増援の到着
「キサルピナはっや……」
半日も早く来たけど軍として疲弊してませんこと?
「さすが族長の右腕ですな」
「さすがママの最初の娘よ!」
「50000の兵で半日早く進軍してくるとは……」
はー……あなた達の目線でも異常なんでうのね?よかった、ワタクシがおかしいわけじゃないですのね?
…………いいとこ持ってかれたかしら?
「国王旗、移動しています」
「前でしょう?」
「はっ!」
「そう、それこそがエセル。迎え撃ちなさい。私を……ワタクシを打ち破る機会を与えて差し上げましょう!サービスですわ!」
「それでこそママ!」
「大族長!あんたこそが俺等の頭!」
「姫様……」
好き勝手呼びすぎてワタクシの自我のほうが壊れそう。まぁいいか、どうせワタクシだし……。
「悪魔がいれば勝てる!」
「さすが我らの魔王」
いいとはいったけど悪魔や魔王はないでしょう!悪魔ですわよ!
「迎撃、手厚くおもてなしして差し上げなさい」
「王女の首を取るのは俺だ!」
「いいや私だ」
「女王ではないのか?」
「なんでもいいさ、さぁ行こう!」
「貴様らでは格が足りぬ」
本当に戦いが好きですわね。蛮族にふさわしいですわ。
「諸君!今日まで私についてきてくれたこと感謝する。敵の首は眼の前にある、我々はすり減り、公爵軍の増援が来た今となってはもはや風前の灯であろう。クラーク将軍は戦死し、ブース将軍は包囲下にある。そして我々は分断され、叩きのめされた。……しかし逆であれば油断するであろう、そこを突く。私の寵児よ、子どもたちよ、いま一度最後に力を貸して欲しい……親衛隊は後方を守り、予備騎兵は打倒され今や我らは5000もいない!連中はまだ2000はいるだろう、100も殺せていないのだ。奴らは我々より強い、だが必要な首はたった一つ!他はすべて打ち捨てよ!余は諸兄らの先陣にあり突撃!」
本当に親衛隊であれば勝機も今より見えるのだがな……。
剣を振り一人を斬る、浅いか。とっさに下がるあたりなかなか……。
「続け!」
切り合い、押しのけ前に進む。
なぜこうも進むのか?まるで熱したバターナイフでバターを切り取るようなにあっさりと進む。
馬も攻撃されず落馬することはない。
これではまるで……。
「エリーゼ騎士団、第4部隊長ユグルタ!決闘を申し込む!」
やはり蛮族で固めていたな!
「ほざけ下郎が!国王相手にたかだか部隊長ごときが決闘を申し込むだと!せめて団長を呼んでくるがいいわ!」
「団長のキサルピナは今あなたの親衛隊を撃破している、必要とあらば呼び寄せるが?」
勝てるかあんなバケモン!騎士長でエリーゼ騎士団団長までやっているのか!
「時間は私の敵でな!そこまで言うなら我慢してやる、負ければ道を開けよ!」
「王と剣を交えるほど名誉があろうか!いざ!」
「貴様らは突撃せよ!決闘の邪魔ぞ!」
誰か一人でもと届くがいい……!
「ほう?誰も見届けぬのか?」
「勝ち戦の見届けが必要か?」
「ふん、我が主が褒めるだけはある……。その首いただく!」
「取れるものなら取ってみよ!」
「決闘を始めた……?」
「はい、見事な口上にて」
それあっちが私に決闘申し込んで出張る予定だったのに何をやってんですの?
「キサルピナ代行は騎兵隊の掃討を完了、メインディッシにかかっております」
「メインディッシュですわ、あとどちらかといえばこっちがメインディッシュですわ」
「難しいですね、言語は」
「戦場で言うことではないとは思いますけどね、それで誰とやってるんですの?」
「ユグルタです」
「じゃあエセルが勝ちますわね、ユグルタの戦法はロバツ北方蛮族に多い手法ですから読まれますわ」
そしてキサルピナ軍到着より1時間、臨時徴兵された7万の兵を率いてハーンが戦場に到着した。
「なんですって?」
「ハーン将軍7万、戦場に到着、こちらに向かってきています」
「7万?」
「7万です」
「7000でなくって?」
「70000です。ゼロの数が違います」
どっから念出したんですの!その軍勢!しかもハーン将軍が主力!?
自分を囮にしてまでも打ち勝つつもりですの!?
あーーー!スカケルがいるからここで死んでもいいんですわね!
しまった!舐め過ぎた!自分の命を直前どころか作戦開始時からベットしてるとまでは思わなかった!
「キサルピナにこちらに来るかハーンを叩くように、公爵軍と合流します」
「よろしいのですか?」
「読み負けましたわ、危機にあるのはこちら。ハーン将軍の7万を我々2000で蹴散らす方法がないとはいいませんわ。その方法を受けてくれるとは思えない」
「決闘ですか」
「何より数で劣る側が決闘を申し込み拒絶されるのはダサいではありませんの、そんな大族長は、あなたたちのママは嫌でしょう」
「……」
「沈黙は是ですわよ」
かといって決闘を申し込まれて斬り殺そうが降伏させようが意味はなしか。
慢心か……。
いいえ、それで勝ってこそ至尊の地位にふさわしい。
こんなときにアーデルハイドがいてくれたらどこかで釘を刺すか訂正を入れたでしょうね。
「ハーン将軍が到着したか、相手は多少動揺してるが……我々は依然不利にある」
「掌握できる軍勢は7000を切りました……」
「予備があればマッセマーあたりを打ち負かしてやるのだが……」
「マルバッハが粘りますね」
「予備を使わせないことに集中すれば2000でも十分か、我々も将軍を1ダース用意するべきだったかな?」
そんな人材はもういないか……。
エリー「まずいですわね」
エセル「終わった」




