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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
老人の回顧録、あるいは内側の真実

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老人と戦争

 第1王子の生誕は国家の慶事として祝われた、結婚と同じ年だから計算が合わないと皆が思いながらもそうであれば流石に……と思い口をつぐんだ。同時にハーバーの国王就任行われたからである。

 ハーバーに聞けば実際のところ婚前交渉をしていたらしい、向こう(オーランデルク)も必死だったらしく懐妊さえすれば縁は切れまいとの判断だったらしい。

 側室であるアガサの懐妊も発表され、ついでに我が家にもジェーンの妊娠がわかった。


「はっきり言うけど、多分1人しか産めないと思う。私は体が弱いの、体力とかではなくて体の中が……」

「かまわない、君さえいれば……」

「いや、愛とかじゃなくてリッパー家が途絶えたら困るでしょう?」


 比率としては呆れた表情が多かったが、仄かな嬉しさを匂わせる言い方で私は天にも昇る心地になった。


 そんなこんなで十月十日とベビーベットを買い、間諜を始末し、レズリー家と連携を取りながら仕事をしていた私にアストレア王妃の病死の一報が入った。

 私は直ちに参内したがほぼ無役だったため実際似合うことが出来たのは1ヶ月後くらいだったと思う。

 応接間に通され、ハーバーが入ってきたときには憔悴した彼を見て思わず声を上げてしまった。


「自体は最悪だな、アストレアの手駒がオーランデルクのために動いている。死んでも忠実な辺り見る目はあったらしい。それとも相当な利益か?王妃としての能力も高かったし、今ロバツが動いたら大変なことになる」

「どうするべきでしょう?」

「オーランデルクが役に立つうちは唯一のパイプ役だ。あれは双頭の蛇だ、いや、頭が多くてどれを潰しても致命的かそうでもないかもわからん、さすがは外交に謀略に傲慢で有名な国なだけある。そんなものに頼らざるを得ない我々は……いや、よかろう。アストレアがひっかき回したせいでかなりの貴族が離れた、だがここからだ。ロバツに勝てば再度再編に取り書かれるだろう、そのときはジャック、お前が頼りだ」

「わかったよハーバー」


 この時の友人たちは皆若手であった。そしてアストレア王妃のオーランデルク寄りの発言強化政策により大抵が冷や飯くらいであったが、ロバツとの戦争までの辛抱だという忍耐力で耐えていた。



 いつのことだっただろうか、子供も生まれ、成長してきたある日のこと王命であると王城へ呼び出された。

 いつもの応接間だろうと思っていたが予想はハズレ、ハーバーの私室に呼び出された。


 そこにいたのはハーバー、叔母上、フォルカー、レズリー伯爵、父上、兄上、宰相閣下であった。


「此度の責任を取って伯爵位を息子に……」

「認めよう……」


 父上は兄上に爵位を継承しでていってしまった、私には何がなのことだかわからなかったがこれはアストレア王妃の派閥を泳がせておいたが何も掴めなかったことにより派閥調整機能の喪失を利用としたものらしい。


「ここにいるのは王家を支える家だ、ロバツがオーランデルクに攻め入る。準備をしてほしい」


 つまり父上はその情報を掴めなかったのか、ギリギリでようやく掴んだがもう手遅れだったかということだ。


 蓋を開ければオーランデルクは耐えることなくあっさりと屈した、同時に公国であったオーランデルクはロバツの承認のもとオーランデルク王国に名前を変え、サミュエル王国に対し、年長者として義父として上から目線でオーランデルクに便宜を図るよう命令してきた。要請ではなく命令である。

 いまやロバツについたオーランデルクに配慮する価値はなく、アストレア王妃の手駒の多くは離れていった。もっとも離れたふりをしているやつが一番厄介なのだが。


「公爵家の蛮族撃破ですが……」

「北方は蓋をしてくれれば良い、公爵家はいずれ王国にない爵位にせねばなるまい。最もそれほど反骨心を見せるものではないから放っておいてもいいが」


 ジン・ライヒベルクという公爵は中央から見れば従順であった。ならばこそここで報いてやればよかったと今では思うが、ロバツとの戦争が目前に迫る中、蛮族で手一杯の公爵家に報奨をやる暇なぞなかった。


 それからすぐ、ロバツが攻めてきたときは公爵に報奨をやらなくてよかったではないか、全く心配性だと友人たちから言われたのだが、その間違いに気がつくのは存外早かった。


「中央部突破!王国軍敗退、ギャンベ伯爵一族もろとも戦死!ガル男爵一族もろとも戦死、スペン伯爵戦死!」

「国王出陣か、まさか先遣部隊が領地ごと吹き飛ばされるとはな」

「間諜の類は始末しているので内部から崩された線はありません、国境沿いは気を配っていたので」

「リッパー男爵がそういうのであれば問題はあるまい」


 王国軍はあっさり負けた、まるでスープの椀を落とすかのごとく飛び散っていった。国王陛下ご出馬となり、いよいよ末期かと思ったものだ。なにせ王国軍の優秀な人間はあっさりと負けて死んだか負傷した、あるいは優秀なのは部下だったのかも知れないが、そのうえ優秀な人材を地方から戻す暇もない。


「ライヒベルク公爵家、ロバツ撃破!敵司令官討ち死に!ロバツへ逆侵攻!」

「ライヒベルク公爵子息、敵主力部隊を撃破!オーランデルク方面に南下!」

「動きを見せなかった国境沿いのオーランデルク軍が援軍であると」

「拒否せよ!」


 ライヒベルク公爵家がすべてをかっさらっていった。なおも悪いのは国王陛下ご出馬で実際にひと当てするまでもなく終わったことだろう。

 なにせライヒベルク公爵家にはよい扱いをしなかったばかりだ、これは戦後に苦労すると思った。その程度だった。


「好機!敵の軍を撃破してしまいましょう!公爵家が撃破したのは弱小部隊だったのです!我々こそが本体を攻撃し撃破したことにすれば良い!国王陛下に花を持たせるのも家臣のウチでしょう!」


 その家臣としての扱いもマトモにしてないから不安なのだが、結局はその意見に飲まれた。たらればではあるがオーランデルクの国境とにらみ合いをしていた伯母上が総司令部にいたら猛反対していただろうと思う。どこまでも足を引っ張る、つくづくろくでもない国だ。戦後知ることだが、王妃が嫁いだ直後からサミュエル王国の内情もすべてロバツに流していたのだから。


「国王陛下自らが敵本体を攻撃するのだ!」


 そう宣言して士気は上がるが、敵にとってはコイツらさえやれば逆転できると教えるだけだった。

 結果として王国軍だけが、国王軍だけが敗退した。

ロバツ軍「先遣隊か、全力でぶっつぶせ!」

王国軍先遣隊「え?いきなり?」

貴族家「うわー!」

王国軍先遣隊「邪魔だな!やめろ!おい!」


ロバツ軍「完勝!」

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