暗殺という仕事
隠し通路を使い王都へ出る。
広場で派手にやる前に片付けなければいけなくなったので時間は厳しい。
王太子選定会議までだったはずなのだが……。
クラウディア嬢は聞く耳を持たずにご愁傷さまといった感じでパドはピアと話さねばならぬと逃げた。説得せず見捨てればよかったか?
細道を抜けて間諜のいる通りへ出る。この時間は伝書鳩待ちで顔を出している。
見上げればいつものように窓を開け空を見上げるロバツの間諜。毎日やればただ鳩を飼っている人物に過ぎんからな。
最初期は怪しさ丸出しで何もしなければ疑いがかかって調査されても変人に過ぎない。こういう貧乏くじ役が必要なのだ、忘れたことに調査が入れば連絡を絶ち別人をつなぎにすればよいだけだからな。
フッと吹き矢で鳩を仕留め続いて間諜を仕留める。ロバツは後6人。
通りを曲がり馬を借りる。レズリーのつけと連絡すれば何も効かない。
騙れば死ぬからどうでもいいと思ってるかそれとも他になにかあるのか。もしやもう連絡が届いている?さすがにあるまい。
平民街の奥に馬を駆けて薬問屋へ入る。
「いらっしゃい、あらま男爵。薬が?」
「ああ、必要数を屋敷に届けてください。外の馬を使っていただいて結構ですので」
「え?良いのですかそれでは……」
「予備の補充です。急患が来たら困りますからね、私はこの後直接容態を見る人物がいるので」
これで私が馬で駆けるのを見た人間は薬を買いに来たと思うだろう。
店主も部下に指示してるから忙しくなるだろう。
「少し裏を借りますよ、堂々と入れない相手なので」
「貴族相手は大変ですね、男爵でもそのようなものですか」
「男爵だからより一層無理を言われるのですよ」
30分で13人処分してこいとかね。まぁ1人は不可能であると伝えたので12人で良いのでしょうが。
「横柄ですねぇ」
「金払いが悪ければもう少し断れるんですが大盤振る舞いですからね、それくらい聞いてやろうというものです」
「違いない、乗客には丁寧に接したほうが良いですからね、男爵のように」
「ははは、では頼みますよ」
薬問屋の裏から路地を1本進み、2番目の家の裏口を開ける。
この時間は庭で昼寝をしてるのが楽でいい。吹き矢で一撃だ。
引き返して表通りに出る。流石に吹き矢は使えん。
串焼きを売る男に向かって下手投げで短刀を投げる。
喉に刺さった男が倒れると同時に悲鳴が起きるが気にしない。
こいつの監視役の間諜が別場所にいる。騒ぎによる連中と反対側に逃げるやつは……こっちに向かってきた。先ほど殺した昼寝男の元へ向かうのだろう。
すれ違う瞬間心臓を一突きにする。
はい、ご苦労さま。
うっという一言を残して芝生に倒れ込んだ男から血痕が飛び散らぬよう短刀を抜き足で芝生に押し付ける。後3人。
しれっと串焼きをやっていた別の男の店に近寄り肉串を2本ほど買う。
さて、あとは……。
広場横のオーランデルク大使館に入る。
こちらは開放日だからな、ちょっとしたパーティー開催中だ。この開催中に殺す予定だったからちょうどいい。
そっと警備の隙をつき、警備を完全に遠ざけているの東屋で集まる馬鹿な人間達を見つける。
まぁ報告会だから遠ざけたいだろうがな。
「失礼、ブラゼッハー書記官?」
「ん?あなたはどな……」
「ペルソナ・ノン・グラータです、最もこの世からのですが」
首時に一撃、靴に仕込んだ刃物で一撃、投げナイフで首を刺し、股間を蹴り上げ毒針を撃つ。やはり数が多いだけあって足りないか。
指に挟んでいた串を逃げようとした男の目に突き刺し、頭蓋を蹴りで砕く。
もう1本を目を狙うふりをして首に刺し、引き抜いた後首をへし折る。
元からオーランデルクの5人は数には入ってないようなものだ、後2人。
そういえば間諜を大使館職員だと言いましたっけ?公認でも非公認でも差がないからまぁ良いでしょう。どうせコイツラは限度を超えているのだから。
仕立ての良い大使館職員の服をもとの所有者から奪い、貴族街へ向かう。
再び馬を借りるがレズリーの名前を出す前に先渡しせずに貸された。
もう連絡が来たのか?それとも先程の馬借から連絡が来たか。
そうだとするならレズリー伯爵家もやはりあの間諜共の位置を把握していたのだろう。
きちんと殺せるか監視していたのかもしれない。
貴族街の小さな商店に入ると客は一人もいなかった。
まぁ貴族からしても品揃えが悪い店だからな、値段も安いわけでもないから貧乏貴族も来ない店だ。
「いらっしゃいませ」
「剣はあるか!?なんでもいい、王城ですぐ使うから持ってきてくれ!」
「王城で!一体何が!」
「良いから早く!」
「は、はい!」
さて、と……。
「こ、こちらです!王城で一体何が!?」
「知らんで良い」
受け取った剣で即座に商人の首を跳ねる。
そのまま奥に入っていくと手紙を書いている男がいた。
「どうした?何か騒いでいたが……」
「エリーゼ・ライヒベルクが王太女になった」
「何だと!?最悪だ!直ちに……誰だお前は……」
「さてな」
首を切り落とし、反応を見るからにロバツ側がエリーゼ嬢の王太女就任を恐れていたことを把握した。この情報は少しは使えるでしょう。
書きかけの手紙、処分前の手紙をかき集めてポケットに放り込む。
入り切りませんね。見栄えだけの服はこれだから……。
隠し武器の収納場所に放り込みまくり店を出て王城へ戻った。
「逃げられましたか?」
「統括役はどうあがいても無理だがロバツ、オーランデルク間諜合計12名。確かに仕留めてきました。ロバツ内訳はすべて平民。オーランデルクは大使館職員で、特命全権大使、公使、参事官2名に書記官1名です」
「…………確かに、その手腕見せていただきました。私からエリーに伝えておきます」
「今後もよろしくお願いいたします、クラウディア嬢」
クラウ「……(は?大使館職員を間諜として殺した?大使含めて?)」
クラウ「……(は?)」
クラウ「その手腕見せていただきました。私からエリーに伝えておきます(私は知らない)」




