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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
王太女就任ですわー!

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342/561

間違いありませんわ!あなたが婿入した理由

「さーて、ようやく2人きりになれましたね」

「私は妻一筋ですね」

「ワタクシもお祖父ちゃんはちょっと困りますわね、そこはクラウがいることに突っ込んでこそですわ」

「申し訳ないが喜劇は慣れていなくてな……」

「まぁ悲劇のほうがお好みでしょう?いや慣れているでしょう」


 ちょっとしたジャブで会話を楽しむがどうしてなかなか手強い。老獪な貴族といったところでしょうか。

 ま、そうなるとは思いましたけどね。


「ジャック・リッパー男爵。バンサ伯爵家の次男にしてリッパー男爵家当主。直接的な血筋は今はいない。よろしくて?」

「ええ、妻が死んでからは天涯孤独ですよ。クラウディア嬢もご存知でしょう?」

「ええ、存じております」


 クラウの違和感がすごいですわね。


「唯一の血縁がかろうじてピアだけということも把握しております、ねぇエリー?」

「ええ、今や唯一のね」


 さーてどこから話しましょうか?

 うーん、結論?それともじわじわと?どちらの推理物がお好みですこと?


「まず王国を体制を守っていたのが御三家と言われる貴方がた。婚姻によって貴族調整を行っていた調停のバンサ伯爵家。大概スパイとそれにつながる人間及び国外への諜報活動を担当していた諜報のレズリー伯爵家。そして内部貴族の調査、両家が手に負えない場合貴族の処理を行っていた処刑人リッパー男爵家ここまでは?」

「正確には王国の剣、だったようですがね」


 過ぎたる剣は使い手よりも剣のほうが優れると考え持ち手を傷つけるもの。

 結果的にそうなりましたわね。


「さて、人の心を読んだり入り込むのはバンサ伯爵家としての育ちでしょうか?」

「どういうことですかな?」

「だって御三家同士がくっつくなんておかしいでしょう?しかも王家とつながった後で。明らかにあなたがリッパー男爵家に婿になったのがおかしいのですわ。キンゼー男爵家から側室が、しかも元はバンサ伯爵家。そのうえライエン侯爵家とのつながりもある。あなたが、リッパー男爵家が王宮部署を追放されたのはそこもあったのではなくって?」

「まさか、ひとえに私の無能が故に……」

「クラウ?リッパー男爵家代替わりから処理された間諜の数は?」

「報告されただけで158人、内訳オーランデルク30人、ガリシア帝国5人、デルスク共和国35人、不明3人。残りはすべてロバツ」

「おわかりいただけますか?」

「いえ、何がなんだか。私はただ仕事をしただけです」


 なかなかとぼけますわね。良いでしょう、貴族というものはとぼけることに関して一流ですからね。付き合いましょう。


「ではクラウ?先代であるサッチ・リッパー男爵時代の間諜処理は?」

「52人、内訳ロバツ35人、不明15、オーランデルク1人、ガリシア帝国1人、以上」

「ええ、その38年の当主生活で処理した間諜は52人。当代リッパー男爵は36年で158人。3倍も違いますわね?」

「義父上は報告できない間諜の場合は報告しなかったのでしょう、不明が多いのも大変ですから」

「あら?数は3倍でもあなたの不明は5分の1、おかしいですわね?そこをごまかすなら不明の数はもう少し減らしますわ?ワタクシでも報告できないものは誤魔化しますけど……そもそも同じ御三家のレズリー家にすらごまかす必要があったんですの?」

「…………」

「あ、ちなみに……」

「サッチ・リッパー男爵時代の不明が表に出せないものです、ですがジャック・リッパー男爵時代の不明は文字通り不明。二重スパイか何かでどちらか判断がつかない、違法行為が見つかったので直ちに処理したということです」

「ですので報告できない間諜というものはないのですわ。報告したうえで52人だったのですから」

「…………それが?私が殺しすぎているとでも?」

「ええ、ですからワタクシ……あなたが殺しの才能があるからリッパー男爵家に婿入したと思っているんですの。いかが?」


 どうかしら?いい線いってると思うんですけど。


「ははは……まさか。婿入り前の私はただの不良貴族でしたよ。ギャンブルをして借金を作ったり酒場でツケで呑みすぎて土下座をしたり、ろくでおもない人間でした。殺しの才能なんてとてもとても……」

「ハーバー王子に会ったのも偶然だと?」

「ええ、偶然です。酒場に誘ってそのまま悪友になっただけですよ」


 言い訳としては苦しくないかしら?そこで密約、あるいはバンサ伯爵家も多少はあ暗殺技能があるとワタクシは踏んでいますけど。

 たとえば暗殺担当がレズリーでなくともその処理ができるように。

 最低限教わって才能があったことを報告されていたのではないかしら?


「バンサ伯爵家では暗殺術を学んだことがないと?」

「ええ、ナイフでステーキを切ることがそれであるのなら認めますが。魚でも良いですよ?」

「初歩ではやるっすよ」

「え?」


 そうなの?初歩は肉と魚なの?テーブルマナーが殺人の基礎なの?

 今後テーブルマナーでうるさい貴族を見つけたらあの貴族脳内で俺は一流の暗殺者って思ってそうって余計な情報がちらつくじゃありませんの。


 でもリッパー男爵の反応を見ると間違いありませんわね。

 どうやらそれがつながっていたと。


「あらあら、顔色が変わりましたわね?どうかいたしましたか?図星でしたか?」

「今……クラウディア嬢が変な口調で……」

「気の所為ですわ」

「そうですわ」


 そっちに逃げたか。今更誰も気にしない口調に逃げるとはちょっと浅はかですわね。

ジャック「(私の虚像が大きくなっていかないか?)」

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