推察にて
「まぁ問題はそちらではないのですよ、すくなくとも何となくそうだろうと当たりをつけていたことですから」
「そうね、それでリッパー男爵は寝返ったわけですものね」
「問題はですね、リッパー男爵がその事実を完全に把握していたことです。もしかしてとか、追求されて思い当たったとかではなく。確実に当時から知っていた、おそらくですが……フリードリヒ第1王子殿下の父親もジキル・リッパーですね」
驚くには値しないと言えばそうだが、フリードリヒ殿下の父親がジキルなのは少しだけ驚くところではありますね。
その時点でフリードリヒ殿下も王族の血筋であると目を瞑ってその地位につけられるものではないですから。
「それはなぜ?いや、どうでもいいといえばそうだけどね。もう復権の目はないし、国王はあのザマだし、キャスの態度的に予想より悪いんでしょ?精神状態」
「ええ、まぁ……」
「リッパー男爵が気がついていた、だからこそ国王私室の隠し部屋であれほどハッキリと動揺を見せたのですよ。リッパー男爵ですよ?バンサ伯爵家の血筋とは言え御三家にして王宮部署統括をしていた家、貴族の秘密を握り省の流れを掴んでいたその家の当主。娘婿とはいえそれだけでサッチ・リッパー男爵がその地位を任せるかといわれたらないでしょうね。結果的に王宮部署監督官は罷免されましたが敵国の間諜、始末、一部貴族の暗殺をする能力がある人間がポーカーフェイスを崩すこれは驚くべきことですよ」
「さっきレズリー家の人間のポーカーフェイスを崩した人間が原因では?」
「いいえ、そのような面白いことは臨時監督感殿はおっしゃっておりませんでした。私が見ていたのはリッパー男爵でしたからね。ジキルの名前が出る前は平静でしたがそれ以降は明らかに動揺しています。第2王子の父親がジキルではないかと?という話は正直我々には今更でしょう?たとえ国王がそれを知っていたとしてもあれほど動揺するのはおかしい。実際国王と袂はわかっていますからね。ではなぜあれほどまでに動揺していたのか。実施あジキルの名前が出た時の動揺は徐々に悪化していました。会話の流れでなにかに気がついたように」
さて、流石に錯乱していた相手ですから細かいところは。
ジョージ殿下にグリゼルダ妃殿下を取られてリッパー男爵にリッパー男爵の暗殺を命じるとか荒唐無稽なことを言っておりましたね。
自裁ではなく。
「国王は明らかに乱心状態でした。しかし第2王子をフリードリヒ第1王子と思い込んでいたり、ジキル・リッパーと思っていたりと大分おかしくはなっていましたがジャック・リッパー男爵はこう言ったのです。フリードリヒ殿下が亡くなる前からと」
「ええ、そうですね、それが?」
「国王はフリードリヒは兄の子供だったと言ったのですよ。第2王子から訂正されましたがそれには何もいいませんでした。受け入れたのでもなくスルーですね。精神がおかしくても他は訂正や修正したのにそこは何も答えなかった」
「錯乱しているからでしょう?」
「国王は一度たりともフリードリヒ第1王子殿下がジョージ殿下の子どもとは言っていなかったのです」
「ほー。じゃあその兄の子供っていう兄がジキル・リッパーってこと?じゃあジャックおじさんも托卵されたのか……ダメだな王家は」
したりされたり貴族的ですね。シアkしそれならキュ中で殺されることもあるでしょう、当時の近衛騎士ならザルでしょうしね。
「いえ、それはないかと。先代国王はそこまで遊ぶ方ではありませんでした。まぁ……若い頃に悪い友だちと遊んできつく絞られて以降は女性に関しては遊んでいないそうですが」
「悪い友達?」
「パド家令やリッパー男爵たちです。ちなみにリッパー男爵も結婚が決まった後はすっぱり遊びをやめていますね」
「一途なのかと思ったが婿入りだものな。これで遊ぶのは愚か者だけだ。ジャックおじさんもパド家令もやんちゃな時期があったんだね」
男なんてそんなものでしょう。
「私だったら婚約破棄するなー。まぁそもそも私の立場なら選べるから勘で決めるけど」
勘で決めていい話じゃないんですが……。まぁそれに自信があるならいいのでしょうね。
「ジキル・リッパーはリッパー男爵家の後継として厳しく育てられました。あるいはそれが原因かも知れませんが。それとグリゼルダ妃と幼馴染だったとか」
「アンが好きそうな話になってきましたね」
「…………」
ノーコメントですか。
「婚約を望んだらしいのですが血が近いことと、現国王の帝国の皇女との縁談が流れたのです」
「ああ……」
「それって確か……」
「あまりにしつこい宮廷道化に帝国大使が激怒したことと、帝国皇女も腹を立てたことと当時の現国王に対しても評価に値しないと判断を下して……たまたま出仕中であった案内役の男性と婚姻を決めました。打診はその後だったそうですが」
「違ったかもしれません」
「いえ、ピア。その方はエリーの母親ですよ」
「じゃあ合ってるか……。母娘揃ってすごいね」
すごいには言葉に出してはいけないなにかだろう。正直アンとおなじような……いや、うーん……。やめておこう
アリア・ライヒベルク「今いらっときたわ」
女中「……」
アリア「夫ではない、エリーではない……夫でもいいか、久々に会えるし」
ゲハルト「手が震える、脳の病気の予兆か?」
モリー「失礼……違いますね」




