エセル敗走記10
「実は結構売れてますの、その時の話の本。『高貴なる女王』、ご存知かしら?」
「ああ、あなたのご友人がおすすめしてたことは覚えているよ。それが?」
「あれは作者こそイルディコですけど実は夫のほうが書いてましたの、振り回されてる夫のほうが書いた……。まぁいいですわ、それはいいんですの、全部書いてたわけでもなかったみたいですし。まぁ夫婦間のラブレターみたいなものでしょう?でも『グドルン』はイルディゴ先生の作品ですわ。内容を説明いたしましょうか?」
「…………」
「沈黙は肯定ですわね。とある部族……まぁグルドン族長の派閥のことですわね、タイトル通り。そのグルドン族の娘は婚約が決まっていた。その婚約の決まっていた相手部族の男性は蛮族の中では弱かった為軽んじられていた、まぁよくある話ですわね。本来であればその分賢いから族長になったというのが物語の定番ですが……残念ながらそうではなかった。ただ本当に弱かった。だからこそ、婚約者は政略結婚だからこそその男性は成果を残さなければならなかった。そんな話」
「そうか、よくある話だな」
いいつつも私は嫌な予感を抑えることができなかった。
こちらを見るエリーゼはとても楽しそうに話をし始めていた。
男は大きな成果を欲して南部の土地を切り取りに出かけた。
そこで勝っても即座に反撃されてすぐに獲得し跡地を失う、男の不足はどんどん弱まり、ただでさえ軽んじられている部族全体が更に軽んじられていった。
しかし婚約者の女性はそんな事を気にしていなかった、二人でもり立てればきっと強くなるだろうと、何も気にせず男を支え続けた。
ある時、南の蛮族の大族長から南の蛮族が好き勝手しているから倒してほしいと援助があった。
なんでも南の蛮族は色々と悪さをしているようだと、だからこそ南の蛮族の間で不信感が募っている、これが好機であると言う話だ。
その証拠に南の蛮族でも男に連絡を取る物が増えていった。そのうちで何人かの蛮族はバレて殺害されたがうまく殺っている連中は生き延びていた。
婚約者の女性は都合のいい話であると止めようとしていた、それに南の蛮族を倒せばその地域の族長にしてくれるという話だ。
南の蛮族は個々では弱い。ここで数を増やせれば決闘で押し切れるはずだと男は婚約者の女性の言葉を聞き入れなかった。
しかし、男性は南の蛮族が決闘を受け入れる主義ではないことを理解していなかった。
絶対に失敗するであろう作戦を訂正されるために婚約者の女性はしょうがなく手を貸すことにした。政略とはいえ愛する夫になる男を助けようと不足に協力を募った。
男性は気分良く大きく空手形をばらまいていた、軽んじられている彼は足元を見られるものもあったが婚約者の女性が修正させたりしてなんとか回していた。
そして婚約者の女性は南の蛮族とも渡りをつけいつ寝返らせるかも計画した。
時が経ち、準備が万端になると男は南の蛮族へ侵攻した。
南の族長は即座に迎撃に出るも他の部族が集まらない、来る途中で他の不足からの襲撃を受けたり、またなぜか右腕の族長が東の蛮族を警戒して出陣しなかったりと不幸が相次いだからだ。
南の族長は南の大族長へ援軍を求めたが、即座に派遣するので耐えるよう言われた。実際は男と協力関係にあるので増援は極めて遅く、到着した途端に男を当たらな南の族長にする予定なので救援はなかった。
また、南の族長は西の族長にも増援を要請したが、婚約者の女性が西の族長の北にいる部族を動かしていたため援軍に応えられることはなかった。
それでも南の蛮族に苦戦した男は刻一刻と迫る制限時間に焦りを持っていた。
男は協力した部族に更に空手形を切った。もしも南の族長を討ち取れば重用しようと。
軽んじられていた彼のその空手形は他の部族から軽くあしらわれ、一部はこれを景気に力を持てば名目上の族長である男を押しのけられると奮起していた。
それを見た婚約者はこのままではいけないと自分の部族を率いて南の蛮族長の本体へ突撃を賭けた、これがうまくいき南の蛮族長は討ち死にして勝利を収めた。日和見に徹していた南の族長は打って変わって男に恭順した。
男は婚約者に対して報いようと答え、自分がここの族長となったらこれで釣り合いが取れるといい、女性もそれを受け入れた。
しかし、南の大族長の軍が迫ると一部の軍が反旗を翻し男の軍を攻撃した。
また婚約者がこれを打ち破り、そして南の大族長は約束通りここの族長にすると言った。
しかし男は献上する品を見てこれでは暮らしていけないと言った。
男は贅沢をしたかった、もしそれを毎年献上すれば空手形を考えても余裕がなくなる生活に変わるからだ。
男は南の大族長の軍をひと叩きして有利な条件を得ようとしたが運良く勝ってしまった。
これが婚約者の女性の運の尽きで、自力で勝利した男は完全な独立国家打ち立てることを夢見た。
空手形の履行を求めた部族を襲撃し、殺し、一気に残った部族を傘下に収めると南の蛮族の娘を妻として王国を建国した。
男は自分は貴族の末裔であり、南の蛮族に北の蛮族に売り飛ばされてしまっていたとありえない嘘をついて王位についた。
本来であれば南の蛮族の正統後継者であり、元の南の蛮族は無理やりその地位を奪ったと宣言した。
同時に婚約者を蛮族であると追放、講義した女性の親族を皆殺しにして黙らせたのであった。
婚約者は涙を流しながら新しい都をさり、北の部族をまとめたのにすべてを履行されなかったことから命の危険を感じて西へ逃げた。
エリー(4歳)「やはりロバツはクソ」




