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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
老人の回顧録、あるいは内側の真実

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老人と殺した友人の娘

 捜査が終わり身体検査を終え帰宅と相成った時、シャハトが逃げたという話が入った。かつてのシュライヒャー伯爵とはまるで違うな。そもそもどこへ逝くんだか。いや行くんだか。


 防水部分はインクで濡らし、どうやら慌ててたので万年筆から漏れたと言いはったのがうまくいった。

 検死も毒は検出されない。一撃で葬られている、位置的に知り合いのはずだと何度も様々なことを言われている。結果的に私の薬はパドも飲んでおり、その上すべての薬を調べるもよし、その場であれば致死量には程遠いから全て飲んでもいいといい渡した薬を10ほど水に溶かし飲んだうえで待っていた。

 遅効性も疑われたがメイドのお茶を渡した時間などを考えても3分もないので紅茶とセットで飲まされたうえで問題ない。この薬は検査すると持っていかれた。せいぜい検査するといい。消化不良の薬だと伝えたが大抵ここで働く人間には当てはまる、貴族には飲ませないからメイドやそのへんの奴らだろう。現状胃が痛くなるほどの問題もないだろうしせいぜい眠るだけだ。首に穴が空いて死ぬ薬などあるわけがあるまい。


 まぁ思ったよりも胃が悪いから即座に激痛が走り眠ったらしい。痛さで気絶したのかそれともちゃんと副作用の眠気なのかは知らないが。むしろ検死は私がやりたいな、どれだけひどければそんなに早く反応が出るのか気になって仕方ない。

 結局、メイドがお茶を運ぶのもパドが目撃したことにして私のことは少し触れる程度にしつつ捜査をするらしい。第1容疑者がこの通り体を調べられ見事に見逃がされたのだ。パドも何もなし、シャハトは悲鳴を上げて逃走したがそもそも遺体に近寄ってもいない。私の近くによっても触ってすらいない。扉を開けて過ぎに悲鳴を上げたくらいなのだから。

 魔法でも使えることにしなくては難しいだろう。


 気が付かなければよかったのだ。ジキルの髪の色なんて……。

 潰されるわけには行かない、ジェーン残したものが消え去ってしまう。リッパー男爵家の形だけは残さなければならない。直系がない断絶はいいのだ。御家取り潰しで今後も名前が出ることなく消え去るのだけは……。

 お前が悪いのだ、お前が悪かったのだ。


 翌日、はっきり行って遅刻だろう時間に目が覚めた。いや、間に合いはするのだがなるべく早く行って色々と整えておかねばヤブ医者がうっかり人を殺してしまう。まぁ、仕方ないな。運がなかったと思ってくれればいい。

 少しばかり寝すぎたが許されるであろう。なにせ取り調べが長かったのだから。徒歩での登城も慣れたものだ。どうせ暇だし、顧客の平民も調子がいいとか朝食になりそうなものを渡してくれたりで一石二鳥だ。調子が悪い人間がいたらその場で見てやることもできるしな。


「おい、ジャック!いますぐ来てくれ!」

「パド?お前どうして……」

「いいから早く!」


 なんだか慌ててるパドに言われるがままに屋敷を見るとライエン侯爵邸だった。ああ、何かあったか?私は少なくとも何もしてないが……。


「それでどうした!?」


 走りながら尋ねるがパドは息があがっていてヒィヒィ……ハァハァ……ゼェゼェ……と要領を得ない。

 案内するパドを追い抜いてしまい、一度スピードを落としまた加速するうちに奥の部屋ぁ!という絶叫の後パドは膝をついてしまった。


 中に入ると子供が倒れており、王家の暗殺か?と思ったものの現時点でそれをする意味はない。暗殺なのだから。

 近寄り、脈を測ったり瞳孔を見たりと色々と確かめると心臓が止まっているようだった。これは流石に無理だろう……。止まってどれくらいかわからないが。

 とりあえず無理だろうと思いながら心臓マッサージをしているとなんとか息を整えたのかパドがようやく入ってきた。


「大丈夫か!」

「心臓が止まっている、止まってどれくらいかわからないが……」

「5分たってないはずだ!玄関まで一直線に走り抜けたときは1分経ってない!お前に声をかけてちょうど一分くらいだ!」

「じゃあ5分は今か。なら心臓停止で甘く見積もって3分か。だが子供だしな……いくつだ?」

「ええと40……」

「お前じゃない!お前の年齢が今何の役に立つんだ!」

「確か……もう15だ!祝った記憶があるぞ!」


 と言われても私は祝ったか覚えていない。パーティーに顔を出すこともないし、妻が死んだあとのリッパー家はだいたいそれなりの家からは嫌がられるからな。


「じゃあ体力的にはなんとかなるかもな」

「俺はどうしたらいい!」

「知るか!心臓マッサージの邪魔だ!他の医者でも呼んでこい!」

「医者はどこだ!」

「落ち着いて探せ!」

「お前だ!」

「そうだよ!バカ!」


 親友の娘が倒れていつもより役に立たないパドはなぜかたらいにお湯を貯めてきた。出産するわけではないんだぞ?お前まさか……?手を出したのか?


「心臓マッサージの役に立つか!?」

「…………」


 人はパニックになると役に立たないのは貴族も平民も同じようなものだった。

 一応今のパドは貴族籍がないから平民だが。


 なんとか息を吹き返し、おきた娘は虚ろな目をしてあのままお父様のところへ行きたかったと言った。

 もっとも本人にその気があったのかはわからない、蘇生直後というものはよくわからないことをいうものだから。


 父を殺して娘をたすけるなんて皮肉なものだな。脈を取りながら安静にするようにして、医者を呼びにいけとパドを蹴飛ばし、貴族御用達の医者と交代したあと王城へ向かった。


 あの娘の虚ろな目が私を責めているようでどうにも震えが止まらなかった。

パド「医者をつれてきたぞ!」

医者「耳鼻担当です!」

ジャック「(コイツ役に立たねぇ……)」

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