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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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ブース軍の再編

 ブースは憔悴していた。

 自分がここで遅滞戦術をすれば機会を得ることはできる、だが……。

 到着した増援を即座に前に出すがそう耐えられていない、柵は5陣まで壊されゆっくりと後退していく。

 おそらくこのままでは1時間は持たない。


 正規兵だけはほぼ無傷だ。

 いや、違う……昨日の戦闘で疲弊してるから万全ではない。

 本当に無傷なのは本陣周りの兵くらいのものだ。

 敵を2000は削れたと思うが、比率は思わしくない。

 我々はすでに1万切っているのに逃走した兵を正規兵が切ってでも止めるが数で押されるところも出ている。

 死んだ一人逃げた数どちらが多いかわからぬ。


「緩やかに後退をして、そのまま柵を守り槍で突け」

「槍兵がすでに激減しており回り込まれれば……」

「剣でも突ける、防衛を……」

「数が減ったため柵を守りきれません、前に兵をもう少し出さねば……」

「いかほどだ?」

「次に下がれば2000は必要かと」

「なら正規兵を出せ、なんとか防衛を……正規兵の槍兵を出せ」

「はっ……」


 これで正規兵の槍兵も払拭したか……。


 ブース軍の正規兵が入ると慢心していたブランケット侯爵兵は押し戻され、陣の一つを取り戻すに至った。




「罠か、練度の低い兵を前に出し後退し続け一気に精鋭を出してきたか?」

「ジーナ姉上それでは一度下がりますか?」

「いや、陣地をもう一つ取り戻す必要はなさそうだな。追撃の気配が見えない」


 このあたりの嗅覚はマーグかベス、アンがいればわかるのだがな。

 アンかマーグならほぼ間違いがないのだが……。


「敵増援をそのまま前衛に当てたのはエセルも練度の低い軍でこちらを削れれば重畳といったところか。流石に練度にばらつきはあるからな。つまり連中がスリムになればなるほど我々は苦戦すると……ゴホッゴホッ……いうわけだな。だがここさえ落とせば敵の右側を完全に抑えることになる。敵左翼を蹴散らせば後は簡単だ、なぜだと思う?」

「エセル・ロバツを攻撃できるからですね?」

「そうだ、一番厄介なハーンはこちらに来るには手間がかかりすぎる。そのような動きをすればキサルピナ騎士長もベスも丘を駆け上がるさ。さすがにいざとなればエセル人に突っ込んででも助けるだろうが……ハッキリ言って強兵ではないブランケット侯爵兵相手にそこまではしない」

「耳が痛いですね」

「たかだか数年で精兵になったら他の貴族が軒並み泣くぞ?だがここまで戦えているのは間違いなくドゥェインくんの手腕だ」

「恐縮です」


 少し照れるドゥエインは称賛を受け取りながらも戦場を見続けていた。

 ジーナもそれをちらりと見ながら今後の攻撃をどうするかを考え始めていた。

 敵が精鋭を出すのなら我がスペンサー軍を投入するか?


 実際のところブース軍前衛で手強かったはただの正規兵であり、精鋭を投入して打撃を与えたというのはジーナの読みが外れていた。

 的確な穴の塞ぎ方で錯覚したジーナは一度弓兵で攻撃を仕掛けるものの正規兵が持つ盾に阻まれていた。


「奴らは先程の奴らと違って盾があるのか?そうか、では本当にこちらの援軍は急遽振り分けた兵か。なるほど、盾兵の割当まで考えるほど時間はなかったか、それだけ我々が早いと思っていたのだろうな、ということはいよいよ本番か……よし、スペンサー領軍を投入する。アルベマーから少しは仕込まれた技の見せ所だな」


 ジーナのスペンサー軍はブース軍陣地を全体的に攻撃、と同時に味方を巻き込む可能性もある戦闘が行われる陣地に向かい弓射攻撃を行い、混乱した敵を撤退させてさらに追撃。

 敵軍は逃散、後退をして行きあっという間に立て直しに成功した。


「練度が低いのは逃げ出したか、あれは一時撤退ではなく敗走だな。そのまま街道に向かって逃げるだろう」

「放置するのですか?」

「敵地で賊になるよりは逃げるだろう。この状況で追撃はこないだろうからな。練度が低いとはいえそれくらいは判断が尽くさ。さて、ただでさえ減った我が軍は精鋭をを潰したので少しは楽になるだろう。眼の前の敵と空から降ってくる矢の相手はできなかったようだしな」


 立て直し始めた敵軍を見ながら安堵を見せるジーナはちらりとエセルとハーンの軍を見た。

 おそらく5000であろう兵の集団が逆落としを開始していた。


 なんだ……?キサルピナ軍への牽制か?このタイミングでか?

 まぁ、問題はあるまい。


 一方で同じものを見たブースは困惑を隠せずにいた。


「あんな兵をあれっぽっちで逆落とししてどうするというのだ……?備えであればゆっくり下らせたほうが……何か深い考えがるのかもしれない」


 ブースの考えを一つの報告が打ち消した。


「ブース将軍、槍兵がほぼ壊滅いたしました」

「壊滅、正規槍兵が?壊滅だと……?」

「臨時徴兵の連中が攻撃と弓射攻撃でそこそこ犠牲を出し、パニックを起こし前に横にと逃げ回った際に正規兵の道を塞ぎ……スペンサー軍の追撃で……」

「2000の正規兵が……この短時間で……」

「臨時徴兵の逃散が止まりません、敵の追撃はなんとかしのぎましたが……」


 槍兵無しでどれほど耐えられるか?

 後退し続けて丘を下るのか?

 陛下の軍は?


「陣を組み直せ、柵ではなく陣だ」

「小規模にですか?」

「そうだ、臨時徴兵の連中はいかほど残っている?」

「おおよそ500です」

「随分とまぁ……死体が少ないな」

「…………逃散した方かと……」

「軍から逃散して故郷に戻るのなら逃散とは別なのかな?そもそも臨時徴兵の時点で文句を言われる筋合いはないと返されるか」

「将軍……」

「いや、これも税のようなものだ。逃散は正しいのかもしれんがこの思いがなおさら不安を招いていたのかもしれんな」


 敵を見れば士気は上がっている。

 味方を見れば下がっている。

 残念だがそうなる。

 バレたのであれば……いや、あの逃げっぷりを見ればこちらだけは本物だと警戒したか?

ジーナ「ここさえ取られなければいいから固く籠もったのだろうな。こちらも犠牲は大きい」

ドゥェイン「難しいですね」

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