ごきげんよう、死刑ですわ
「主文、ノーマン・モンタギューを死刑に処す」
猿ぐつわををされた愚かな元司法大臣子息の命はここで終わった、建前の程度の裁判で第2王子をかばい、その忠臣は命を落とすのであった……。
彼の献身を忘れずうんたらかんたら……。
うーん締まらないですわねぇ……。
せめて猿ぐつわをされてないか、自分の独断ですと言って受け入れてくれればもう少し芸術性が増すんですけども……。
切り捨てられて必死に命乞いをしてる小物にしか見えませんわね、まぁ小物ではありますけど。
超法規的措置を自分が勝手に言いだして一人で司法大臣室に侵入して持っていった。
普段は業務をしている文官が何人かいるのに室内には誰もいなかった。これ通らないと思いますわー。
明日の一面が楽しみですわねぇ!
それにしても長いですわね、判決文。超法規的措置を語ることが国家への反乱というのが笑えますわね、言われたとおりにやったのに哀れなことですわね。
ああ、椅子をガッタンガッタンさせても無駄ですわよ、王家直々に貴方を殺すために全力ですのよ?貴方を殺せないとワタクシ達が王家を堂々と殺すんですもの、必死ですわ。
王家総出で捏造した証拠が貴方を殺す。
こんな相手にすり寄ったあたり見る目がないですわね。
司法大臣も貴方を殺す方に舵を切ってるんですから大人しく諦めればいいんですわ。
司法の公正さは死にましたわ、貴方が殺したんですのよ?
司法大臣は書類一つも守れない、息子の教育もできない無能。
大臣としては優秀でしたわ、この1年でお父様が優勢な状況であっても法的な問題で出来ないと突っぱねるくらいには公正でしたわ。
それに当日司法大臣室にいた人たちは口封じされましたわ、貴方が殺したんですの、ほら向こうの席にいる遺族が貴方を睨んでいるのがおわかりかしら?ムームーと猿ぐつわで騒いでいるだけで気がついているのかしら?
室内にいなかったはずの文官たちも軒並み殺されたんですわよ?斬り殺されたのに事故死で処理されたんですから怒り心頭ですわね。おかげでお父様も追求の一手失いましたわ。
無様というか哀れというか……貴方が裁判の最初に司法大臣室にいた文官の名前を諳んじて第2王子がいた、超法規的措置を王子が出せないと知らなかったなんて言わなければこんなことにはならなかったんですのよ?手を回して司法大臣室の文官たちが証人にならなければお父さまの策は潰えたし、生きてる限りは落とし所もあったのに、あなたのせいで王家は落とし所も探らず拒否をした。このような手段を取ったことで政治的に王家の信用は落ち続けてますわ。
それくらいの空気は読めると思ったんですけど……過大評価でしたわね。
それに王家への謀反、国家への反逆という割に最初っから一度も王家の人間はこの裁判に顔を見せていませんわよ?
ゲルラッハ伯爵も娘が貴方を捉えさせたからこの裁判の当事者だと裁判から外されましたし、この裁判長は下っ端も下っ端。
数少ない王家寄りの人間ですわ。
お父様もなにかの条件を付けて王家と手打ちにしてましたし。ワタクシ達が被害者側として王子に関して触れてない時点でわからなかったのかしら?それに……そうだとしても貴方はどうあがいても死ぬんですけど……。
学院での醜態と暴言を考えたら廃嫡でも逃げられませんわよ?司法大臣が訴えた時点で詰みだということも気が付かない愚かしさ、司法大臣の株が周辺貴族から下がっっていくだけ。
その座を守れないとは思ってましたけど……正直命ですら守れないかもしれませんわ。
まぁそこまでしたら王家の求心力が落ちるから万々歳ですわね、このくだらない茶番の時点で十分落ちていますけど。
「刑は当日執行される、特設刑場へ!」
あら?公開処刑じゃないのかしら?不思議ですわー!なぜだか理解できませんわー!
何かあると自分から言ってるようなものですわね、あーあ、こんな馬鹿らしいものに気を使っていたとは……。
とっとと滅ぼしておけばよかったわ。
第1王子とアーデルの存在は大きかったわね。
能力的にも人間的にも……。
どちらかが欠けていたら10歳で私が皇帝にでもなってたんですけど……。
ま、らしくありませんわね。ワタクシはそんな孤独の玉座は不要だと蹴倒してきたではありませんの。ポイですわポイ!
裁判ももう一段落したら拘束……軟禁でしたわね、軟禁解除で全員外にでられるからまたお茶会が出来ますわー!せいぜい茶会の盛り上げ役くらいの死に様をしてほしいですわね。椅子のまま運ばれてるのはもう見るも無様ですわね。
さて、ギロチンか磔刑か胴切か絞首刑か……最後に一言話せるはずですけどどうするのかしら?猿ぐつわのまま処刑されるのは前代未聞ですわね。
ああ、猿ぐつわを取らずに首をはねましたわね、じゃあこの状況も新聞社に流しておきましょう。茶会ではなく王都を盛り上げるのには十分ですわね。
王子の言いなりで王子のために行動して王子に切り捨てられ、王子から潰すよう言われた公爵家の追い風になるなんて健気なことですわね。公爵家への献身見事ですわー!
もう少し賢ければせめて死ななかったでしょうに……。
さて、宰相がどうなるかはお父様のお手並み拝見ですわね。
後はめぼしい裁判はありませんわね、お父様に渡したリストのやつがあるくらい……まぁ死刑でもなんでもいいですわ。たいして困らないでしょうし。
「あら、ローズ。傍聴かしら?」
「あっ!エリー様!ボクの元婚約者の裁判ですわ」
「ああ、拘束時に婚約破棄をしてきた?タボット子爵?でしたっけ……?」
「その時はお世話になりました!タボット子爵ですね、婚約破棄後にマルバッハと関係深い家に婚約破棄の経緯を書いたものを回覧して親しくし続けたところを淑女的に攻撃しましたから」
「非がある相手を没落させるのは簡単ですわね、それでなぜ裁判に?」
「不正を働いていたそうです、横領とか?あとは婚約時にいろんなところのパーティーに出て色々約束をしたり金を借りたり……破棄後もその伝手で借りてたけど回覧が出回って縁を切られたり即時返還を要求されたりしてたみたいで首が回らなくなったみたいです」
なかなかクズさが高いですわね、クズ選手権では高得点ですわ。
高得点選手の顔がここ1年で消えた面子なのは何故かしら?
「裁判に見に来た理由を聞いんですわー!」
「ああ……父の拘束時に金を借りていたのに婚約破棄と迷惑料を請求して踏み倒そうとしたくせに解放後になかったことにしてくれと追加で借金申し込みをしてきたので身ぐるみ剥いでやったことは覚えていますか?」
「もちろん、協力してましたわー!」
懐かしいですわね、あれももう1年前ですわね。
「その引っ剥がした社交界関係の事業で成功したので見せつけてやろうかと、家同士の対応ならともかくそれを送ってきて罵声の手紙を出したのは元婚約者ですからね。社交界で笑われるとか、事業の支障がとか当家の金でやってるとは思えない態度で……」
「心中お察ししますわ」
「平民のララという我が家を危機に貶めた女性に近づいて財産をだまし取り、彼女の事業を横からかっさらうかマネージメントで横領する計画を立ててたらしく、現状ララとの取引を担当してたシャーリー様を敵に回してやんわり王子の耳に入るようにしたみたいです」
「ゲスすぎますわね……」
「まぁ我が家の危機はエリー様に助けていただきましたし、ボクはララ自体に思うとこはないですけど……そもそも真っ当な対応でしたしね、悪いのは近衛騎士団の連中ですし」
「そうなると、婚約破棄できてよかったまでありますわね」
「ええ、別にマルバッハ家も裕福な家でもないですからね」
そんな小物も今日裁判するんですのね、ノーマン関連の裁判がメインだと思ってましたけど?
ああ、ララに手を出そうとしたから王子がブチ切れたのかもしれませんわね。
多分重すぎるけど死刑になるでしょうね、そうしたら明日の新聞を読むのが楽しくなりますわ。
「ワタクシも見てみますわ」
「多分そこまで面白くないですよ、予定詰まってるから主文で終わるかもしれないですし」
「まぁ主文読んですぐ終わるでしょうね、大した事件じゃありませんし」
主文死刑即執行で終わると思いますわー!
国王「証言?紙じゃん!当人は?全員死んだ?じゃーでっち上げでしょ!しーらない!」
公爵「(殺したろか)」
エリー「ステイですわよお父さま!まだ早い!」




