なるようになるさ
ま、終わり良ければ全て良しですわと思ってくれてるだろう。
寄る辺なき平民のララがバルコニーで真っ先に王太女殿下万歳を叫び品物を納品、見る人間の大半はわからなければ献上している。
マッセマーのシャリーではなく全く接点の見えないララ、調べれば同じ学院でバカ王子のお気に入り、さらに調べれば毛糸の魔術師。
そちらで個人の才覚はあっても商人として能力が高いわけではなく職人として超一流なだけ。
よくいう良き領民で良き平民だ。与える利益を考えたら良すぎるまである。
勝利は成っただろう。
仮に王太子選定会議が揉めて流れても貴族と平民が圧力をかけるればいいわけで。そもそも書類はこちらにあるから本当にやらざるを得ないときは宮中で事を起こしたうえでその地位につけばいい。
そもそも流れた時点で暗殺にも失敗したあげくにこれかと思うだろう。実質がどうであろうと王家が上なのは確かなのだ。
エリーは新聞で煽るだろうし、公爵邸で無差別に階級を招くガーデンパーティーでもやるだろう。
平民と戯れることを良しとしない貴族もそれなりにはいるが、それでは立ち行かぬのが下級貴族だ。屋敷も領地運営も貴族階級だけで固めて運営できるわけがない。信頼できる貴族階級で雇えるものはそれこそ名門貴族やらに高給で雇われている。
高位貴族ですら警察権を実質差配していたルーデンドルフ侯爵家は平民階級と深く交流しているのだ。
まぁ実働する警察官吏は平民だ、貴族ではない。上司も捜査対象の貴族も理解力がなく無能かつ……クソで捜査を握りつぶされるなんてなれば普通の事件ですら解決できなくなるし、変な事件であれば亡命して内情を暴露されたら厄介事になることもあるから。
だからルーデンドルフ侯爵家は建前では警部補よりスタートするが実質的に巡査の仕事もやらされて現場の泥臭い仕事をやりながら平民と交流を深めることになる。
現当主のアルフレッド・ルーデンドルフ侯爵も初年度は平民の飼い猫の行方不明を捜査していたなんて話もあるくらいだ。
実際お偉いさんの子どもを階級無視で巡査の仕事をやらせろ甘やかすなと監視しているくらいだから同期も先輩も甘やかさずとも同情して気を使いはするだろう。飲みに誘ったり同期の絆が深まるわけだ。
だから王国警察長官辞任後も影響力を持っているのだろうが。
アレクサンダー女伯爵家も軍人家系だからこそだな、兵士は平民のほうが多いしな。
あそこは一兵卒の仕事もやらせるし、高級軍人の仕事もやらせるしで非常に忙しい。まぁ、王国軍においての階級は爵位を超越すると公言する家だからその点は安心だろう。だからあんな夢見がちな乙女ができるのかもしれないが……。
公爵家は当てはまらない用に見えて蛮族問題がある。
特に先代公爵や先々代公爵の時代は激戦続きだ。平民階級出身の公爵家騎士や軍の指揮官を排出し、時に所持する爵位をロンダリングして貴族学院に送り込み軍学を学ばせ重用する。
当代は王家から嫌われてたこともあって一切の忖度なく内務官僚として下っ端からスタートしているのも強いし、次代も蛮族に対応するために蛮族を取り立てて蛮族を平定するという平民階級?との関係も深い。
そもそも私には平民階級を抑えるために新聞の力を使い一定の力を行使させようという発想がでてきたことが理解できないのだが。
大体の場合は平民を手荒に扱うのは宮廷貴族で職はなくほそぼそ年金で食ってる小物以下、あとは高位貴族で役職もお飾り、もしくは職なしで領地持ちで王都に滞在している期間が多いみたいな見えてる地雷みたいなやつなんだがこれが存外多い。
まぁ、平民階級から支持される高位貴族なんて下位貴族からしたら悪夢だろう。逆であればここでよかった、領主がこの人で良かったとなるが公爵家に治めてほしいなど平民がいい出したらどう転ぶかわからないのだから。
「素晴らしい、ララからいただいたこれを来てワタクシはこの場に戻るでしょう!」
広げたセーターを見せてそう宣言するエリー。
私と取り繕うのもやめてワタクシが出ているがあの出来では仕方がないだろう。
いや、案外私を使っていたがあちらのほうが本心だったかもな。
セーターへの感嘆が響く、貴族ですら目を剥いて見ている。
レガリアでもああは見ないだろう。
当の作った本人は満足げだがなんだか驚いてるようにも思える。
このララは学院で何がしたかったんだろうな?商品の売り込みか?
まぁ、結果的に成功したからいいのかもしれない。そう言う強かさはあるのだから売り込み先を王子にしなければよかったのかも知れないが……。
辞めておこう、ベルク商会に飛び火したら結局エリーがしくじったことにしかならない。
エリーがベルク商会を最初から信頼してなければもっとうまくやれたかも知れないが今更だしな。
「私達の新たな旅路に!」
そうだな、もっと前から始まっていたがようやくスタート地点だ。これで始まる。
途中離脱したやつもいたが離脱したことを後悔させてやらないとな。
「そして旅路の果てに皆で!」
これ以上は欠けずに……。そう……最後まで。
「すべてを分かち合おうではありませんか!」
この壮大な話が大団円になりますように。
アーデルハイド「したくて離脱したわけではないんだけど」




