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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
老人の回顧録、あるいは内側の真実

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老人と覚悟

 モレルの監視をしていた人間がごっそり減っていたことに気がついた時にはモレルが医務室に解き放たれていた。そして同時に国王陛下からの推薦で薬を処方された人間が次々死んでいった。

 ほそぼそ毒殺をしていたモレル伯爵が自由になったことで無関係の役人たちも殺されていく。これ以上問題が起きたらそれこそどこもかしこも持つまい……。


「モレル伯爵、その薬は?」

「滋養強壮です。先程調合したのですがこれは歴代で最も良い出来でしょう!目分量で作ったのでちょっと配分量はあやふやですが」


 そこをあやふやにしたらダメだろう。まぁヤブだし、毒殺担当だしなんでもいいのか。死ぬかどうかも運次第だしな。


「そうですか、最近疲れているようですしご自分で服用してみてはいかがでしょう?」

「おお、確かに!私が病人で処方すれば横領にも当たらない!一応診断書を書いていただけますか?」


 正気か?と思うがサラッと書いて彼の薬の名前を書いて置く。

 河豚が自分の毒で死ぬのなら見てみたいものだ、まぁ少し違うかもしれないが似たようなものだ。


「ふふ、これで明日には元気になりますよ」


 ふん!とポージングをするモレル伯爵を見て人間としては悪い人間ではないんだけどなぁ……と思いながら明日本当に会えるのかと疑問に思いながら帰った。




「モレル伯爵は生前、王宮医師団統括としてその類まれなる功績があり、国王陛下の信頼厚く……」


 案の定葬式であった。

 参列者の大半はこれで助かった。もう怯えなくて済む、という安堵感からくるご祝儀のような表情で出席をしている。私のように……。

 心の底から自分の薬が安全だと思ってたんだな。子息のケルステンもなんとも言えない表情で喪主を務めている。

 自分の薬で死にました。

 とはモレル伯爵に……前伯爵にいろいろな感情を持っていた人間も自分の毒で死ぬ動物がいるのか?間抜けか?本当に悪意なく殺してたのか?と複雑な表情だ。さもありなん。

 どうも反応しづらい葬式を皆が皆、会話少なくああうん……お疲れ様でしたと解散していく。こんな反応に困る葬式は自分の葬式に参列しても味わえまい。


「故人は生前こうおっしゃいました、病まれた人々を癒すのが医者だと……」


 笑ってはいけない。皆苦痛の表情だが故人への哀悼ではなくここで笑ったらまずいという当然のことを我慢してるからだ、拳を握りしめ自分の足を踏みつけゼ対顔を見せないように震えている。

 貴族とは鉄面皮と表情を殺すことに特化した存在ではなかったのだろうか?


 例の葬列騒動……前司法大臣の件以降愛想を尽かしたのか次々と人員が辞めていく、給料が安いからな……。流石に医者はもらえているが……うーん……。

 パドも誰それと雇うつもりらしいがそんな都合よくいないだろう。

 と思えばすぐに雇った。薄給なのにな。なかなか礼儀正しいがなんでこんなところに就職したんだろうな?不景気なわけでもないのだが。


 葬儀が終わってから貴族が注視していたアウストリ元伯爵、いや平民アウストリの裁判は非常にあっけなかった。

 新次長検事ルーデンドルフ侯爵だけでなくエリーゼ嬢自らが検事となり徹底的に打ち負かした、結果的にゲルラハハ『伯爵』家は元から一つでアルベルド・ゲルラッハ伯爵死後は取り潰しになっていたという事になった。モレル新伯爵も裁判でいわれなき不貞の罪を着せられ追求側に回ったのを見るとモレル伯爵家も公爵家に付いたようだ。

 結果彼らは族滅と相成った。そのうえ失言を連発したこともあり法的に問題はなかったとしても王家の省庁掃除課を使っての暗殺も確定したようなもの。

 このタイミングではモレル伯爵も暗殺されたとすら思うのではないだろうか?

 とにかくただでさえ信望を失った王家は樽の底に穴が空いたようにすべてを失っていった。

 知ってはいても突きつけられればこうもなろう。


 そして昨日、ライエン侯爵家の血を引くバンサ伯爵家次期当主のピアの邸宅にエリーゼ嬢と取り巻きが押しかけ、屋敷ごと様々なものを売り飛ばして今日に至る。

 果たして何を見つけたのか?どうして今日なのか?

 王太子選定会議に動くしても何をとどめにする気なのか?

 握りしめた十字架は何も答えてくれない。


「ジャック、何が起こるのだ?これはどうするべきなのか?」


 パドは相変わらす判断力を喪失している。


「わからんね、ただ沙汰を待つだけだ」


 どうなるかはわからないが取り潰されなければ断絶でもよい。

 ピアは残るだろうしな……。


「何が目的だ?どうしたら良いのだ?」

「わからんよ、神に祈れ」

「神か……祈りが届くのであればこのような状況になってはおるまい」

「祈ってすらいなかったやもしれんぞ」


 誰も彼もな。




「遅れましたわー!ワタクシこそが公爵令嬢エリーゼ・ライヒベルク!爵位はいっぱいあるから個人の地位はどうでもいいですわね!しいていうならこのあと王太女になりますわー!よろしくお願いいたしますわ!」


 なぜか扉を開いてやってきたエリーゼ嬢は国王陛下のように少し病んでるようにも思えた。

 なにかに急かされるような……。

 それと呼ばれたのか?


 パドを見ると唖然としてるので違うのだろう。部屋を間違えたのだろうか?


「ジャック・リッパー男爵ですわね?お人払いをお願いいたしますわ。バンサ伯爵家についていくつか聞きたいことがありますの、いえ伝えたいことかしら?」


 どうやら私に用事らしい。バンサ伯爵家となると何を掴まれたのだろうか?

エリー「なんか医務室めちゃくちゃ遠くありませんこと?随分歩いたような」

クラウ「気の所為っす」

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