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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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エセル敗走記11

「まぁまさに蛮族ですわね、外道というか……絵に書いたような女性の婚約失敗事例みたいなものですわ。結果として違うのは相手の男はその後うまくやって、もとい妻であるなんかかんとか公爵の娘に政治を委ねてしっかり王国下に成功したことですわね。普通に自分を売ったサミュエル王家への意趣返しもあるんでしょうけど。そりゃあサミュエル王家からしたら不倶戴天の敵ですわよね。よりにもよって使うはずの蛮族が自らの手を払った挙げ句に国王になって……そのうえ継承権を持つ公爵家の娘を嫁にしたのだから。そういえばこの公爵家の娘を保護したのも婚約者の女性だったそうですわ。恩を仇で返しましたわね、まぁなんとかかんとかの公爵家の女のほうが吹き込んだ可能性もありますわね、体を使ったのか弁舌を使ったのかは知りませんけど。周りもそれなりに体裁が整えば藪をつついてヘビを出したくないし、ロバツの血筋を使ってサミュエル王国への介入もできますからね。そりゃあ認めるでしょう、条約と建前の宣言が有効なのは自分たちに取って利益があるときだけなのですから。唯一の誤算は蛮族では弱かったロバートが……おっと、男が周辺諸国の兵と比べると精強で強かったことですわね、一気に下した後は数で押して、それでも手強ければ傘下にした部族をぶつける。うんうん、敵をぶつけるのは正しいやり方ですわ。結果的に領土も広がり、地位も向上し、打算ありきで認めたあと強化されたから打つ手がなくなってしまったというわけですわね。馬鹿ですわね」

「…………」

「一応もう一度いておきますけど沈黙は肯定ですわ、まぁ続けましょう」


 ニコニコしたエリーゼ・ライヒベルクは手数料を取りに来る商人のようでどこかゲスらしい笑みを見せていた。


「なんの話でしたっけ?ワタクシよく脱線するから起こられるんですわ、そういうときはたいてい止めてくれる方がいたんですけど今の皆様はほうっておくようになってしまって……寂しいものですわ。ああ、そうそう貴方がたが蛮族である説明をして詰めてるアイチュウでしたわね。そのイルディコ先生の話、その婚約者のお孫さんですの。よく聞かされたみたいですわ」

「…………それで?それが何だというのだ。一作家の妄言で国が動くわけあるまい?」

「あら久々に口を開いてくださった気がしますわね。そうですわね、いくら元ネタがるとはいえ小説は小説。ノンフィクションでも多少盛られることはよくあることですわ。殺人事件現場に幽霊が出るとかね。でも果たしてそうかしら?」

「そのイルディコ先生とやらに話させると?」

「もうお亡くなりですわ。そもそもワタクシもあったことはありませんの」

「では意味のない話だ、そうだろう?あったこともない人間の書いた小説で詰めるつもりか?バカバカしい」

「急に饒舌になったのは答え合わせのような気もしますわ」

「沈黙は肯定だから否定せざるを得ないのさ」

「結構、調子が出てきましたわね!」


 なんだかウキウキしているようなエリーゼを見てもしかして失敗だったかとすら思う。これはダメか?

 何か失敗したのかもしれない。


「そのイルディコ先生の夫が作品を書いてた話をしたでしょう?まぁその『グドルン』自体はイルディコ先生ですけどね」

「それで?」

「夫の名前は何でしょうか?」

「まさか……ジン・ライヒベルクか!」

「曽祖父ですの?いや、曾祖母の出身はどこかの宮廷貴族だったはずですが。というかそれはロバートが捨てた……失礼しましたわ。男が捨てた元婚約者の夫を当てに行ってませんこと?イルディコの夫ですわよ?」


 たしかにそうだった。

 少し混乱していたようだな。


「そうか……ライヒベルク公爵が愛人にしてたのか?」

「お母様がそれを許すとでも?」

「だから亡くなっていたんだろう?」

「その場合亡くなるのはお父様ですわ」

「ん?…………ん?それは公爵家の血筋が……」

「ワタクシが産まれたら死んでますわ」

「万全に成長するかわからないのにか?たしかに苛烈な方だとは思うが……」

「は?あなたが知ってるお母様は社交界の姿でしょう、猫くらい被りますわよ」

「あれが?トラと間違えてないか?」

「トラは自分より弱い生物しか襲わないから確かに猫を被っているという意味では適切ですわね、お母様は社交界では自分より強い相手でも噛みつくから猫を被ってるとは言えるでしょう」

「自分で言っててわからないか?自分より強い相手に噛みつくなら猫を被っていないだろう……?」

「噛み殺してないなら猫かぶってますわ」


 何だこの一族。コイツらのほうがよっぽど蛮族だろう。

 でもこいつの母親であるライヒベルク公爵夫人アリアは帝国皇女だからな、ガリシア帝国皇女で継承権を持っているからな。

 やはり皇族ともなるとそんな連中しかいないのか?


「わかりませんの?」

「どれがだ?ライヒベルク公爵夫人の性格か?」

「いや、それはどうでもよろしくて……。イルディコの夫ですわ」

「知らんな。ヒントでももらっていたなら申し訳ないことだが、私にはわからないな」

「残念ですわね」

「ん?そうか、私を捉えた騎兵隊指揮官の北部戦線参謀シュライヒャーか?」

「いや、全く違いますわ」

「ならお手上げだな」

「答えはワタクシの騎士ですわ」

「……は?」

アリア「私は雌ライオンを目指している」

ゲハルト「……私は?」

アリア「雌ライオンの夫」

ゲハルト「雄ライオンではないんだね」

アリア「私の夫は雄ライオンほど情けなくないわ」

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