強訴みたいなもんですわ
エリー「よっしゃぁ!」
全員「(ドン引き)」
「聞いてのとおりですわ、国王陛下の命令です。前司法大臣をこちらにお連れしますわよ」
王宮の廊下で指示するワタクシに遺族は困惑してるようで、なんとも言えない雰囲気で混乱すら見えますわね。
「アン、マーグ」
「「……」」
「わかってるでしょう?」
「本当にやるのか?」
「引くわー……」
「国王陛下のご命令ですわ。さ、お早く」
「「……」」
まぁ流石にどうかと思いますわよね、倫理的にも。
でも致し方ありませんわー!国王陛下のご命令ですものー!忠実な臣下としてはその願いを叶えるために奮闘努力してしかるべきですわー!ねぇ宰相?
「……」
ねぇ宰相?
「……何か?」
「国王陛下が前司法大臣をお呼びですから宰相閣下もお手伝いしていただけると確信していますわ、そうでしょう?」
「…………何故……説明しなかったのですか?」
「あら?宰相閣下がお耳に入っている情報が国王陛下に届いていないだなんて……まさかそんな……ありえませんわよね?釈放された直後にお耳に入ったような情報を?国王陛下が知らないだなんて」
「……」
まぁ知らないでしょうね。
宰相は遺族かルーデンドルフ侯爵の手引で伝えられたのでしょう。
反応次第ではぽっくり病死してたんじゃないかしら?
最も疑われてたのは宰相ですものね、昔のあなたならこうも杜撰な事はしなかったからこうまではされなかったでしょうけど最近はダメダメですものね。
まぁ生きててよかったじゃありませんの。
「シャーリー?クラウ?もういるんでしょ?」
「なんや?」
「今することなんかあるっすか?」
「ええ、ウチが株主やってる会社の記者かき集めてきてくださいまし」
「ついでにええ棺桶持って来たるわ」
「もう記者は王宮外に呼んできたっす!」
仕事早っ!
したり顔で指示出してたのが恥ずかしくなりますわね……。
よく考えたら最初から呼んでおいてよかったですわね……。
切り替えていきましょう、計画は計画でしかないですもの、そこからの応用こそが個人の真価を発揮するのですわ!
「じゃあ国葬を開始しますわよ、立派な持ちやすい棺桶が届いたら……移し替えましょう」
「前司法大臣が死んだことは民衆に届いてるんよな?あの感じだと」
「そりゃもち……」
あら?宰相が捕らえられたみたいな空気でしたわね……?
宰相が取調べ中の情報自体はあったはず……教会から練り歩く際にもうすでに……。
「……ないかもしれませんわね」
「じゃあ……」
「教会に行ってから決めましょう、公正無比な前司法大臣のことを把握してるかどううか」
この前司法大臣の死亡報告はジーナが扉の前で待ってる限りは出来ないでしょう。
これでいいですわね。
「どうやらきな臭さは感じてるようですわね」
「まぁ再度練り歩いて記者が後ろからついてきてますからね」
「記者が把握してない理由は……」
「見届けた人が……皆ここにいる……」
「…………移し替えましたか?」
「ええ、もちろん。騎士団の皆さまもご苦労さまですわ、宰相閣下も」
「…………本当にやるのですかな?」
「国王陛下がそれをお望みですからね、忠臣のワタクシとしては願いを叶えて差し上げたい」
なんか宰相と身内の視線が冷たいですわね、被害者遺族は怒りに燃えてますけどワタクシに対してではありませんわね。
そういうのは敏感なんですのよ?
「じゃ、教会の外にいる記者と民衆に演説でもしましょうか」
「エッグい……」
棺桶を担がせて再度練り歩くワタクシたち、ワタクシたちも担いでますわよ?
もちろん、宰相も前財務大臣も遺族の代表者数名もぎゅうぎゅうになって運んでいますわ。
これ淑女がすることかしら……?
まぁいいですわ、切り替えていきましょう!マーグとかは棺の警護みたいな位置にいますし……あら?女性で運んでるのはワタクシだけ……?
強い女ってことですわね。
さてそろそろ王都広場ですわね。
はい、停止!棺桶を処刑台の前に置いて……。
「皆様、私はライヒベルク公爵家のエリーゼです。この場をお借りしまして伝えたいことがございます。皆様の信頼する司法大臣閣下に関して知ってることはございますか?」
民衆からは知らない、責任を取って辞任したのではないかと投げかけられる。
いいですわね、これは重畳ですわ。
「先ほど司法大臣は最後の仕事として超法規的措置で現状無罪が確定した宰相閣下を含む方々の釈放を決定されました。同時にある人物達に無罪を言い渡しました。それはこちらの司法大臣執務室勤務官僚のご遺族の方々です。」
ざわついてますわね、意味がわからないでしょう?謎の変死事件と関係してると思ってるのはせいぜい記者くらい?あとは陰謀論者くらいじゃないかしら?
「司法大臣執務室勤務の方々は大罪人ノーマン・モンタギューが超法規的措置を使用した際に現場にいた、もしくはいなかったものでその職にあった全員です。全員が殺されました、あるものは膾切りにされ、首をはねられ、焼き殺され……司法大臣はこの件に関しては拘束され息子と事件の関係を問われていたため介入できませんでした。これは事故死、病死で処理されました、30人近くの人間全員がこのように殺されてです。そのうえ遺族の実家取り潰しと財産没収を命ぜられたのです……おわかりですね?遺族の方々は無罪だと、このような取り潰しや財産没収は無効であるとそう伝えて辞任したのです。遺族の中には行方不明になってしまった方もいます」
ざわざわしてきましましたわー!!!
こういうの大好きですの!先程は出来ませんでしたしね。
「この司法大臣執務室勤務の方々の殺人捜査は警察はしていません、もっと上の方々が直接捜査をすると介入したしました。でも結果はこのとおり。司法大臣は最後の職を全うしました、偉大な、そして立派な方でした……」
ざわつきがおさまってきましたわね?公爵令嬢が名前を出せない、出さない上の方々なんて1つですものね?
先程の練り歩きで宰相がなにかやってたのかと思ってた民衆が警察に疑いを持ち、もしやグルか思っていたのに民衆が宰相を責める目を困惑に変えて言葉が減っていく様。こうして他人の感情を揺さぶるのは楽しいですわねぇ。
愉快痛快ですわねー!
「そして、今ここにいらっしゃいます」
ちらりというよりガッツリ振り向いて棺桶を見てまた前を向く。
貴族的仕草では意味がありませんからね、この手の行為は。
「司法大臣は……前司法大臣は最後の仕事を終えた後、遺族の皆様に謝罪し自裁いたしました。後任はジョージアナ・スペンサー男爵令嬢です。ですが国王陛下は法的根拠があるにも関わらずそれをお認めになりませんでした……」
はいここで伏し目、あくびをこらえてちょっと涙。
「釈放された宰相閣下が自裁の一報を聞き教会にいらっしゃり、葬式に参加して新司法大臣の就任に賛同していただきました……私達はイアン・モンタギュー子爵の追悼をし、新司法大臣の推薦を宰相閣下と遺族の方々と国王陛下に伝えにいきました……ですが……」
はいざわつきが収まるまで沈黙。はい、静かになるまで2分かかりました。
「国王陛下はそれを拒絶されました。法的根拠を最終的には認めてくださいましたが……自裁された前司法大臣を連れてこいの一点張りでこうして……私達が眠りについたイアン・モンタギュー子爵を運んできたのです。国王陛下のご命令によって!」
葬式まで上げた死者の遺体をもってこいだなんて大罪人でもしないですわよ?信じてないけどあの世にいけなくなりますわ!ワタクシは信じてないですけど信心深いのかしら?信仰以外にすがるものを見つけたほうがいいですわよ……?
ほーら教会権力が弱いこの国であってもタブー過ぎてざわついてますわ、宰相も口を挟まないし前財務大臣も見てるだけですわ。
沈黙が雄弁になるときは見て分かるときですの。
聞くよりも見ただけで把握できる、勝利としては最高の部類ですわね。
「私達は国王陛下のご命令により永久の眠りについたイアン・モンタギュー子爵を起こし国王陛下の前につれていかねばなりません……ですから……皆様はイアン・モンタギュー子爵に別れの言葉と、今までの貢献に感謝を、死ぬべきないものが責任を取ったことに関して……哀れみと……死後の世界に行けることを祈っていただきたいのです」
はい決まりました!
民衆絶句!記者も手を止め口開けてますわ!なんか身内もぽかんとしてるけどまぁどうでもいいですわね!
ふと現実に帰ってきたように民衆も十字を切ったり手を合わせたり各々のやり方で悼みはじめましたわ。
結構慕われてましたのね?あるいは葬式をして埋めるだけのところで棺桶ごと王城にに呼び出されたことを憐れんだか。
まぁ、どっちでもいいですわ。
王家の信望がまた落ちましたわね、第2王子のことを抜いても底値に近づいてきましたわねぇ……。破産前に売りどきですわよ?
エリー「ヨヨヨ~カナシイデスワー」
貴族メンバー「(うっわ嘘臭い)」
民衆「公爵令嬢優しい……」




