いや、敵対してるとか思わないじゃない?
私が断罪される空気になってしまった。
いや、だって本当にヘタで……なんかこう……明らかに浮いてるっていうか。
笑いどころかなって……。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
誰かフォローしてよ!平民差別!?
「……王太女殿下は公爵家主催劇以外も出演してますのね」
「え、ええ。驚きましたわ、平民劇にも出演なさるなんて、ねぇ?」
「え?ええ……?えぇ……?そうね、あの、他の階級に寄り添える方で、この国の未来は明るいんじゃないでしょうか?はい……」
「はい!私もそう思います!この国の未来は明るいですね!」
シュテッチ子爵令嬢も結構演技下手ね。でもキャスよりは上手いわね。
私も下手な演技だと思うけどこの空気は困る。
「……そうでしょう?」
多分私達2人の演技の拙さを見てあれよりはマシって溜飲を下げてくれたのね。ちょっと機嫌も良くなった。ローズはしれっと参加せずに立ち回ってる。強い……。
キャスみたいな貴族がその手の演技下手なのって大丈夫なのかしら?顔に出るとか?
キャスは顔にはでないか、喋ったら終わるだけで。
「反応がないローズさんは知っていたのですか?」
「ええ、招待も受けていたので……。それに一度だけ小間使いの役で出ましたしね」
なんで貴族令嬢がやたらと平民劇に出るの?ボランティア的なもん?ノブレス・オブリージュってやつ?
貴族が率先してそういうことをすることでアピールするのかしら、この……良き為政者ってやつを。
王都でやる必要があるのかちょっとわからないけど。噂とかで失脚するとか?そういうことなのかしら?
「もしかしてですけど、そのぉ……もしかして高位貴族はそういうものが当たり前なんですか?」
「エロイーズ、さすがに本人が劇に出ることはめったにありません。平民劇に出るのは流石に……ないのではないかと思う……んですけど……」
ゲルラッハ伯爵令嬢の視線はここでは最高位貴族である侯爵令嬢のルーデンドルフ侯爵令嬢に向いた。
どうなのかしら?
「…………なくはないですね。私も父の警察長官時代に主催した祭りや慰問などでは炊き出しなどを手伝ったりしましたしそれと同じようなものでしょう」
同じなのかな?
そうかな……そうかも……。
「むしろ私のような下級貴族ほど率先して交流のために出ることもありますね。弱小貴族の領地では生殺与奪は領民のほうが握っているものですよ」
この期に及んで弱小貴族は無理がある気がする。
領地が弱小だから特化した能力があるってこと?でも王太子の儀の移動中に自分たちより多い賊と戦ってるし本当に領地が小さいだけなんじゃ……。
「なるほど、宮廷貴族である私にはない視点でした。そうですね、領民に気を配らねばなりませんものね」
「領地運営は大変ですからね……。ですが距離が近いのも良いものですよ」
あれ、もしかして宮廷貴族って領民がいないからその事考えられてないの?
それで大丈夫なの?政治とかよね?多分だけど。
「今後はもう少し広い視野が必要ということですね」
「そうね、ルーデンドルフ侯爵家も警察関係だから平民との距離が近いから、平民との接点がない宮廷貴族家がどう思ってるのかは気になるところね」
「法の前では平等ですからね、ほら……ね?」
「ええ、私の元婚約者のようにね。そうでしたその説はご迷惑をおかけしましたララさん」
え?何?どういうこと?
「詐欺師にあったでしょう?あれは恥ずかしながら私の元婚約者でして」
「え、ああ……タボット子爵?」
「もう貴族ではないわ、生きてもいないけど」
あれよね、ゲームだと社交界の噂を教えてくれたりするローズの婚約者で情報の収集源の一つみたいな人。
ハーレムエンドの断罪のときは貴族への根回しとかを担当する人よね。
それに向けてやっておいたみたいなことを言ってローズが驚いてるみたいな描写があったはず。つまりローズを出し抜けるほど優秀ってことよね。出し抜くでいいのかしら?
「賠償とかは色々したけどやはり謝らせていただきたいのですわ。たとえ1年以上前に婚約破棄していてあの事件には無関係だったとしても。婚約破棄自体が事件のきっかけだったのですから」
「いえ……そのようなことは」
「そもそも一方的な破棄をしたのは王子殿下が公開処刑なさった方からでしょう?あまり抱え込むとララさんも恨んで良いのか本当に無関係かわからなくなりますよ」
「それでも……ララさんも1年前の私のように助ける人間がいなければどうなってったかわかりませんから……。助かったからなかったことにしようというのは誠実さがありませんし、当家の与えられたものは必ず返す方針だと死を与えかけたのですからこちらが与えられかけても死ぬまでは文句は言えませんからね」
貴族の方針重くない?
やられたらやり返す精神ってことよね……。
断罪なんかしてその後どうなるんだか恐ろしくてたまらないわ……。ゲームのご都合主義的な面もあるんだろうけど。
あ、そうか……だから続編があるのね……。
タボット子爵に関してはゲームのお助けキャラのサポートみたいなものだから普通に接してそのまま話に乗ったのよね。すごく都合がいいけどゲームの商売ってそんなもんだろうと思ってたし、私のこの世界の経験が普通にありえる商談規模だと思ってしまっていた。
で、懇意のマッセマー商会の人に仕入れやら何やらの関係で話したら何故かヴィリーにも話がいって気がついたら裁判で処刑されてた。
気がついたら終わってたことが多すぎるのよね。
ララ「婚約破棄してるとか知らないし……」




