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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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消化試合

「チッ……」


 思わず舌打ちをすると周りも緊張したようだった。


「抜かれるのは……想定内……さすがに逃げ切られるとは……思わなかった……。ハーンを討ち取れないのは残念……」


 誘導するつもりはあったがこうもあっさり抜かれるとは……。

 射線の問題か……。

 少しだけ早すぎたかも知れないな。


 歩兵部隊がやはり厳しい。

 プレートアーマー相手では矢で致命的な攻撃は与えられない。

 かといって全軍をプレートアーマーにできるわけではない、機動力も削がれる。

 それでも殺しきれなかったのは内側に入られたこともある。

 甘くはないな……。

 弓の威力を上げる、精度はともかく……。


 いや、反省会は後でいいだろう。

 誰かが討ち取っていればいいのだが……。


「バルカレス軍がハーン軍副将に当たるベンジャラを討ち取ったとのことです」

「そうか……」


 まぁ痛手は負わせたな。

 ハーンの首を取れれば違ったのだが、もはやロバツ軍はこの有り様だ。

 本国に残っている兵はどれくらいだろうか?

 この人数であるなら1万もいない気もするが、それをハーンが指揮してるのかと思うとうんざりする。


「現状……」

「ブース軍はブース戦死、潰走とのことです」

「エリーゼ王太女、エセル軍精鋭と戦闘開始、親衛隊が後方に控えておりますがキサルピナ軍が攻撃を開始」

「レズリー軍から一方、ハーン将軍は戦場を離脱」

「チッ……」


 逃がしたか、真っ先に逃げ出した部隊にいたか。

 まぁ、そうなるか。

 ハーンを殿にしても得られるものなどなにもない。

 ハーンが死んだらハーン軍で誰を逃してもプラスにはならないだろう。


「これより……エセル軍攻撃に全力を注ぐ……使いそこねたジャベリン部隊を出す……投げ槍でどこまで敵に打撃を与えられるかためしてみよう……」






「おかえり、最前線観光は終わったか?」

「観光ついでに前衛潰して戦線押し上げてやりましたわ」


 前衛崩壊と同時に本陣に戻って報告を聞こうと思わったらめっちゃ気が緩んでますわね。


「さすがに精鋭は手強いですわね、親衛隊は?」

「まだ後方だな」

「あーあ、嫌になりますわね。でもこれでチェックメイトでしょう」

「ああ、ブース戦死。見えていたかは知らんがハーン軍も潰走状態。逃がしたそうだがな」

「あら残念。まぁいいでしょう!許容範囲、許容範囲」


 ブース軍は潰走、ブース将軍も戦死。

 ハーン軍も撤退、まぁ取り逃がしましたけど。

 いちばん大事なのはエセルだからハーンを逃がしたことは許容範囲。

 エセルを討つなり捕らえるなりすればお釣りどころか巨万の富ですわ。


「キサルピナ騎士長が迫っているな」

「それでこそ……」

「ローズとベスの弓射攻撃もじわじわと兵を削っている。これは慢心しなければ勝ったな」

「それは言ったら負ける気がするんですけど……?」

「?」

「ああ、いいですわ、うん……」


 フラグってやつをへし折るのも醍醐味ですからね。


「他に報告は?」

「報告も何も無い」

「まぁ、それ聞いたら報告するようなこともないでしょうしね。苦戦してるようですからまた観光にでも戻るとしましょうか。……で?わざわざ本陣まで戻ってきたですけど余人を介さぬ重要な伝令は?」

「キサルピナ騎士長から、我が軍勝利とのことだ」

「知ってますわ」

「多分意味合いが違う可能性があるが」

「…………ま、警告でないならいいでしょう。観光のしがいがあるといいんですけどね」






 前衛はすでになく、精鋭部隊もすでに押されている。

 モンセイユは陛下の鎧を着込んで指揮を取っているふりをしている。

 実際は親衛隊の我々で回しているのだが敵に察知されてはいけない。

 国王旗を前進させて督戦のごとく振る舞いながら対応する。


「キサルピナ軍、見ゆ」

「もはやこれまでだな……」

「まだやれます!」


 血気盛んな親衛隊員の声を聞きながら違う、そうではないと思わず返してしまう。

 なるべくなら生き残って欲しいものだ。


「さすがに7000いるかどうかの我々では4万以上を有するキサルピナ軍の攻撃には耐えらないな。幸運なことにエリーゼ。ライヒベルクが最前線から急遽といった感じで本陣に戻ったからこそ突撃策を取らないことを不審がられていないのだ。向こうも前衛を押し上げた後だからただ後退したわけでもないしな。それに……」


 エリーゼ・ライヒベルクが一挙に叩きに来ないのは功績を分かち合うためだろう。あまりにも攻勢が弱い。

 もしくは我々の……もといエセル陛下の突撃を待っているのかも知れないが。


「アルベマー軍、こちらに部隊を向けていきます」

「何?それは……」

「ブース軍アルバマー軍を突破、南方方面に各部隊が脱出していきます」

「……陛下とブース将軍がおられればロバツもまだ……持つだろう」


 国家政治間のことはわからぬが、おそらくは即座に滅ぶことはないはずだ。


「マルバッハ軍、弓射前進」

「それができるとはただの弱小貴族ではないな。全く嫌になるな」

「キサルピナ軍、騎兵が前方。突撃かと思われます」

「前衛は消えて、新しき前衛は苦戦中、弓射を受けてボロボロ、そして親衛隊はいまケツを狙われている。全く素晴らしいな、槍兵の残りをキサルピナ軍に当てろ。方陣を組め」

「つまり崩れたら終わりですな」

「ああ、そうだとも。せいぜい崩れぬように騎馬をいなせよ」


 最もあの数の騎兵突撃をまたもな弓兵無しで凌げるとは欠片も思わないがな。


「中団はいかがしますか?」

「自己判断に任せよ、モンセイユ……中団に。親衛隊が騎馬突撃された時お前の死体があるとまずいからな」

「……承りました」

エリー「全然突撃してこないからワタクシをチラ見させて煽ってきますわ、誰が討ち取るか、生け捕りにするか楽しみですわね」

ピジャ「そんな余裕はない」

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