さーて、支度ですわ
挨拶を終えて談笑に入りたいところですけどこの後予定が詰まっていますの。
それにしても良いですわねぇ、毛糸で芸術品を作れるというのは違いますわね。ありとあらゆるもので芸術品というものは作れるものです、例えば孤児の子供が編んでくれた花輪も芸術ですし美術品ですわ。
ワタクシが身にまとうにふさわしいでしょう。身にまとう価値があると純粋に送られたことも嬉しいですですけどね。
価値は人それぞれではありますけど万民が感嘆するものこそが信の芸術であるともいいましょう。有史以来そんな物があったかどうかわかりませんけどね。
「それは王太子選定会議へ参りましょうか」
「ええ、皆様しばしご歓談くださいまし」
「ありがとうございます。では庭におられる方々と交流をしてきますわ」
「しかし先程……その……」
「王家はもう動けませんわ、あれが最後の悪あがきでしょう。それにしても下手くそですわね。ベスが弓を教えてあげてくださる?」
「……無駄……」
「たしかに断頭台か縛り首ですものね、まぁ警備は固めておきましょう。最も警戒するのは警備の人間が王家かどうかですが」
「騎士団がやってるよ~」
「王国軍も王宮は抑えていますご安心を」
「私達は談笑でいいのですか?ジャックさん」
「ああ、少しだけ休むとしようか」
まぁ、あれクラウの手のものだから別になんでもいいでしょうけどね。
今頃貴族邸の襲撃に発展しているでしょう。まぁどうでもいいと言えばどうでもいい話ですわ。
「さて、先ほどいただいたばかりのこちらに着替えさせていただきますわ。皆様はお先に会議場へ。他の方々はここに?別場所で談笑を?」
「私も一度庭園に」
「あーしらは一応警備のとこでちょっとしたするけど、部屋行くときは言ってね-」
「さて、私も外の警備にいかねばな。まだ暗殺者がいるかもしれん」
それは多分大丈夫ですわ。今頃暗殺者が逃げんこんだであろう邸宅が囲まれてるでしょうし。
「クラウ、打ち合わせですわよ~」
キリキリ来なさいー?
「私だけっすか?」
「そうっすよ~」
「その口調やめてほしいっす」
え?なんで?
「で?」
「あのキモ男が死んだら説得力あるっすよ?良いじゃないっすか。死んだところで誰も悲しまないっすよ。ベスだって大喜び間違いなしっす」
説得力はあるけど……。
え?殺す気満々で射ったんですの?
「ワタクシも危うくでしたわね」
「あれでエリーが死ぬわけ無いじゃなないっすか、躱すと思ったっすけど」
まぁ、そうですけど……。
「躱したらララが死ぬじゃありませんの。一流職人ですわよ?失うのは惜しいですわ」
「え?……そっちが先に来るんすね……そうっすか」
「これ見てそう思わないならダメですわね、ほらこのセーター。どうですの?素敵で素晴らしいでしょう?語彙が足りなくて困ってしまうけど新の芸術は心に訴えかけるということかもあ知れませんわ」
「……そうっすか。ま、エリーがいいなら良いっすよ」
「?いいですわよ?」
なんでも良いのですわ、さて着替えるとしましょうか。
このドレスもせっかく公爵令嬢兼王太女らしいものを着て来ましたけどこのセーターと比べるとボロ布みたいなもんですわ。
「…………クラウ?」
「どうしたんすか?」
「このドレス一人では脱げないの、手伝ってくださる?」
「……いいっすよ」
その生暖い目やめてくださる?そう言うことよくありますわよね?ね?
「後は会議で誰が言い出すか」
俺のつぶやきを拾った典礼大臣はおや?というな表情をした。
「スペンサー司法大臣では?」
「いや、違う人物だったはずですが。変わるかも知れないですからね」
「なるほどそうですか、まぁこれから大臣が合流して……まず有力貴族を入れる必要があるでしょう」
「それは私がする予定です」
「宰相閣下」
ああ、そういえばこちら側だったな。
「ではお手並み拝見」
「これでも国のことを考えているんですがね」
「私のことは考えていないので紋章官の仕事を丸投げしてるんでしょうに」
「終われば少しは手伝う。苦労する仕事の大半を王太女殿下達が引き受けてくださるだろうからな」
……まぁ俺は大臣としての仕事をしてるからな。
せいぜい頑張ってくれ。
「おや、宰相閣下。典礼大臣、司法大臣。これからですか?」
「軍務大臣」
「今日は珍しく近衛騎士が案内してくれましてね。一部通路を通らないでほしいと言うので随分遠回りさせられましたよ。今日は何かあったのですか?いつもの茶番以外に」
「何も無いさ。王太子選定会議が楽しみでな」
「あんなものが?」
「ああ、誰が言い出しっぺになるかということだからな」
「また内務大臣が負けたのですか?」
「さて、どうかな。こうご期待だ」
軍務大臣も驚くだろうな。
まぁ別にいいか、後任候補はいくらでもいる地位だからな。
「さて、我々は?」
「ん~何も考えることなくね?」
そう言うわけにはいかないだろう。警備は問題ないわけではないのだぞ?
「大丈夫だよ、あれどうせクラウの家の人だしね」
ほう、そうなのか。ならいいか。
それにしても……
「わざわざあんなことをしたのか?」
「普通は矢をはたき落とせるから暗殺を決行しろ、死なない。って思うの?アンはどうよ」
「来るとわかっていてもどうなるかは少し自信がないな。弓兵に突っ込むのであればわかるが」
「それも大概っしょ」
「マーグもできるだろう?」
「できるけど死なないかどうかは知らねーし。案外鎧が弾いても気絶するかも知れないしね」
何かを読みながら答えるマーグは実践経験が豊富なだけあって慢心はないようだ。
「マーグ、それは何を読んでいるんだ?」
「クラウから渡されたやつ。アン、こいつら確殺決定ね」
「どれだ?小物か」
「小物が一番面倒っしょ」
たしかにそうだな。
近衛騎士「(流石に気付かんか?)」
軍務大臣「(これ第2王子がうろついてるのか、やだなぁ……幽閉しとけよ)」




