同じようなものだと思うけど?
収支などを持ってきた人間から書庫と図書室の違いってなんですかと尋ねられる。
なにいってるんだろう……?
図書館でもない限りは同じだと思う。規模とか人の出入り、持ち出し権限が多い人間が多いかがどうかなんだろうけど。
家の中なんだから閲覧場所なんて書庫でも図書室でも一つあれば十分だし、それ以外だと規模だと思うけど。
ようは見て図書室だと思うかどうかじゃないかな?
どう見てもここは書庫だし。
と伝えると収支やらなにやらをドサリと置いて報告にいった。
分野外だよ?一応確認はするけど……ないね、いらないね。基本的には最低限だな、前バンサ伯爵時代も絵画依頼と納品ばかりで特にない。
受け取れ、ほら受け取れ!じゃあ置いとけ!
無理やり鑑定士に押し付けたところでどうにもならない。
これ収支とか取っておくべきでは?
……新王家になるから捨てる意味での全ベット?勝負師かな?
ギャンブルに強い主人公か、面白そうだな……。
バンサ伯爵の歴史は多いから後回し、とりあえず教養書類を片付けていこう。
購入、商会、商会、商会、商会。
本に仕掛けもないな。
開いた扉を通る影が多い、持ち出しが多いな。おそらく客間などは調度品を先に持ち出させてるのだろう。絵画と資料がメインだしな。わかるわかる。
昔の長編小説か、初版だな。これは全部買う。私は第3版からだからな。初版は持っておくべきだろう。
一応確認しても齟齬はなし、これは全部購入……。
運んでくれるの?家まで?サービス良いですね。
そういえば私は良客か。書籍利益は私が作ってるようなものだしなぁ。
それにしてもこの雑多でなぜくだらない歴史書をこちらに置かなかったのか?
知ってる本は背表紙とか表装をさっと見て渡せば良い。中に何か挟まってるかはマッセマー商会の鑑定士たちが確認してくれるから。
まぁ対してないな。蔵書量も比較的少ないし。うわ無駄な装飾図鑑だ。
とりあえず100冊以上ある意味のないような図鑑の確認は流石に鑑定士に投げる。
これしょっちゅう売られるから表装貼り直しとかあったらわかるよね?ね?
うん、流石にわかるみたいだね。
一度も開いてないタイプ?大体そうでしょ?この手の本なんて。
私も一回ぱっと読んだことあるけど愛読書になるタイプじゃないでしょ。
辞書とか愛読書にするタイプ?手紙書くのはうまくなるだろうけど、裏では回りくどいって私達の集まりでも評判悪いよ。大事なのは話題だから。
じゃあこの棚の肥やしや、客間の肥やしに使うくだらない辞典の棚も持っていってください。
これこそ執務室にでも置いておけばいいのに、どうせ本をいっぱい持っています、全部あってすごいでしょみたいな飾りなんだから。わざわざこんなところにおいておかなくても。
棚がなくなると広くなった。
けど棚の後のカーペットの色が変わってない……。カーペットが色褪せてから棚を増やした?
いや、流石にある程度の年月で交換するはずだから……。棚を増やすくらいならカーペットも新調したほうが良い。財政的に問題があったかと言われると。
いらないと持っていかれなかった収支を眺めるが特にそのようなものはない。
カーペット新調も先々代くらいかな?この部屋かはわからないけどもあまり使わないからと言う可能性もある。
もう一度棚が消えたカーペット見ると、少しだけ四角の形に色が違う場所があった。
直線上に見ると、もう一つ。
ここにもともと足があるものが置いてあった、机かな?
「こちらの棚も……動かして……」
本をまだ抜いていないと言うがここの棚も肥やしの辞典だ。
こんなもの飾る以外に価値があるのかしら?全部どかす、両面全部辞典?これ同じものだけど表装が違う、出版次期が違うだけだ。なんでこんなものを……。
どかせた棚の跡を見ると、やはり四角の形で2つ色が違う。
おそらく机があった、いま鑑定士が百科事典を広げてパラパラめくっているあの机が。
一旦本をどかして机の位置が同じか確かめさせる。
ものすごく嫌そう、でも仕方ないでしょ?はいピッタリ。
つまりこの大きな机は最低2つあった。
だとしたら書庫よりは図書室っぽくなるかな?
さてそうなるとこの棚も……狭い。狭すぎる。
流石に元から離れた場所にあったとしても年数の問題で色褪せすぎてわからない。机周りの棚を動かしただけか、棚を追加したかはわからない。
あくまで机の脚の後はその上に棚が乗っていたから変わらなかっただけ。
仕方ないとも収支を眺めると先代バンサ伯爵が亡くなる前に棚を買っている。これか?1つ?
ここに机があるとして……。絵画があったところの棚を動かしたのなら。買う必要は、元から空いていた?
もう一度収支を見直す、亡くなる遥か前に棚の売却?6つ?
応接室や客間の合わせた数は?
……6つ?じゃあこれか。飾っておいたくだらない辞典をここに……いや、これを置く場所がない、棚も売った。
まさか?
バンサ伯爵家記録の適当な本を取る。
出だしはどこぞの当主の記録、白紙、開きやすい真ん中にも前後に適当な記録、白紙、後半も少し記録。
見せかけの書籍……?なんでこんな……。
近くのバンサ伯爵家記録を取るとまた同じように前数ページ、真ん中前後数ページ、後半数ページという薄い記録。足元の本を手に取るとすべて白紙。
あのくだらない辞典は棚の売却時にここに運ばれたんだ、おそらく棚がスカスカだったのだろう。奥の棚の教養書が雑に入っていたのはとりあえず詰め替えたから。
誤魔化したかったのはここ。バンサ伯爵家記録の棚だ。
エリー「この客間もろくなものがありませんわね」
ピア「すみません」
エリー「あ、いや、そういう意味ではなくてですね……。こう絵画も普通で応接間ほどの狂気がないなと」
ピア「なるほど、あの部屋がおかしいだけですよ」
エリー「(なんでそんなところを応接間に)」




