3日目
撤退してきた兵を収容してかろうじて数を増やしたロバツ王国軍はそれでも誤差だと割り切る他なかった。
ハーン率いる臨時徴兵軍が夜の間に兵が逃走したため35000にまで減り、エルティア将軍に任せた兵も9000にまで減っていた。
戦う前からこの有り様には頭を抱えたくなったが、エセルは臨時徴兵でなくても兵は逃げるから気にするなと気にしていない様子であった・
エセルの軍は撤退してきた自らの兵を吸収し22100まで回復、加え入れた臨時徴兵はほぼ逃走をせずにいた。
親衛隊が退路などの確保をしていたこともあるが、エセルの軍が強いというイメージは知れ渡ってはいたため、ほかはともかくここなら生き残る可能性が高いとの兵士の算段であった。
親衛隊4400にまで戻った。戦場と戦いの規模においては誤差に近いが鍛え上げた親衛隊が100も戻ることはいざというときに少しでも前進できることだとエセルは非常に喜んでいた。
その姿を見て親衛隊も一層奮闘努力をすると決意を明らかにしていた。
ブース軍も臨時徴兵の逃走はさほど起こらなかった、陣地の場所の問題か再度左翼を任されていたが下りづらく、臨時徴兵であれば安全を取ってエセル軍を通らねばならない。左翼の丘を無理やり下って察知されたのを見てエセル軍横を通ろうとするものの察知され引き換えした結果である。
それでも一部の猟師などは丘をさっさと下り逃走に成功していた。
最も敵地から自国に帰れるのかまではわからないのだが。
ブースは9500と逃走した兵と合流した兵を合わせても前日夕方と変わりはなかった。
ロバツ軍はわずか75600という頼りない数で。そのうち約5万が臨時徴兵という弱兵であり、相手に痛撃を食らわせ撤退せねばならない状況に追い込まれていた。
通常徴兵とは違い、年齢的にも身体的にも、そして本来の仕事的にも普段であれば徴兵で弾かれる人間であるためにそこまでの活躍は見込めない。
そもそもが見せ兵に過ぎなかったのだから想定外もいいところであろう。
そしてロバツは王国軍の増援がまだ来ると思っているため、いつでも総撤退に入れるように身構えていた。それには臨時徴兵の多大な犠牲を伴うこと、それが国力の大幅な低下招くことを半ば諦め、最悪の場合は妹にすべてを、命すら委ねることを覚悟していた。
万全のキサルピナと配下騎兵部隊を背に逃げればエセル含めて全滅もあり得るため、最初の戦いよりも遥かに博打めいた戦いを始める自分たちは心底愚かだと思ってはいた。
丘の中腹にエセル、麓にエルティア、左翼にブース、右翼は完全放棄してハーンが丘陵の上に陣取っており、導線的にはいつでも麓に降る場所にいる。
対してエリーゼ・ライヒベルク率いるサミュエル王国軍と言う名のエリーゼ軍。
根幹部隊がエリーゼの指揮下に収まったライヒベルク公爵家19000。万全お状態であるがハーン将軍を警戒し、どう攻めるかを考え続けている。
同時に撤退せず防御、小規模とはいえ要塞化された丘陵にどっしりと構えるロバツを見て敵の意図が読み切れないため動きは鈍くなりそうであった。
特にハーンがウエイン陣取ることを警戒しており、敵中突破か、突撃か、それともこの防衛戦を指揮するために上にいるのかを考えていた。
キサルピナ率いる48000は同じく万全であり、先鋒か、それともトドメの一撃かを考え深夜にエリーゼと相談をした結果、ハーンを担当することになった。
しかし相手の動き次第で完全に遊ばせることになるためエルティア軍の撃破を命じられる。
クラウは各軍に少数を送り込み敵指揮官、隊長格の狙い撃ちに徹していた。
軍としてはそこまで強くないためそれでも約2000というほぼ無傷の立ち位置にいた。
しかしながら派遣した狙撃兵は巻き込まれ死ぬこともあるため実際は1900強と言ったところである。偵察などを任されているため実際に軍規模で投入されることはおそらくないだろう
マーグ率いる少数精鋭は358名を残すのみとなっているがそれでもピンピンしていた。
ただ重装歩兵が多いことと丘陵攻めということもあり敵軍撃破後の活躍になるであろうと待機を命じられていた。
アンのアレクサンダー軍は1700にまで減っているものの軍事貴族としての優秀さと王国軍総司令官代理の家が率いる軍としては数が減ったうえでも万全であった。
ただ数が数なのでエリーゼ軍の真横に配備されていた。
ベスの軍は主力の一つであり11000を維持している。
クラーク軍を降伏させたものの弓兵主体のアルベマー軍は不利を悟り、右翼陣地から攻撃を開始する予定であったが、ハーン将軍が攻撃可能な範囲であったため断念。
キサルピナとともにエルティア軍撃破を任されることになった。
ジーナの軍は4300と程々を維持していた。
しかしながら強いとも言い切れない軍ではあったので主力とまではいえず、ドゥエインの補佐としてブース軍を攻めることとなる。
軍は森林線を得意としているが、起伏の多い場所での戦闘もそれなりには得意であったための起用である。
ローズの軍も同じく1300にまですり減り、前日の戦いで役目を果たしたといえる成果のためエリーの隣に陣を構えていた。
本人も実質要塞攻めではこれ以上の活躍は望めないと下がることを了承した。
ドゥエインの軍は15200と数だけはあるものの経験不足のドゥエインの指揮に戻った。いささか不安を感じさせるものの、ジーナが補佐に入りある程度は可能であろうと太鼓判を押された。
マッセマー商会護衛兵は3600にすり減り、そもそも攻撃は苦手でできない、要塞攻めは論外のため完全に後方に置かれレズリー軍の護衛に徹することになった。
約106400という数的優位にありながらも、半数はキサルピナの軍、敵のハーンという優秀な将軍と、実質城攻めに近い状況ではいささか数が足りないだろうとこちらも軍内では多少の懸念があった。
エセル「一撃講和論どころか一撃撤退論だからなお悪い」
エリー「万全のハーンが大軍率いてくるなんて状況が悪すぎますわ」




