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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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415/562

エセル親衛隊

 決闘を宣言して20分ほど。

 バルドレーは自分の命はここまでだという心境に達していた。

 1人は勝てるかもしれない、だが2人は、3人はどうか?

 倒すたびに体力も戻るのであればある程度は戦えるだろうが……。


 バルドレーが軍に入り得た栄光はエセルとともにあった。

 うだつの上がらぬ兵卒だった彼は、蛮族との戦いでたまたま活躍し、取り立てられ、親衛隊に選ばれ、この地位にいる。

 それは彼の優秀さもあるが、前任たちが死んでいったからでもある。

 親衛隊は張り子の虎でも、権威を飾るための見世物でもなく、エセルの剣であり盾であり、権力の全てであった。


 エセルが隣国の公爵家に脅威を持ったのはどこでも話題に上がるのがロバツの前の敗戦にして戦勝であった

 公爵家には負けたが国王軍に勝ち、主要な人間を討ち取った。やはり頭を取るのが一番良い、この戦術を特化させ公爵家を分断しようと策謀を考え続ける父やキーティン軍務大臣を見てそうはいかぬと思っていた。

 隣国の厄介なる公爵家の令嬢より5歳年上だったエセルは、なんとか公爵家を撃破せねば先はないと考え強大な軍を作る、作り上げる事を考え軍に身を投じた。

 弟ができたことで継承権がどうなるのか疑わしかったこともあるが。


 本来であればエセルが継ぐはずであった王位。

 しかしどこの国家であってもやはり男のほうがとなるのはよくあることである。

 男のほうが受けが良いなどという単純な理由ではなく、貴族から側室を、あるいか国家間で婚姻を結び、弱小国家であれば側室の筆頭にでもすればいい。

 国家としての選択肢が増えるのである。

 女性ではそうはいかない、血筋こそが正義であるならより良き血筋がいるのだ。


 遊び半分で市井の男の子を王宮で産まれてはたまらない。

 逆であればどうとでもなるが、女王がそれをしたら非常に困るのだ。

 王も貴族も自分は血統を誇るのに種だけはまんべんなく撒くことに何も思わない。

 だから女王、貴族女性当主もそうするとそう判断する。

 もちろん托卵もないわけではない。仮に血筋を調べる方法があれば大きな貴族は血統が繋がっていないという問題が起こり得ただろうし、おそらく大貴族の半分近くが無関係な血統であろう。


 10になって軍の調練や賊胎児に慣れて、ようやく戦争に身を投じると現実の厳しさを知った。

 ロバツはそこまで強くはない。

 蛮族相手に苦戦したエセルはそう理解した。


 また5歳年下の弟が王の器ではないことがより一層脅威を感じさせた。

 弟は上に立つ素質というものがなかった。

 それは貴族に食い物にされるということを意味する。キーティンあたりはうまく弟を操ることができるだろう。

 戦に出る私、政治を頑張る妹。そこから文化面に傾倒した結果ヘボ詩人になった弟。

 せめて才能があればいいがまったくないことは家族にも、貴族にも知れ渡っている。


 弟のほうがそれなりであれば王位をつごうと別によかろうと思っていたエセルは、あらゆる素質のないこの弟を、ゴットワルト見てそれどころではなくなった。

 それぞれの得意分野を活かせばどうなっても良かった。


 戦場で政治はできないし、政治だけでどうにかなるものではない。

 かといってそれだけではどうにもならない。理解ある王でもいいし、文化発展で国益を生めればそれでいい。

 それこそ3人が王として連携を取ることすら可能であった。

 想定外なのはゴットワルトは優しさはあるがいいように利用され、文化面はヘボ詩人、見る目もない、芸術を理解せず生み出せないという操られるのに最適なだけの存在であった。


 最悪なのは軍人王女として活躍するエセルにキーティンや父が警戒を持ち、ゴットワルトを持ち上げ始めたことだ。

 これにより、ただでさえ蛮族やサミュエル王国、帝国、デルスク共和国との戦争や交渉。その他もろもろで対立していたバランスが壊れた。

 なにせ次期国王間違いなしと言われるエセルのはしごを父が外そうとしているのだ。

 これがスカケルであれば政治面を手動するのだから仕方無しとエセル派もエセルも気にすらしなかったのだが……。

 よりにもよってゴットワルトであった。


 より悪いのは当時ライヒベルク公爵領とロバツで国境紛争がおきたことである。

 公式的にはなかったことにされたそれはエセルの敗戦で終わったのだ。

 これに勢いづいたゴットワルト派はエセルを追い落とそうとするものの、この紛争で活躍したハーンがエセルの除隊、指揮権取り上げを断固として拒否し、そこまで言うのであれば王子が兵を率いて公爵家に勝利すれば軍は心服いたしましょうと返した。


 最も不幸だったのは興味のなかったゴットワルトであった。

 王位に興味がない彼はあっさりと姉上のほうが戦がうまいから私がでても負けるだけと拒絶した。

 彼はこの行動で軍や軍事系貴族の指示、信用を失った。

 そして文官系貴族の指示はスカケルが強かったこともあり、彼の継承権は父とキーティンらが推しているが現実の見える軍人や文官の上層部は支持しないという隣国の第2王子よりはマシという程度に収まった。


 それだけではただ相手が落ちただけなので、再度の勝利を手にするべくエセルは自身の信用できる兵をかき集めただの護衛部隊を親衛隊を完全に組織化。

 そしていくつかの戦いを経て、ロバツ軍最強のエセル親衛隊を作り上げた。


 そして翌年、再び公爵家との非公式な国境紛争が始まる。

エリー「戦争でないならノーカン、国境紛争は行事みたいなもんですわ」

ベス「領境でもあるよ……」

マルバッハ「国家として止めませんもんね」

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