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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
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ローズ・マルバッハ男爵令嬢

「ローズさん、いらっしゃって嬉しいですわ」

「キャスリーン様」


 ボクはいつもの情報収集の一環でマイヤー子爵令嬢のお茶会に参加していた。

 それ自体は特になにもない、いつもの茶会の一つに過ぎない。

 マイヤー子爵令嬢は下級貴族の取りまとめ役になりたいのだ。

 それ自体は別にいい、当家はエリー様の庇護下にあるのでジェラルディン・マイヤー子爵令嬢がなにをしようとマルバッハ男爵家と敵対することはないし、排斥することもない。

 マルバッハ男爵家が公爵家と敵対するか、ボクがエリー様の不興を買わない限りは特に何の問題もない。


 あるいはタボット子爵との婚姻に問題が起きなかったらボクが下級貴族のまとめ役になっていたかも知れないが……。

 エリー様庇護下でそのような振る舞いをすることは危険極まりない。

 下が自分の権威を持って偉そうに振る舞うということは大抵の場合はよく思われない、エリー様がどうかはわからないがボクは余り好きではない。


 恩は恩、恨みは恨み。

 マルバッハ男爵家は、ボクは恩を必ず返すことを至上としている。

 相手が平民であろうと、蛮族であろうと、王であろうと貴族であろうと恩は返すし、恨みは100年経っても返す。

 相手が誰であろうが関係ない、恩は返さねばならないし、やられたらやり返す。

 だからエリー様に恩を返すまで出しゃばらないし、足を引っ張るのは以ての外だ。

 だからタボット子爵はあらゆるツテを使い証拠を提出して追い詰めたし、巻き込まれた平民をひっそり護衛もした。

 恨みをぶつけるべき近衛騎士団は粛清され、バルカレス男爵家の支配下になったので手を出す意味はない。そもそも大半は死ぬ。

 ロバツの国境沿いに飛ばされた人間に関してはしっかりと調べ上げている。家族もしっかり、手を出せない人間とエリー様から会話でなんとなく漏れた人間、家族は別と判断した人間は省いた。

 ボクの情報が役に立つのであれば、ボクが手を汚さなくてもいい。

 所詮は男爵家だからできることは限られる、でも下級貴族というのは敵に回せば厄介なものだということは高位貴族ほど忘れている。


 それを忘れていない家というものは非常に少ない。

 高位貴族ほど爵位に口を利いているものだ、男爵位が伯爵の持っていた爵位を与えられた、骨を折ってもらったなんてものはいくらでもいる。

 自力で獲得してもいつのまにか我が家が与えたと言い張り、我が家の爵位だったと言い張るような愚か者が多いなかでしっかりとしてる貴族は下位であっても一個の独立した家としてみる。

 それが出来ない家はボクが生まれる前から消えていったらしい。

 ある意地はこれも公爵家との政治の結果なのか、ちょうど邪魔だから消えていったのか、それは残念ながら裏のことでわからない。


 ただ、このマイヤー子爵令嬢のお茶会がいつにもまして急だったことを考えるに、バンサ伯爵家なる家が何らかのキーであることはわかった。

 軽い情報収集でわかったことは、空位になって長いらしいこと、なぜかか取り潰されていないらしいこと、陰謀を感じるといういつもの締めで終わる程度のことだ。

 それくらいでしかないが、マッセマー商会が関わっているなどなかなか怪しい情報がチラチラと覗いている。

 現状、ボクはこの家がどのような情勢に関わるかは把握できていない。


 残念ながら聞いた相手もわかっていない。

 高位貴族であればもう少しつかめるのかも知れないが……。

 というところでルーデンドルフ侯爵令嬢にゲルラッハ伯爵令嬢というまずこのようなお茶会に顔を合わせない人間が出席した。しかも顔みせではなくきっちりとした参加だ。

 が、悲しいかな聞き出そうにも全くツテがなく、マイヤー子爵令嬢もボクに顔つなぎをするほど親しいわけでもない。

 なんなら敵対関係に至っていない潜在的敵対状態の疎遠である。

 タボット子爵との婚姻が破談した際はマルバッハ男爵家が下位貴族をまとめる可能性がなくなったので高笑いの一つでもしていたかも知れない。

 取り潰しになるかもと聞いた際は公爵家介入まで我が世の春でも謳歌していたかも知れない。

 だがマルバッハ男爵家は生き残った、そして公爵家の足を引っ張らないように消して上に立たないがそれなりに下級貴族の耳目として公爵家のために働く、だから潜在的公爵派閥のマイヤー子爵家も強くはでれないし、かといってボクに功績を与えすぎると自分たちをいざというときに売り込めないからギリギリを狙って応対をする。

 結局その程度の関係だ。


 そのように目立たず過ごしていたボクは今日この日、とてつもなく目立つ羽目になった。

 イデリー伯爵令嬢から気さくに話しかけられたから。


「あら?キャスリーンだなんて他人行儀ですね?エリーのご友人ではないですか」


 公にしてはいないが別に隠していたわけでもない事実をしれっと叩きつけるイデリー伯爵令嬢。

 これは愛称でいいということだ……。


「失礼いたしました、キャス様」

「あら?まだ少し硬いですね、ローズの活躍はエリーからよく聞いています。どうか普通に」


 ボクはエリー様にだってエリーだなんて気さくに呼んだ覚えはないのですが……。


「それではキャス、と呼ばせていただきます」

「ええ、もちろん。そう呼ぶべきですから」


 こうしてボクはマイヤー子爵令嬢を蹴落として下位貴族の取りまとめ役としてそれとなく見せつけられた。

 マイヤー子爵令嬢はご不興を買ったようだ。

 エリー様か、キャスの。

エリー「マイヤー子爵令嬢……?」

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