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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
老人の回顧録、あるいは内側の真実

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老人と失脚

 私の結婚式は派手だった。姉上も顔を出していたし、一応はハーバーからの祝いの手紙も届いていた。バンサ伯爵家とリッパー男爵家という知る人は当然知っている家がくっついたのだから当然ではある。


 私は婚約式でジェーンにキスをしたのだが、普通は結婚式でするのだと後で怒られたことを思い出しながらキスをした。

 今回は誓いの言葉の後にするのだとその場で怒られた、私は緊張で手順がすべてスッポ抜けていたが来賓からは政略結婚でなくこのような家がくっつくのは喜ばしいとお褒め頂いた。言った人間はだいたい夫婦仲に問題がある家だったので伴侶への当てつけだったのかも知れない。


 友人たちは祝福してくれ、指揮が終わった後で義父上は退任して当主を私に譲ると宣言した。来賓は当主がジェーンではないことに驚きつつもそれほどの能力があるのかと注目していた。


 それからハーバーの結婚式があった。それは国を上げてのもので盛大であった。私がリッパー男爵家の教育を受けているうちに王太子になっていたことを結婚式を行うことでようやく知ったくらいであり、思わずいつ王太子になったんだ?と聞いてジェーンに呆れられた。

 結婚の報告をした際には王太子だったが私はお祝いの言葉を言っていないのでしまったと思ったが改めてでよいかとこのときは考えていた。


 そんなこんなで王宮部署監督官として部署の掌握にかかった私はハーバーに呼び出された。


「皆下がれ、友人として会うのだからなにもない」


 そう言って応接室から皆を下がらせたハーバーは全員が出ていくのを確認すると立ち上がって壁の辺りに近寄り耳を当てていた。


「おらんな、まぁ……せざるをえないからな」

「何事ですか?あと遅れましたが王太子就任とご結婚おめでとうございます」


 毒気を抜かれたようなハーバーは今いうことか?と小声でつぶやき窓側へ手招きした。


「済まないな、アガサを娶ったことで問題がおきた」

「同時に娶るのですからそれはそうでしょう、バランス的には問題はないとは思いますが。やはりリッパー家とつながった事ですかな?」

「──そうだ」


 しばらくの沈黙の後でハーバーは私に申し訳無さそうに語った。


「王宮部署監督官を降りてほしい、あるいはもう解任がでてるかもしれない。アストレアが自国の立場の弱さで警戒している。ただ……」

「承りました、リッパー家としての仕事は外でも出来ますので」

「本当に……リッパー家の令嬢によりによって惚れるとはな……」

「それを言ったら私も顔をろくに知らない姪に惚れるとはというべきですかな」

「抜かせ、済まない……頼む」


 私はその日のうちに辞表を出そうとしたが王太子妃の手駒がなにかしたのか覚えのない不手際の件で査問するかどうかを突きつけられる状況になっていた。

 別に受けてもいいがハーバーの不利になるので不手際の無実を証明したうえで辞表を出した。王太子妃殿下はさぞかし怒っていたらしいが無実を証明した際に手駒が失脚したらしい。

 こうして暇になった私は叔母上に呼び出されのそのそと館へ向かうのであった。


「はっきり言うぞ、大人しく辞表を出せばいいだけの話だ。あれで王太子妃殿下はお前の嫌いぬいているし、私もお前の王宮部署復帰を必死に止めねばならなくなった、今後もだ。あの王太子妃が王妃になったとも手駒は失脚を間逃れた連中も絶対阻止に動くし妥協もしないだろう。わかるな?」

「ではおとなしく家の仕事をするとしましょう。別に間諜であればロバツと同じようにオーランデルクであっても殺して良いのでしょう?」

「そうだ、おそらくロバツの戦争時期を考えればまだオーランデルクに配慮はいるが、間諜まで許すほどではない、お互い様だどんどん殺せ、こっちも死んでいるからな。レズリー家はオーランデルクで大層な目にあったから今後は敵国として対応すると言っていてな、説得しようにも無理であったわ」

「ライエン侯爵がですか?」

「職務熱心な真の御三家の前でライエン侯爵家がなんだというのだ?なぁ、バンサ伯爵家出身のリッパー男爵」


 レズリー伯爵家が怒りを表に出すほどの自体がなんであったかはわからないかったが、後でジェーンから聞いて知ったところによると当時の後継候補が留学中に殺されたらしい。亡くなったのは嫡男ではないがこれで次期当主は確定したらしい。陰謀の香りがするがその次期当主が一番激怒しており、自分が留学して決着をつけると大暴れしていたらしい。

 王家は大した抗議もせず事を収めたことで次期当主殿は大変怒っているらしい。

 知っていれば職務熱心な真の御三家が痛烈な皮肉であることがよくわかったのだろうが、私は諜報員を殺すのには熱心だったがその手の情報にはジェーン頼りで疎かった。


 私の仕事は単調なもので、スパイを延々狩り続けるものだった。そもそも現状は他にまともな仕事はない。あとは貴族を数人殺したくらいだ。

 辞表を出したのに王宮部署を追放という処分になったがまだ息はかかっているので登城することくらいはある、おそらく辞めてからそう日はたってない時期だと記憶してるが王宮部署で肩を怒らせるアルベマー伯爵に会った。


「リッパー男爵!なぜあなたが失脚するのか!」

「致し方ありません、ロバツの関係を考えればオーランデルクは……」

「戦う前に剣を捨て耳を切り捨てるバカがどこに居るのか!全く度し難い!ライエン侯爵もわかりはするがあの伯爵も今大事なのはなにかくらいわかるであろうに、ことが終われば復帰していただけるのですな!」

「国王陛下がお望みであれば……」

「次期国王陛下もお望みであろう!」


 文官であるアルベマー伯爵に押されて無難な回答をしたが、実際は相当な武闘派であることをこの後知ることになった。

 そして私が王宮部署の監督官に復帰することはなかった。あるいはアルベマー伯爵はこのとき王家を見限っていたのかもしれない

アルベマー伯爵「ペンは剣より強し」

アルベマー伯爵「ならばペンと剣と弓を使えばもっと強くなるということだ、覚えておきなさい」

孫「………はい……お祖父様……」

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