火刑の最中にて
火刑は粛々と執行された。
ロープで縛られた死刑囚Aは拘束具を着けられ、油をかけられる。
足まで縛られているので動いたところでガタガタするだけでしょうね。
それでも猿轡をされたまま叫んで入るが、平民たちはニヤニヤとしながら罵声を浴びせていた。これが見世物だからか、元貴族が処刑されたことが愉悦なのかはわからないがどちらでも構わないでしょう。
「これより、この死刑囚Aの火刑を実行する!」
私は冷めた目でそれを眺める、火刑の欠点はただただ臭いという点だ。あと処理が大変という……。
ああ、そうか……この係官は処理担当課なんかだったのだろう、命じるなら悪臭ぐらい耐えろとでもいいたいのでしょうね。過去に数回ありましたがひどい匂いでしたから……。
私として今後のことも考えてはちょうどよいので推進したい心もあるのですが……。
火刑に関しては係官の手当を増やすべきかもしれませんね、ジーナと相談するべきでしょうか。
係官が火を付けると猿轡をしてるのに絶叫が聞こえる。
声を張り上げているがそのうち肺が焼けてしずかになるでしょう。
ガタガタと暴れようと動いてるソレをみてもう少し粘るだろうなと何とく思った。
「冷静ですね」
「いきなり目の前で人が燃えたのであれば私だって震えたり気絶するかも知れませんがこれは死刑ですよ?死ぬとわかっているのに怯えるのは執行される側でしょう?」
係官の問いかけに冷静に応える。
戦場に一度出たときに文官係で本当に良かったと思ったほどですからね。
あそこは人の命が軽すぎる、誰もが不用意に殺し殺される。
誰もがこの連中のように罪があるわけではないだろうに。
執行中に別の死刑囚がまた絞首台に連れて行かれる。死刑囚E……?いやFだったかも知れないですね。
Bはすでに息絶えたのか晒される場所に改めて連れて行かれた。いつもなら石でも持った子どもがわくわくと待っているが今日は違う。
あの男は死んだその瞬間や後ですら注目されなかったのですね、哀れなものです。
「まだ生きてはいますが声は出せなくなりましたね、気道が焼けたのでしょう」
「……そのようですね」
「何か?まさか本当に直視する勇気もないと思っていたのですか?それは私を侮りすぎるでしょう係官殿」
正直罪人が死んだことに心が動かされるかと言われても全く。
二省が焼けたときのほうがもっとパニックになりましたからね。
「いえ、失礼しました……」
「今後はこの刑罰を増やしていきましょう。謀反人含め王太女殿下に騎馬を抜く連中は残らず処していこうと思います」
「…………はい」
「死刑反対論者ですか?ではあのゴミどもを国費で生かし続けろとでも?あなたがお金を出すなら構いませんがどうしますか?」
「いいえ、決して……。ただ昨今の死刑は残虐すぎると思っただけです」
「そうでもしなければ過ちを起こすのです。自分なら安全、自分なら背後に応じがいるから何をしてもいい。そんな連中はこうして処されるべきでしょう?もちろん私がそうなっときはあの様になることも覚悟していますよ。必要ならばするだけ、負ければ死ぬ。そもそも前の残虐な処刑は第2王子の主導で行われたものです。私に八つ当たりするなど勘違いも甚だしいですね」
「……もうしわけありません。ただ、処刑後の処理は……」
ああ、やはり始末が大変という話ですか。
こうして話してるとやはりエリーの貴族らしくな会話の速達即断即決がどれだけ楽かがわかりますね。
私はこの係官側の迂遠な会話をする方だったのに……。
「ええ、私達は改革派ですからね、刑罰の処理によって手当を買えることを検討しています」
「そうですか……それならば不満は減るでしょうね」
自分の不満の飲み込むだけでは?
大多数の意見ということにして自分の意見を言うのは貴族も刑場の係官も変わりませんね。
とても人間味がある。
平民たちが自分にも見せろと前に出ようとして押し合いになってるところを見ると本質的に人間は人間の不幸というものが好きなのかも知れませんね。
どうでもいい話ですが。
油で火刑にするには少しばかり火の勢いが足りない。
大昔は油だけでなく薪などを使って焼いたらしいが、じわじわ殺すのには油をかけて焼くのが一番良いらしいですね。まぁいつ死んだかよくわからないのですが。
悪辣さは王家の主導ですからそこを責められるいわれはないですね。
ああ、また追加していますね。油だけで焼くのは大変難しいので罪人の服などを頼りにするのですが……案外安っぽい服だったみたいですね。
まぁじわじわ死ぬのでも変わりませんね、
でもこれだけ時間がかかるなら下に藁くらいは敷いたほうがいいかも知れませんね……意図はともかく無駄に長過ぎる。
残虐なんて理由より時間が無駄が一番理由としてふさわしいのはそれはそれでどうなのでしょう?
「困りましたね、時間がかかりすぎます」
「と言われましても……」
「予定があるので酒と藁を追加でお願いしますね」
「刑は……ある程度の決まりがありまして……」
「火刑で死ぬのであれば構わないでしょう?聞いてきてください」
係官は裁判長に報告に行き、了承されたのかそのままどこかへ向かっていった。
エリー「はー!めんどくさ!ゴミと一緒に焼きましょう!」
ジーナ「……」




