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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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エセル後退

「敵が決闘を受けました。相手が決闘場所に向かうから待てとのこと」

「だろうとも、所詮は蛮族。これで30分も時間を稼げればしめたものよ。できれば2人くらい打ち破ってくれれば敵の一部は機能不全に陥るのだがな。いや指揮系統を定めていればまた違うか……。右翼軍後退せよ!ゆっくりと、後ろに下がれ!左翼の時間稼ぎを無駄にするなよ!」


これでしばらくは持つだろう。後は陛下の脱出を見るだけだ。






「双剣使いがただの剣使いになった」

「構わん!勝てばそれで良い!決闘の冥利そこにあり!」

「では貴様に勝ったら……」


ハーンの軍では数で押しても崩壊する。

あれがハリボテだとわかればエリーゼ・ライヒベルクはすぐに攻勢に転じる。


「我が軍は一時後退させていただくとしよう!」

「よかろう!では私が勝てばその首いただく!」


いいのか……?そんなことをして?だいぶ無茶を言ったんだが。

負けたらそりゃ死ぬから別にいいが、妾にされるよりはよほどいい。


「では我が子どもたちのためここで倒れよ!」

「ママのためここで死ね!」


こいつ情緒不安定か!?


切り結びながらも明らかに左の剣の威力は落ちている。

が、蛮族相手だ。油断はしない、おそらくもう少し強い攻撃を出せるが油断を誘っている。

貴様らの考えはお見通しよ!


「元は1本でな!別に苦手ではないのさ!」

「最初っから2本でやってるほうがすら恐ろしいね!だがそうであればすでに私は血に伏しているであろうよ!」

「何をいうか!私は決闘で一度しか負けたことがないのだぞ!模擬戦はともかくな!」

「今日を二度目にしてやるわ!」

「ぬかせ!貴様らは一度も公爵家に勝ったことはないだろう!」

「今日が栄光ある勝利の日だ!」


足技の多様が目立つがあからさますぎる。

右の剣の一撃をいなし、左の剣を払う。


ここだ!


左の剣を払った後、そのまま返すように胴を払う。

ユグルタは払われた剣を逆手に持ち直した。だからなんでそんな真似ができるんだ!それは長剣だぞ!ふざけるな!

左の逆手長剣が私を襲うが予想通りだ。

滑り込むように倒れ思いっきりユグルタの左のスネを蹴る。


「!?」

「足元ががら空きだぞ!」


愛剣を左に持ち替え、右手で腰につけたダガーを抜いてユグルタの腰の鎧の隙間を刺す。


「貴様らはその鎧、着慣れていないだろう?」

「お見事、だが浅い!」

「それも読んでいる!」


右手の長剣を振り下ろそうとするユグルタに対し、左で持った長剣を振る。


「一朝一夕で利き腕以外で剣を使えると思うなよ!」

「この一撃でいいのさ!」


振った件を右手でも支えて、ついでにだがを足で蹴り、押し込む。

鈍るユグルタの剣先を付け焼き刃の曲芸のような方法で払い、よろけたところをさらに蹴る。

ユグルタの左手から剣が落ちる。


「剣を落としたな!貴様の負けだ!」


別にそんな決まりはないが蛮族であるユグルタの価値観で一利あったのか動きを止める。

その動揺の隙に立ち上がり、剣より早い拳をユグルタの顔面にぶち込んだ。

流石に即座に起き上がることはできなかったようでこれを好機と私は宣言をした。


「この決闘、ロバツ国王エセル・ロバツが勝利した!約定どおり我が軍は後退する!決闘の結果は絶対だ!決闘を汚したくばかかってこい!」


兵に後退命令を出すものの戻って来る兵は数少なく、蛮族共は追撃することなく私をたたえて拍手をしたうえで見送っていた。

こいつら決闘優先主義すぎるな。おかげで助かった。






「何か言う事はありますの?」

「はい、ママ……。申し訳ありません」

「いつからこの軍はあなたのものになったんですのユグルタ?」

「いえ、私は……私の権限の範囲での戦闘停止を命じる予定だったので、想定外と言うべきですか……」

「そこを詰めて宣言しておけばこうはならなかったでしょう?負けるとは思ってましたけどちょっととどめを刺しそこねましたわね……」


できの悪い子ほど可愛いと言うべきか。

蛮族って自分が強いと思ってるやつほどこういうところがダメなんですよね、キサルピナくらい育ってくれればいいんですけど。流石にそのレベルの人材は蛮族領域から今は離せませんからね。


「クラーク軍降伏」

「あらまぁ慶事。それで責任者は?」

「戦死したため現場判断で降伏の白旗を掲げたとのこと」

「ベスかクラウか。まぁいいでしょう。ユグルタ、エセルの宣言はエセルの軍の撤退を見逃すという認識ですわよね?」

「…………私の認識では」

「あなたではなくて敵の認識ですわよ?ここでワタクシ達がブース軍を攻撃したら地に落ちるのはワタクシとあなたの名誉ですわよ。場合によってはワタクシの領土全体の名誉が地に落ちますの、おわかり?」

「もうしわけございません、我が主」


謝罪で態度を使い分けるな!


「まぁいいですわ、内臓に傷はないのでしょう?指揮官交代。安静にしてなさい」

「……罰は甘んじてお受けします」

「降格。わかりましたわね?決闘の敗北に関しては何もありませんわ。それで罰したらあなたもエセルも馬鹿にするようなものですからね。決闘は絶対。そうでしょう?」

「はっ……」

「此度の降格はワタクシの軍をあなたが勝手に停止命令を命じたこと。総じて決闘の対価に自分の持ち得ぬものを賭けたこと。結果的にそうなったとはいえ、結果はそうなりましたからね。もう結構、下がりなさい」


はー……。蛮族の教育アーデルハイドに投げておけばよかったですわね。

公爵軍の編成をこの辺の頭回る人間に変えたかったんですけど……。あくまであれは護衛ですからね、まぁ致し方ない。

キサルピナ「ちょっと待っとけ……」

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