お茶会ですわー!全員集合!
「ひっさびさのお茶会……ですわー!」
「エリー、うるさいです」
「ちょっと席外すっす」
キャスはご機嫌斜めですわね。まぁ仕方ないですわね。不便はなかったのかしら?ほらほら、言ってご覧なさい?ほーら、ほーら!
「私の父はまだ拘束されてますよ、王家を容疑者から抜けば最大の容疑者である宰相ですしね。まだ不便ですよ」
…………大変ですわね、じゃあ話を変えて、誰かー!おりませんのー!
「だいたい、そんな久々でもないやろ、昨日もやったで?」
さすが!シャーリー!商人の鏡!流石ですわー!
「シャーリーとクラウは……そうだけど……皆拘束されてましたし……」
「いや、マーグと私は駆り出されてただけだぞ、大臣の関係者を使えないから王国軍はまず関係者拘束で少ない人数でやりくりすることになったからな、一応働けはするんだ……」
「あーしはもう掌握できてたからチャラオ系を全員拘束して終わり、こいつらどーする?」
困りましたわねぇ……どうでもいいですわ……。
「そういえばマルスンの、ほらあれ、あれですわー!えーと……」
「ダニエル(小声)」
「そうそれ!どうしましたの?」
「まだ辺境じゃね?」
「じゃあそこでまとめておけばいいですわね、えーと……」
「東のロバツ王国国境の山です」
「ふぅん……近いですわね」
バーゼル山脈に。
あら?皆様どうかいたしまして?お茶会で沈黙は厳禁ですわよー!
ほら、もっと拘束中にあった面白い話とかあるでしょう!ね?聞きたいですわー!
「わかった、動かしておこう……」
「あー……あーし等補給に齟齬があるかもしれないと思う、シャーリーは?」
「軍が移動した連絡が来てないってことはよくあることやで、後を追うかどうかは先払いか後払いかによるでー、前者は絶対届けないとアカンわ」
「普段は……どっちなの……?」
「後払いが多いな、仕方ないことや。国家を守る軍やしね……そこで未払をしたらもう商人は見放すけどな」
「わかった、母上に働きかけて……いや、伝えておこう」
「要請した書類の紛失ってよくあるよねー、あーしもよくやられたわ。パパに……」
さて、今後の方針はこれでいいですわね、ゴミをまとめて山脈に捨てるだけ!簡単なお掃除ですわー!
あれ?ひょっとしてこれ……今後も使えますの?
「もし……」
あら?皆黙ってしまったわね?お茶会は楽しく優雅に、そして明るく。
違いまして?
「王国の通商経済と軍事を動かせる今なら……公爵家への反対派が同じ場所に集まって……バカ王子がそれを知ったら……どっちに動くかしら?」
あら?どうかしまして?
おっといけない、元気、元気!明るく楽しく帝国建国ですわー!
「ちなみにそれはどういう意味で?」
「そういう意味ですわー!」
「ま、ええよ。噂は流しておくわ、反公爵派がいると聞けば元グリンド家の男も連絡役で行くやろ」
「そういえば、ほらアンの元婚約者もいたでしょう?」
「あ、ああ……それが……いや、待てまだ一応婚約者だ。割り切りはしたが。いや……そうだな貴公等には言っておくか」
貴公というから普通にどうでも良さそうな情報ですわね、乙女モードでもないし。
まぁ御母上の口調がそのまま引き継がれただけだし周りがどうせ男の軍人ばかりだから貴公でも貴女でもなんでもいいですわー。今日はケーキですからどれ一口……。
「アドマインは拘束時に暴れたからお父上によって一兵卒で最前線に飛ばされた、もとい飛ばされる予定だ」
「ゲ(ゴホッゴホッ)」
は?なんでそうなりましたの?
「いや、軍務大臣だしその子息だから……超法規的措置を発動したとしたら賛同してる可能性が高いし……私は母は王国軍総司令官代理であって別に大臣ではないし……私も一応軍人過程をこなして入るから軍人でもあるし……」
「な、なん、何がどうなりましたの?」
「拘束しに来た近衛騎士団相手に戦いを挑んで素手でのされた」
「違いますわ、そうではなく……」
「自分が公爵を取り押さえに行くといって王子に伝えてほしいと」
「そんな敵視してなかったはずですわよね?アドマイン?は」
「それを聞いた軍務大臣が近衛騎士の前で何度も殴り、口封じではないかと近衛騎士団が2人を拘束した、何でも王子のために働く準備は出来てるから伝えてくれとアドマインは騒ぎ続けてな。気を利かせて伝えたらしい、どうせお先は真っ暗だろうと」
「だってさー自分から墓穴掘ってたらそのまま眺めてるでしょ?だから墓地に案内してあげただけだし」
いや、何考えてるのよ、何考えてますの!
「ゲドリドル近衛騎士団長に筒抜けなのにペラペラ近衛騎士団の前で計画を話してるみたいだよ?新しい王子の使い捨て道具がわざわざ捨ててくれって手元に向かってるんだし、いんじゃね」
「ただの阿呆ならいいですけど度し難い阿呆では行動が読めませんわ……」
「一応今は王都にいる、辺境に飛ばすか……?」
「王子が新しい駒を探すのが困りますわね、皆嫌がったら何するかわかりませんわ、人身御供でまだ置いておきましょう。指示があれば勝手に動くわ、自分からどこぞへ配属してくれというでしょう」
「エリー疲れてますね」
父親が拘束されてるキャスほどは疲れてませんわ。
「あーそれでさーアイツ切り捨てたじゃん、処刑されたノーマン。アドマインを手元に置いたら司法大臣を呼び出して叱責したり巻き込まれて死んだ遺族の実家を取り潰そうとしたりしてるみたいよ」
「あの遺族の方々を取り潰そうとしてるんですの?せめて報いてあげればいいと思うんですけど、まぁさすがはバ……取り潰し?」
「うん」
「伯爵家の人間もいたはずですわよね?」
「うん、第2王子の名誉を傷つけたとかでキレてたって、法より王家の自分が優先だってさ」
「対外的には病死でしたわよね、堂々と殺されてましたけど……ん?法より自分を優先しろってなかなかですわね」
「そうだよ、王家が直接調べるって警察の介入を拒否したからねー、宰相だって拘束されてた、されてるし。司法省は王家に対して多大な不信感を持ってるってさ、裁判のことといいゲルラッハ伯爵令嬢は王家派になることは絶対にないって公言してるよ」
慌てて言い直してるけどこれ大事件じゃないですの!司法に関する業務担当者達が王家に対して不信感を持ってるのは!
「それで?どうなってますの?」
「司法大臣が説得してるってさ、釈放されてすぐ走り回ってるみたいよ」
「まだあえてない……(小声)」
「もう行方不明の遺族もいるみたいだ、ルーデンドルフ侯爵令嬢からそのような話を聞いた」
「あらまぁ」
ずいぶんと愚策ですわね。これは新聞で煽りがいがありますわ!何のために新聞社のスポンサーになったと思ってますの!
これで司法大臣を完全に公爵派にできますわ!何がアドマインが大変ですの!あんな小物どうでもいいですわ!勝手に踊ってればいいんですの!
さらに勝利へ近づきましたわー!
「それで……司法大臣は秘密裏に蟄居謹慎中の王子の元を訪れているんだが、この前は遺族も全員呼び出されたようで。警戒してまだ容疑がかかってるから見てほしいと近衛騎士以外に今回の検察側の人間についてきてもらったとか」
「まぁ妥当ですわね、検察側の人間ごと殺すくらい乱心してれば考えることはもうないですわ、多少程度は頭がありますのよね、やはり王太子……いえ第1王子が優秀すぎたせいで教育されてないだけで地頭自体は悪く……悪いけどまぁ……磨けば光ったのかしら?」
「で、そこで取り潰しをごねたんだってさー笑うしかないっしょ」
笑うにしても勝利の高笑いですわね、じゃ司法大臣に面会に行くといしましょう。皆で押しかけてやりますわ!
「戻ったっす……大事件っす……」
「あら?超法規的事件の遺族取り潰しの話なら先ほど聞きましたわ、誰か取り潰されまして?」
「イアン・モンタギュー司法大臣が先程自裁したっす!超法規的措置事件に関して遺族は無罪。取り潰し不可!行方不明者捜索継続!縁者に後を継がせること!現在拘束、軟禁されている無罪のものは直ちに釈放、損害は王家が負担!司法大臣職を辞任!それを通達し書類にサインをした後……遺族の前で自裁したっす……」
「クラウ、嘘でしょう?おじ様が自裁したって……」
「ジーナ……事実っす」
ジーナも婚約者だったものはともかく親しく付き合いがあった司法大臣の死にはショックを受けてますわね。まぁ当たり前ですわね。
今回の裁判で自裁もあるかと思ってはいましたけど、まさか遺族を守って彼らの溜飲を下げさせるために自裁するなんて……思った以上に手強いですわね。
うーん宰相を失脚させるまでには至らないですわね。
反宰相の空気が醸成されてたんですけどもこれでは司法大臣の献身として王家を守った形に持っていくでしょうね。
ワタクシ達が殺させたとすりかえるかしら?それに王家批判になると宰相がまた信任を得るでしょうね。
司法大臣室にいたものの遺族はまっ先に抑えて保護しないといけませんわね。
宰相派に抱き込まれる前に……。
手足をもいでもそれくらいはきっと判断して動く派閥の人間がいますわ。
「クラウ?いま遺族の方々は何処へ?」
「教会っす、どうせ自裁するから手間が省けると」
「じゃあ行きますわよ!皆様は後からでも構いませんわ!さ、抑えに行きますわよ!王家に殺された被害者遺族の方々を!」
少なくとも王家の威信と信頼だけは下げますわ、第2王子ではなく王家と王国の全ての株を下げますわ!
キャスは付いてきますわね、アンもマーグも流石にこういうときは武人が早いですわね、キャスは……なんでかしら
ジーナのことは気になりますが先手を打たなければ面倒事ですわ。クラウ頼みましたわよ!
「ジーナ、大丈夫っすか?エリーも表情で心配してたっすけど先手を打たれる前に行動しに行ったっす」
「ああ、うん、そうね……俺も久々に大きな声を出して疲れたわ」
「今も普通の声量っす」
「驚きすぎて声量を戻せない」
「そういうことも……ある……」
「ジーナ、司法大臣からの遺言っす、でもこれは私的な遺言だからイアン・モンタギュー氏の遺言っす。金銭的な遺産は今回”殺された”遺族に、それ以外はジーナに。だそうっす」
「金銭以外……か」
「なんっすか?現金以外だめなら美術品?とか屋敷っすか?」
「いや、約束してたんだ。金以外はくれてやるっていたらそれは私が全部やるときだって」
「なんすか?」
「今までの判例や司法大臣としての職務推の姿勢、行動の仕方全て」
「抽象的っすね」
「もちろん金銭以外の財産もあるけど、いこうか。司法大臣の右内ポケットに入ってる紙を見て」
「なんやそれ、とにかくいこか」
「そこに入ってるのは俺の司法大臣就任の推薦状だよ」
「「「え?」」」
エリー「ワタクシの腕の見せ所ですわ!」
エリー「おかしい……すべてが想定の範囲外……」
宰相「すみません、よくわかりません」
過労気味の公爵「どうして……」




