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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
老人の回顧録、あるいは内側の真実

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老人と終わりの始まり

「宮廷道化師は愚者にございます!言われたこともわからず噂を聞いて本人に聞くほど愚かなもの、だからこそ告解も聞く。宮廷道化にすがるしかない人間の話を聞く、おねしょから壺を割った話、あるいは…………国家を動かす不貞まで」


 まるで体中の筋肉が弛緩したように座っているのに崩れ落ちたような衝撃が私にやってきた。先程の言葉が今になって効いてきたのか、今の言葉が衝撃になったのかそれは私にもわからなかった。


「グリゼルダ王子妃は毒を呷りました。その前にわたくしめに告解をしたのです。本当に愛していたのはジキルであると、それはもう……まるで栄光に向かって走り抜ける乙女のようでした。死が救済とでもいうように、自分に酔いしれる舞台女優のごとく。なぜ自分たちが引き裂かれられねばならぬのか、どうしてあのような王子のもとに嫁がねばならなかったのかと、劇場であれば満員だったでしょう!その時言っておられましたよ?御子息と婚前交渉をしていたと!不貞を働いていたと!その御子息が死んだ今このような場所で耐える意味はないと!あのような男には抱かれるのはゴメンであると!不満と合わせて仰ったのです!ああ、なんたる……喜劇、悲劇!」

「そ、それは……致命的かも知れないが真実かわからぬだろう。噂が流れること自体が死を意味しても……」

「死の前の告解が嘘であるならそれでもいいでしょう。信心深かったのかは知りませんからな。宮廷道化師は神に唾吐き信心とは無縁ですから。貴族の方々と同じように」

「それをハーバーに伝えること前提で嘘を言ったのだ!」

「はい、調べればわかることですからな。でも王子妃の私室には隠し通路がありましてなぁ……。グリゼルダ王子妃が癇癪を起こして遠ざけることもあれば誰にもあいたくないと人を入れないで部屋に閉じこもるのは昔からですかな?」


 いいや、そのような性質ではなかった。叔母上に似て活動的であった。


「おやおや、違うようで」

「嫁いだ苦労によるものだろう。友人の前で言うのは何だがウィリアムはバカ息子だ」

「国王陛下も今あなたに言いたい言葉だと思いますよ。まぁ自覚があるから言わないのであなたとは大違いですが、さすが陛下!この国に君臨する唯一の統治者!目は曇っておられない!」

「…………」

「王宮部署の情報をリッパー男爵家の部屋に置いといたのですかな?王子妃の私室から出入りできるなんて驚きですな!いや、隠し通路はちゃんと通じていましたよ!御子息が王家の方々を守る詰め所の一つに!王宮部署の闇ですな!あるいは逃走用だったのかも知れませんが。通路にはベッドもソファも机も揃っていましたよ!あれでは通路ではなく隠し部屋かも、さぞかし愛を語り合ったのでしょうな。ああ羨ましい!」

「事実だ、私も見た。知っているのはここにいる3人だけだ」


 気絶しなかった私は大したものだろう。息子が王子妃と不貞を働いていたなんて。従姉妹とはいえ、そもそも従姉妹と恋仲であった事実すら私は知らなかったのだから……。


「そこで言われました、間違いなくどちらの王子も第1王子の子供ではないと!しっかりと伴侶に対しては避妊をしていたようですなご立派御立派!無計画に子供を増やして継承戦争を起こす貴族が多かった反省を活かしておられる!いやぁこれで王家は安泰ですな」


 痛烈な皮肉にハーバーも責める視線で愚かなる愚者を見るがどこ吹く風で我々を貶す。


「女性であっても優秀であれば継承させるのはなぜか、数ある公爵家を潰していったのはなぜか。内戦が怖いからではないですか。王侯将相いずくんぞ種あらんや?」


 それは農民が国家を作り地位を脚色して作り上げたサミュエル王国に対してタブーであった。農民であっても国を作れたのであれば自分たちも建国すると、たかだか親戚であっても高い地位につけるのであればひっくり返せば自分たちが高みにいけるのだと。それを改ざんし、権威と歴史で抑え込んでいる中で優秀さよりも生まれた順番で価値を決め、それを奪い取るために力を使えば国は滅びる。奪い取った当主の次に狙うのが高い爵位か国の王かはわからないのだから。だから爵位は男系必須ではなくした、そうなる前は女系当主しか容認しない貴族家も作っていたのだから受け入れられることは早かった。あるいは先祖たちはこうなるだろうと見越していたのかも知れない。


 歴史ある王家が途絶えたらどうなるか、王族より優秀な公爵家がでてきたらどうなるのか。それを恐れて中央政界の公爵家を次々と消していった。

 蛮族の蓋をしていたライヒベルク公爵家だけはとうとう消しきれず、そして中央との距離も置いているため放置していた。だが領土の減少、蛮族戦の敗北で落ち目になっていたライヒベルク公爵家は先代公爵が蛮族から領土を取り戻し、当代公爵は蛮族を撃破し、王国軍すら負けたロバツ軍を父と合わせて撃破した。今の公爵子息は中央政界で出世していく。これ自体は公爵家の和解の一環だが、もし王家の血が途絶えたら?どうなる?


「告解は非常にいやらしいものでした。本であれば発禁されるかも……。ジキル子息に会おうとしていたところを癇癪を抑えようとやってきたジョージ殿下と鉢合わせたのです。嗚呼可愛そうなジョージ殿下!初恋の相手は嫌っている無能な兄の妃!しかも婚前交渉済みで不貞をしていた!最もそちらは知らずに死ねたので幸せでしょう」

「知らずに……」

「はい、知らずに」

アリア・ライヒベルク「私が悪いっていうの?関係ないわよ?破談の下地作ったの王国じゃない」

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