアには通じなかった。


「時間帯かもしれませんね、慶事は使節団の方々が来る前の話ですし」

「おや、ではその後悲報が?」

「だとしたら届いてるでしょうね、馬車も伝令も使節団よりは早いですよ」

「なるほど、ロンドニの慶事とは何でしょう?」

「いうなれば国家の慶事ですがね、本当にご存じないのですね?」

「ええ、無知で申し訳ありません。我々の情報元は皆亡くなってしまったものでして」


 大使館職員がいないから仕方ないだろう?と相手の良心に訴えかけあるいは非難するようなことをいうもののピアには通じない。

 勘が働かない以上は嫌いな国の大使館の職員が死んだだけ、しったことでもなければスカッとするだけの話に過ぎない。

 なにか言ってるがそれが何だ?と言わんばかりの態度にジマーマンはやはりバンサ伯爵を継ぐだけはあると判断して危険人物リストの彼女を加えた。


「次期王位継承者が決まったのですよ」

「なるほど、慶事ですね」


 慶事としか言えないだろう。

 不幸な出来事ですねなどと口が避けても言えない。

 あのバカ王子が王太子に?それはロンドニだって暗くなろうものだ。

 なぜ誰も止めなかったのか全く持って疑問である。

 そのうえで公爵令嬢の一派と宰相一派がバンサ伯爵を後見する?


 ジマーマンは公爵家が第2王子を王太子にして失敗させるつもりだと判断した。

 それと同時に散々ロンドニの雰囲気が暗いと連呼した失言をどうしたものかと思った。

 これではバカの第2王子が王太子になったことを歓迎していないと喧伝しに来たようなものである。

 ただでさえサミュエル王国と融和しなければならないのに次代の国王にまで喧嘩を売ってどうしようというのか。

 なぜこの情勢で王太子があのバカ王子になるのか。

 ジマーマンは悩まされた。

ロンドニ市民A「クソみたいなオーランデルクの人間見てるだけで吐き気がする、襲うべきじゃないか?」

ロンドニ市民B「どうせ滅びる奴らだ佛、ロバツが負けてでかい顔ができるか」


オーランデルク随行員「暗い、こちらへの視線が厳しい」

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