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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
ロバツ王国

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崩壊の予兆

「敵の数は我らより遥かに少ない!あれだ!あの旗のあるところにエリーゼ・ライヒベルクがいる!奴らたったの2000だ!圧倒的に優位だ!」


 国王親衛隊1万で本当の根幹部隊が8000。2000は拡張だ。

 予備騎兵5000を吐き出し、15000が我が手を離れた。


 作戦が作戦なだけに兵站関係に3000を割いている。

 単純計算だと私の手元には12000、もっとも今までの戦闘で減っているはずだが……。

 実質1万と2000だ、あのキサルピナもいないのだぞ!5倍だぞ!

 兵站の後方兵すら動員すれば戦力的に微妙でも数では圧倒的に有利だ、せめて1人が1人を殺せば勝てる。


「我が軍は8000を切っております」

「補給部隊は?」

「すでに追い抜きました」

「…………まぁ補給部隊だしな。8000、十分だ」


 それでも4倍差だぞ?


「後衛部隊……もとい現前衛部隊接敵」

「押し切る!」






「たった8000?それならせめて騎兵は戻すべきでしたわね?4倍程度で勝てるなら蛮族相手に手こずるわけ無いでしょう?この2000はワタクシの騎士なのですから。ちょっと蛮族出身というだけですけど。さてゴールドンの500が掃討が終われば横を突くでしょう」

「王太女殿下、敵前衛を撃破しました」

「騎士になると口調が固くなりますわね、礼儀作法のせいかしら?」

「我らが王への敬意です」

「ふーん…………キサルピナもそうですけど急に距離ができたみたいでそれはそれで腹立つんですわよね。対外的ならともかく」

「騎士とはそう言うものです」

「騎士になんてするんじゃなかったかしら?まぁいいわ、騎士の仕事は第一に敵を潰すことですもの。ああ、ゴールドンが横を突きましたわね」

「これで止まるでしょう」

「そんな甘い女じゃありませんわ。私の剣を持ちなさい」






「バルジェス遊撃部隊長が戦死!」

「…………その突撃してきた蛮族共を通してやれ!」


 あの攻撃は蛮族の手法だ!歩兵であんな真似ができる奴らは蛮族しかいない。やはり抱き込んでいたか!

 だがその戦法に苦しめられた私が対策してないと思うか?


「次を再度突っ込め!負けたら下がって再度突撃陣形を取れ!延々続けろ!数の差で押し切れ!」


 あと少し、あと少しだけ兵力があれば……親衛隊が手元にあれば……。


「敵の将旗が移動します!」

「突撃に備えよ!来るぞ!」


 少数が突っ込んでくるあたりこいつらは皆、精神性が狂っている。

 気持ちはわかる、蛮族を相手にすればそういう心境に至るだろうからな!


「敵200がこちらに向かってきます」

「200程度、包囲して殺してしまえ!」

「先頭にいるのは王太女エリーゼ・ライヒベルクと思われます!」

「そら見たことか!やつはイカれている!受け流し……」


 受け流したらどうなる?このまま公爵軍と合流したら?


「通すな!絶対に通すな!エリーゼ・ライヒベルクのいる場所へ突撃せよ!向こうに突撃をさせるな!各部隊はそのまま攻撃を続行せよ!」






「万全であれば止められたかも知れませんわね。でも違う、ワタクシが先陣を切りますわ!付いてきなさい!」


 うん、久々ですわね。こういう馬を駆ける戦いは。

 安定してからは蛮族相手にも任せることが増えたし、決闘で終わる方が多いくらいですし。


「敵がこちらに向かってきます!入れ食いですね!」


 騎士としての顔全然保ててないじゃないですの……。


「そりゃこの首を取れば勝ちですからね、さーてぶち抜いて差し上げますわ!」

「お先に!」

「え、ちょ……」


 何を先に先陣きってますの!


「騎士たるもの先陣を切るべし!」

「ワタクシが先陣を切れないとはとんだお笑いですわね!構いませんわ!遅かったら抜いてやりますから!」


 敵を蹴散らしながら進むものの流石に数が少ないですわね、エセルの首を逆にとって差し上げようかと思いましたけど。


「流石に少なすぎましたね、ママ!これ以上は難しいかと!」

「どうします族長!前か後ろか!」


 化けの皮剥がれっぱなしじゃないですの……。

 うーん……。


「エセルの横を通って戻るとしましょうか」

「流石!」

「やはり煽りの天才……」


 ひっぱたきますわよ。






 陣の真横から少し離れた地点をエリーゼ・ライヒベルクの部隊が通っていく。

 剣をふるい、刺し、蹴りを入れ私の兵を蹴散らしていく。

 やれるものならやってみろと言わんばかりの挑発をされてもエセルはまだ冷静だった。


「突け!」


 しかし相手も手強く、率いる兵ですら槍をひょいと交わし柄を掴んで奪い取りながら相手を殺す。


「追え!逃がすな!」


 言葉も虚しく蹴散らされていく。


「まさか本体を蛮族で固めたとでも言うのか?まさか……いや、やるか?」

「公爵軍の向こう側より敵影見ゆとのこと!」

「本体か……」

「……いかが致しましょうか?」

「こちらに来るまでは時間がある、ギリギリまで押せ!ブースが耐えているからこそまだこの程度で済んでいるのだ!」

「クラーク軍、中軍が壊滅!逃走を開始!」

「……そうか」


 前衛はすでに負け、集合しようにも削られすぎて寄せ集めと化している。

 備えはなく、後方もすでに補給部隊がずたずたに切り開かれている。本陣の真横を通る際についでのごとく切り刻まれたそれは、勝利の後でもはやかつての自分の精鋭を維持できない現実を思い知らせる。


「相手の流儀に合わせてやろう!私が突撃をする」

「陛下!危険です!」

「連中にできて私にできないと思うか?」

「しかし……」

「ここで……勝つぞ!」

「…………わかりました、お供いたします」

「……すまんな」

キサルピナ「あれは……エリーゼ様の指揮ではない!あちらの方だ、まず公爵軍にいるやつを蹴散らしそのまま突っ切る」

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