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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
オーランデルク

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バンサ伯爵邸だった屋敷

「ようやく入都か!まったく無礼千万!貴様らは外交使節の受け入れをなんと心得るか!」


 憤慨するカスリットを冷めた目で見るファース・ミュンツベルはこの態度に対応ではおそらく交渉はうまく行かないだろうと思った。

 たかだか数時間程度でもこうも居丈高ではまともな交渉は無理だろう。こちらには先触れもない落出がある。

 本当に大使館職員が急死であっても暗殺であってもどうにもならないか、カストリット次第で逆手に取られて押し切られるのだろう。

 ジマーマン外務大臣は積極的な介入をしないので頼っていいものかわからない。

 これを制御して落とし所を探るか、最初から失敗する前提でオーランデルク至上主義者の失策を突くのか、反省しないことくらいはわかっているだろうに……。


 はたしてこれはどうしたらいいのか、外務大臣は陛下に同じ話しを言い含められているのかと考えつつも門をくぐる。

 それにしてもサミュエル王国とロバツの戦争は追い風になった。敗戦前に失言を引き出してなんとか……ロバツの下では伸びない、敵が多いからこそ切り捨てられる。

 サミュエル王国が屈してしまえば我々は無用の長物。

 残す価値も壁の価値もない、クーゲンホルフ地方をサミュエル王国に投げて我々は併呑される。

 我々が勝手に敵を増やし事をロバツは許してはいない。

 ミュヘル2世陛下の方針が全てをダメにした。ミュヘル3世陛下も立て直したいが全く回らない。一度染み付いた選民意識は拭えない、サミュエル王国とロバツを争わせたい国ほどオーランデルク至上主義者の外交官を接待し、甘美な毒を流し込み偏見の塊を育て上げる。

 これでは道化ではないか。


「皆様がご滞在するのはバンサ伯爵邸でございます、最も当代は屋敷を手放しましたが……」


 案内役の男がそういうもののバンサ伯爵家のことは私は知らなかった。

 屋敷を手放した?没落したのだろうか?


「名高きバンサ伯爵ですか……失礼ながらバンサ伯爵は……」

「先日爵位が継承されました」

「そうでしたか、なるほど、バンサ伯爵がとうとう継承されましたか」


 ジマーマン外務大臣は知ってるようで誰が継承したかあたりを付けたようであった。


「後で挨拶に伺います」

「左様ですか、楽しみに待っております」


 ジマーマン外務大臣は少しだけ警戒したようであったが、相手には気取られていなそうだ。あくまでそれなりに接したうえでの感想だ。

 まぁ親しいわけではないのだが……。

 比べてしまえばカストリットの方がよほど付き合いがあるといえる。


 バンサ伯爵邸に入れば気が狂うほどの道化師の絵画が飾ってあった。

 玄関ホールでこれか……?


「何だこれは!」

「先代バンサ伯爵でございます。わざわざ歓待のためマッセマー商会から移動させてきました」

「…………気遣い痛みいりますな」


 カスリットの怒声を無視するような男の声に、ジマーマン大臣は考え込むように応じた。


「ここまで歓迎していただけるとは光栄ですな、バンサ伯爵の肖像は高名な宮廷画家トリンクスが描いたもの。バンサ伯爵家の歴史を肌で感じることに歓喜しております」


 非常に薄っぺらい感想ではあるが男はにこりと微笑んだ。


「喜んでいただけてとても嬉しいですね。バンサ伯爵も喜ぶでしょう。しばらくはこちらでごくつろぎください」


 一通り屋敷の案内をした後、男は去っていった。

 随行員たちの部屋を割り当てた後、当主執務室に集まった我々は今後の対応を協議することにしたのだが……。


「なぜあのような行いを!」

「落ち着け、ベーネミュンデ子爵。高名な宮廷画家の絵が飾ってあるだけで騒ぐようでは交渉では失態だぞ。君は大使なのだからな」

「同じ絵ですよ!真筆ではない、せいぜい複製品でしょう!」

「いや、別の部屋の絵も見たがそれは構図も違う、題材も違う、ただただ同一人物であると言うだけだ。間違いなく彼の筆致だ。彼の絵は他国で評価が高い。覚えておくべきだと思うが?」

「ガリシア帝国に比べたら大したことはありません!」


 これが大使になるという状況は我が国がどれほど外交的に追い詰められているかという話だな。

 まぁ帝国公使時代のの評価が高かったから、上げざるをえなかったのだろうが……。

 彼のような言動の大使が他国で騒動を起こしてくれるのなら帝国とて少しくらい不利益を出してもいいだろうな。仮に解任されたら信頼できる外交官を解任したので以降オーランデルクの大使の受け入れを断るなどと言えばいい。

 そんな人間を残さねばならぬほど帝国との関係は極めて貴重なのだ。周りが敵ばかりだから。


「ガリシアでも評価されている、覚えておくといい。たとえば第1皇子殿下も好んでおられるからな」

「ほう、サミュエル王国もやるではないか、では実質オーランデルクの功績ですな」

「──そうだな」


 女と金で骨抜きにされる大使はいるが、何をどうしたらここまでモンd内ある外交官にできるのか。

 ガリシアのやり方は気になるが私には縁がないだろうな。

 それにしても意外と外務大臣は手綱を握れるではないか、普段は介入しないことで敵愾心を燃やさないようにしているのだろう。普通なら外務大臣の地位を狙うだろうがカスリットからは追い落としてやろうという危害がない。

 なるほど、これが外交官としての一流の能力を持つということなのだろう。


 多分だが……。

 多少外務大臣の評価を上げたところでようやく本題に入ることになった。

案内役の男「(うおッ!同じ絵ばかりで気持ち悪!!)」

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