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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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ベスと丘陵

 不思議だ……とエリザベス・アルベマーはあっさり崩壊した敵軍に疑問を持った。

 メガネをキラリと光らせながらも考えを巡らせる。

 取り巻きの中でどちらかといえば陰という感じではある。

 実際の性質は真逆であり、話す印象がそう思わせるだけで本人自体は基本的に行動派であり、弓のアルベマーという部門の出身でもある。


 父が文部大臣をやっているのは本人の能力もあるが、先代の頃に王に諫言、というよりは真っ向から取り巻きごと批判した結果、ほぼ閑職であれども名門であるからといつでも説得できる裏切らぬ位置に置かれた。

 本来であれば軍務省の何処かか、場合によっては将軍の一人になって政治的に干される可能性すらあったがそれをさせぬ政治力と実績があった。

 実際彼の教育改革は比較的うまくいっていたのであるからその座を守り抜いた能力は確かである。

 建国時から続く武門の名門一つアルベマー伯爵家はロバツと戦う経験もあり、先の事実上の敗戦では完全に干されていたため被害をまぬがれ、アレクサンダー女伯爵家が王国軍総司令官代理の地位についても沈黙を守り続けている。

 それはひとえに公爵家とのつながりを確立したからであり、それがなければ政変の一つでも起こしていただろうし、あるいは政務の微コットやまるで時限爆弾のごとく面倒事を積み上げギリギリで病気辞任をして、嫌いな人間に押し付けて領地に籠もりながら牙を研ぎ続けたであろう。


 そんな武門の血を引くエリザベスは作家として才能を発揮したが、本来は武門の棟梁の候補であった。

 アーデルハイドが彼女の作品を読んで目をつけたのはそちらの才能もあったからで、別段性としての才能がないかと言われたらそれはありえなかった。

 そんな彼女は今までの経験、賊退治や軽い遠征、蛮族領域へのピクニックにその直後の国境紛争のことをも思い返してもこの敵軍の崩れ方に疑問を思った。

 まるで無理やり連れてきたような……。


「全軍通達……エセル本陣に射掛けよ……」

「丘に……ですか……?」

「そうだ、今までのアルベマー伯爵領での訓練では高所斉射、及び狙撃を訓練している……訓練は実践で行うためのもの……よく狙え……」

「敵の弓の射程に入りますが……」

「盾がある、敵にはない……抱えて射て……訓練はしているはずだろう……?」

「は、はい」


 陣形を変えさせ、丘の上に射撃を命じたエリザベスは本陣を前進させ、敵の動きを眺めた。


「そうだ、キサルピナ騎士長に……ハーンに気をつけるように……伝えて……」

「はっ!」


 予想通りであれば、あるいは読みが外れていれば……。

 堅牢なエセルの陣に弓射攻撃をして隙を晒すか、貧弱なエセルの前衛に痛撃を加える機会を得る。

 その時動くのはハーンの軍なのは間違いない。

 その時抑えるのはキサルピナ騎士長かエリーでなければ耐えられない。

 弓兵主体の我が軍では丘を下って突撃する名将率いる4万を止めることはできないだろう。おそらく食い破られ蹂躙される。

 だからこそ……。


 左翼を見ると丘を上っていくブランケット侯爵軍が見える。

 最悪の場合はあちらだけが勝てばいいのだ。

 ジーナを参謀役としている時点である程度の成果は得られる。


「矢はどれほどある……?」

「昨日の戦いは後3回はできますね」

「重畳……かといって無駄打ちはするな……」


 どう出る?エセル・ロバツ。






「ほぼ予想通りの敗北だ、高所で敵を迎撃するのにふさわしい。アルベマーを弓で歓迎してやるとしようではないか」


 高所の弓射はこちらのほうが射程情有利、威力も多少は上がるだろう。

 ここでアルベマーを降すか、敗退させれば撤退に有利になるだろう。

 一部部隊はエリーゼ・ライヒベルクの後方などに下がっているところをみると大半は人数的に限界か。

 好機であると思うと同時に抑えでも丘の包囲にも使わないという選択に増援の気配を感じる。

 少数でも嫌な位置に置けばこちらは動かざるを得ない、それを捨てる意図が読めない。


「アルベマー軍とキサルピナ軍はどう動くかな?ハーンがああも構えているのにキサルピナ軍も私を攻めるか?ブースがどれだけ耐えられるかにかかっているが……」


 エルティア伯爵軍から負けてきた臨時徴兵3000を送るか?

 いや、こちらもどこまで耐えられるかわからんがな。


「エルティア将軍の兵は弓兵はいるか?」

「おりません」


 では現時点では使い道がないか……。

 この3000も陣地では動かせないからな。


「よし、エルティア将軍のところにいた臨時徴兵3000をブースへ送る、ブランケット軍相手であればこれだけあればしのげるはずだ」

「直ちに移動させます」

「弓兵たちを前衛へ、敵が上がってくる時はタイミングを見て後退させよ」

「アルベマー軍前進開始!」

「ほう、なるほどな。奴らの歩兵隊を蹴散らせば今後は明るいぞ?アルべマーが我々より高所を抑えないように気をつけねばならんな」

「アルべマー軍が弓射攻撃を開始しました」

「何だと!キサルピナ軍は!」

「緩やかに動いています!」


 歩兵で上がらないだと!

 いや、想定内だ。このような陣地を攻撃するのであれば弓射で数を減らすこと自体はまだありえる。

 ただ城でもない限り数で攻めたほうがまだ……。


「臨時徴兵が打ち倒されていきます!」

「射ち返せ!」

「浮足立っています、想定よりも少し遠いところから飛んできたので兵が混乱しています!」

「クソが!弓兵部隊でまともなやつに攻撃をさせろ!」

「敵が盾を構えています!」

「…………手際が良いではないか!」


 こうなっては私が下るかハーンが下るかだな。

ベス「隙を見せたら突く……」

キサルピナ「アルベマー弓兵の用兵は我々に近い」

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