前進小手調べ
「今計算したけどワタクシの軍が到着するのは3日でしょうね」
「早くないっすか?」
「ワタクシの危機ですわよ?そりゃあ……強行軍で来ますわよ」
「お昼の時間1時間長くなってそう(小声)」
「どういうことですの?」
「急に道が無くなって遠回りしてそう……」
「ベス、随分スムーズなツッコミですわね」
「キサルピナ騎士長にしか慕われてないんじゃないか?むしろそれだけで十分お釣りが来るだろうが」
「ワタクシは蛮族みんなに慕われてますわ」
「恐怖政治じゃね?」
「現状強行軍で来るやろとか押し付けとるしな」
「まぁ……エリーがそう言うんだからいいんじゃないっすか?」
キャス、あなたがいてくれたらコイツラ黙らせてくれましたわよね?
”いやです”
イマジナリーキャスにすら言われましたわ。ペッ!
「エリーゼ王太女殿下の予定通りに事は進むと思います」
「ドゥエイン君、姉と違っていい子ですわ!本当!姉と違って!アーデルハイドなら個々ぞとばかりにディスってきましたわ!」
「ディ……ス……?」
「気にしなくていいですわ」
スラングなんて普通の貴族が知るわけ無いですわね。
平気で言うような外交官目指してた姉と違ってなんておとなしいのか……。
「ローズはどうですの?」
「キサルピナ騎士長がいらっしゃれば百人力だと思います」
「でしょう?ワタクシのかわいい娘ですわ」
「はい、存じております」
さて、約3日……どうするべきか?
「ロバツ側に動きは?」
「依然見えないっす」
「では相手がどう出るか見ましょうか」
「1日、王太女軍は動かなかったな」
「援軍待ちでしょうか?」
まさかまる1日動かないとは……。
陣地構築も進んでしまっているがこれは我々を疲弊させる罠か?深読みしずぎか?
「後方は開けておいたほうがいいだろう、そこを突かれるが……陣地ごと包囲される可能性がある。それが狙いか?」
「ハーン将軍が解囲すると思いたいですが……」
「練度がな……公爵家の増援と王国軍が来たら終わりだ。最低でも公爵軍は1万は来るだろう。引き伸ばせるならそれでもいいが、3日後にハーンが来たら戦闘を開始しよう。そこでどう戦うかで判断しよう、遅延戦術ならば援軍待ちとして陣地を出て攻勢をかける。攻撃が激しいなら陣地に籠もって防衛戦だ。ただ待つ間は背後は取られぬように。背後を狙われて耐えられない時は全力で交代しハーン将軍と合流する」
「「御意」」
さて、まずは小手調べ……。
「ロバツ軍が陣地構築をしている?陣地構築?ベジャハンで?」
「確かっす、ただ後方に陣地を構築せず撤退を用意にしてるっす」
「と、言うことは……ここで雌雄を決するわけではないですわね。ハーン将軍がいないことが気になります。別働隊を何処かに動かしてると思いますが……少数と思われますが……」
「主要街道の人員を減らして小さい街道の監視をしているっす。どこかを突破すればわかるっす」
「現状の占領地の外をすべて監視しているからここを突破すればわかりますわね」
「ただ内部占領地に行くと未機関になる可能性があるっす。現状人手がいないため危険なことは出来ないっす。占領地の外に出ればすぐ網にかかるっす」
「占領地で宣撫をしてるか、ここで一戦してイルモー侯爵領に引くか」
「どっちもあり得るっすね。サミュエル王国というより公爵家と何度も戦ってるは0ん将軍がいることは確かっすから。いっそ国王たちを撒き餌にしてる可能性は十分あるっすよ?」
「国王はともかくエセルはやるでしょうね……。どうしましょう、一戦しますか?」
「増援を待ったほうがいいんじゃないっすかね?後方が空いてるからハーン将軍合流もありえるっすけど」
「…………ちょっとやってみましょうか、ブランケット侯爵軍5000で後方遮断の動きを見せましょう。我軍は東部へ移動して守りやすい丘陵地帯に陣を構えます。全軍前進」
「王太女軍が前進して西部丘陵に陣を構えた?陣地は?」
「作らず布陣だけしています」
さて、ここで動いたということは……援軍が近いな?
我々より早いか?ここで一度仕掛けるべきか?
「陣を出る……私の直営1万で様子を見る、巣穴からでてきたウサギに対してどう出るかで見極めさせていただこうではないか」
「国境14家はいかがしますか?」
「しれっと寝返るかもしれん、置いておけ。ただ背中は抑えておけ」
先鋒を任せたらそのまま寝返りそうだ、ハーン到着後ならうまくやるだろうがうまく対処できるかは悩ましいものだ。
「王太女軍!前進開始!ブランケット軍約5000が前進を開始しました!」
向こうが先に動いたか、これはやはり増援が近いな!明日に来る可能性は高いぞ!
「よし!私が出る!士気をあげるために撃破してやるぞ!」
直後の戦闘でエセル女王軍とブランケット侯爵軍が激突。
正面から戦闘をし数時間で互いに兵を引いた。
エセル女王軍は約800人を失い、ブランケット侯爵家は約1200人を失った。
「ブランケット侯爵家は弱い!率先して攻撃すれば崩せるやもしれん!」
「エセルが直々に露払い……?本陣はエセル旗と国王旗があるが指揮官はエセル……?」
「申し訳ありませんエリーゼ王太女殿下」
「いいえ、相手の狙いが読めましたわ。お手柄ですわね」
強行軍中のキサルピナ「……」




