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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
老人の回顧録、あるいは内側の真実

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老人と気さくな典礼大臣

 あの葬儀から2週間、元ブランケット侯爵一派に不幸な出来事があった。

 不正もろとも葬り去られた、近衛騎士の不正にも関わっていたというがどうだろうな?宰相もあの感じだと積極的に協力していそうだ。

 流石に無情すぎる、フリードリヒがアーデルハイド嬢にお熱だったことは周知の事実だ。死後にああまで扱われば……。

 王都行政官スタルヒン伯爵は辞任後に即座に領地に逃げた。この葬儀のブッキングの責任を負わされたのだろう。屋敷ごとマッセマー商会に売りに出していた。

 買い叩かれたと文句を言わない当たり公爵家に頭を垂れたのだろう。

 王都の行政トップがフリードリヒ閥からライヒベルク閥に切り替わった。


 廷臣たちは我先にと沈む船から逃げ始めている。新聞報道は地味に一撃を加え始めた、まるでボディブローのごとく。下級貴族ほど見栄を張る余裕が少なく王都の民とは近くこれは本当かと聞かれると大っぴらに嘘は言えない。

 新聞と違うことを言ってる男爵がいるが他はそうだと言っているぞとなった場合お前には売らないと言われる方が困るのだ。

 大半の下級貴族など領地も役職がなければ市井に混じって働くものもいるからな。私は医者でモレル伯爵も……業腹だが職業上は医者だ。

 ヴィルヘルムではな……。


 対公爵家の筆頭クラスの貴族が真っ先に屈した。屈していった。下級貴族の数が数だからな。どこもかしこも寄子の貴族を完全に統制できているわけではない。下級貴族の日頃の買い物が店から禁止になったり、値段を釣り上げられたところでそれならばウチの御用商人から変えばよいとはならない。

 なにせマッセマー商会の力は大きくなる一方、ヘス前伯爵暗殺前後から大きな商会は徐々に縮小していった。どうもマッセマーの商品のほうが魅力的だからだろう。蛮族の商品も仕入れてることが出来たらしい。そういえば元は公爵家の剣で蛮族支援した商家の一つだったな……和解したんだろう。二省炎上事件後は寝返ったヘス伯爵がマッセマー商会の進出を援助していき大抵の貴族は首根っこを掴まれているのだ。これで対決姿勢を出せるのは領地があって自前の商会か御用商人を持っている、マッセマー商会進出領地が遠い家。もしくは領地がなく他の商家とつながっている貴族だけ。

 かといって堂々と敵対すればどうなるかといえば……まぁ言うまでもあるまい。


 降った連中もフリードリヒであればと願ったもの、アーデルハイド嬢が手綱を握ればと思ったもの、誰であろうとどんな理由であろうと他力本願からここで寝返ったところで重用されるはずがないが頭を垂れねば死ぬ。

 宰相は必死に戦っているが……。

 どれほど持つことか。




「いつまで持つのかしらね?この狂想曲。いやね、仕事が増えて嫌になっちゃう。申しわけないけど栄養剤くださる?」


 典礼大臣のリューネブルク女侯爵が来るのは葬儀以降は増える一方だ。

 軽い口調で今日も点滴にやってきていた。


「モレル伯爵子息覚えてるかしら?」

「ええ、あの……」


 マッサージ師になって第2王子に付けられたんだったかな?騒動が入ってくる当たり制御できなかったらしいが。


「辞表を出したわ、今は引き継ぎ期間、王宮マッサージ室国王専属マッサージ師になるみたい。正直聞くけどモレル伯爵の後任は務まるの?」

「どちらの意味で?」

「どっちの意味でも」

「表なら誰でも務まりますが裏はどうでしょうね?」

「表がそもそも務まってない時点でダメだと思うけどね」

「そこまでまずいですか?」

「まぁどうせすぐにまかるからいいでしょう。第1王子の側近は職を辞して領地に逃げたわ、第1王子を弔いたいんですって」

「逃げましたか」

「あと……結構な貴族が死んだわ。断絶、取り潰しね」

「公爵家ですか?」


 意外だな、もう少し足元を固めるかと思ったが。


「いえ?公爵家に手土産が必要だから内ゲバよ。公爵家が処分したのはブランケット侯爵の寄子だった貴族たち、あとは敵対的だった第1王子の側近衆の処理、後残ってるのは近衛騎士団に追いやったわね」

「近衛騎士団?」

「新近衛騎士団長のゲドリドル卿はまだ粛清を実行してないわ、わかりやすい犯罪者を処分しただけ。あれは粛清じゃなくてお掃除。本当の粛清は今からよ。王国軍、騎士団、近衛騎士団を手中に収めた公爵派閥なら徹底的にやるでしょうね」


 さもありなん、ヘス伯爵無き軍務省では三軍の手綱は握れないからな。

 軍政家のポート伯爵は戦場経験が少なすぎる。かといって戦争をするわけにも行かないから仕方がないが……。

 どこからも尊敬の念は集められないだろう。


「まぁ管理する貴族のリストは取り潰しなら処分できるから良いんだけど断絶だと復活の可能性もあるから残さないといけないの。空位のバンサ伯爵もそうだけどね」

「…………」

「まぁ、決めるのは私じゃないし?いいけどね。あ、忘れてた」

「まだ何か?」

「女性のマッサージ師雇ってくれない?医師団の範囲じゃない?」

「第2王子が手を出すかもしれないのでダメです」

「あーあ、誰か肩をもんでくれる女性マッサージはいないかしら?」

「個別で雇えばよろしいのでは?」

「家で雇うと私のお金が出てくじゃない」


 そうですか……。


「ま、このままだと公爵家が勝ち切るわね。公爵令嬢のお茶会参加者すごいらしいわよ?まぁ選別してるみたいだけどね。私も呼ばれないかしら?同世代に見える?12歳とかギリいけるんじゃない?」

「……ノーコメントで」

「…………その対応のほうが傷つくわ」




 それから数日して近衛騎士団は粛清の嵐が巻き起こっていた。

 公爵家の関係ある貴族が近衛騎士に入団していき、バルカレス男爵家は騎士団と近衛騎士団を抑えた。

エリー「教育教育教育左遷左遷左遷断絶断絶滅亡滅亡粛清粛清粛清死刑死刑死刑死刑死刑」

キサルピナ「我が主、一挙にやると禍根を残します」

エリー「ママママママママママママ……」

キサルピナ「…………ママ、規模が大きすぎると味方が怯えます」

エリー「だから一撃で全部やる必要があるんですのよ、失脚はともかく死刑関連だけは罪状一つで一撃で決めますわよ」




モンタギュー司法大臣「問題なし」

ジーナ「(俺が作った甲斐があったな)」

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