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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
突撃!売却!バンサ伯爵邸

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あてにならなくて困りましたわね

「それでどうですの?」


 購買記録などを照らし合わせるキャスに問う。

 売却記録はシャーリーが敵性かどうか確かめながらも家の支出、交際はないが不自然な出入り、またそれが貴族として致し方ない支出に見えるかを確かめている。

 他人の書いた記録ってどうしてこう読みづらいんでしょうね?


「特に問題はありませんね、と言っても絵の実物がないのでなんとも。画家の名前を書き換えて値段を跳ね上げてる可能性もありますし、ただ支出合わせても問題はないですね。私の領分はここまでです。表面記録上おかしな支出はない、これが結論です」

「ウチも売却記録は問題ないと思うわ、書いてある画家名が同じならやけど。あと大きさもあるか、タイトルとかだけでほんとんど書いてないな、怪しいわ。親父どう思う?」

「未熟者め……。大きさがない?バンサ伯爵家の目録を漁れ、略図はないかもしれんが大きさや何を書いたかくらいのことは書いてある。伯爵家規模ならそれなりにあるだろう。目録自体がないのなら怪しい」

「あ、そうか。ウチらの商会は大きさも簡単なスケッチもするけどほかはせんもんな……。目録は?」

「知りません……」


 まぁ、それはそうですわね。ほとんど把握してないみたいですし。


「…………親父」

「知らんが?知ってたらおかしいだろ」


 それもそうですわね。知ってたら今後怖くて使えませんわ。


「では傾向はありますか?」

「はい、イデリー伯爵令嬢。大抵は執務室か書庫にあるものです。長年の経験でございますが」

「ふーん、じゃあ図書室かしら?」

「ベスに聞いてみよう」

「バンサ伯爵、あそこは図書室なのですね?書庫はございますか?」

「いえ、書籍があるのは執務室とあそこくらいです」

「──妙ですね?」


 あら?推理タイムかしら?

 急に犯人にされたらどうしましょう?


「目録が図書室にあるとしたら誰かの目に付く可能性があります。伯爵家なら他家に……王家にすら黙って、もとい秘蔵しているものもあるはずですし……裏目録もあるかもしれませんね。家の書庫は出入りが限られますが図書室であれば多少出入りが多くても……。そもそもあそこは本当に図書室なのでしょうか?書庫ではなく?」

「少なくとも図書室とジャックさまからは伝えられています」

「ジャックさま?」

「ジャック・リッパー男爵ですわ」

「まぁ男爵家規模では図書室も書庫も同一の可能性もありますね」

「そうなんですのね」


 そもそもワタクシ違い知りませんでしたけど。

 皆さまを見ても……。あれ?まちまち?


「キャスは?」

「もともと宮廷貴族ですから書庫です、図書室の概念がありません」


 そうでしたわ、これは平均的には難しいですわね。貴族によっては人に見せる用のコレクションルームと見せない用のコレクションルームもあったりするものですし、似たようなものでしょうね。


「マーグ?」

「そもそもうちにあったかな~」


 論外でしたわ……。興味微塵もなさそう……。


「アン?」

「あー……執務室に大体あって……私の私室が書庫みたいなものかな……うん」


 歯切れ悪っ!どうせ恋愛小説部屋中においてあるだけでしょう!


「戦史とかはどこに?」

「家の記録とかあるだろ(小声)」

「あーそれは作戦室かな?家の記録は執務室だと思う。確か……」

「家にそんなものあったんですの……?」

「軍人貴族だからな!」


 書庫があったかどうかもあやふやなのにない胸を張らないでほしいですわ。


「ジーナ?」

「うちも男爵家だ(小声)」

「つまり?」

「農林関係の記録は書庫にある、後は故人が持っている本が死去後に書庫行きか処分か誰かに受け継がれるだけだ(小声)」

「つまり図書室は?」

「男爵家にあるわけないだろ(小声)」


 はいダメ、でも今までで一番マシかもしれませんわね。あるわけないという意味では。


「シャーリー?」

「仕事のものは商会にあるわけやし……。そもそも書庫持つほどの……」

「嘘つけ、部屋の隣の倉庫に大量に本をおいてるじゃないか」

「親父は黙っとれ!」

「で?ありますの?」

「んま、流行りの本をな……」

「図書室は?」

「ない」


 うーん、じゃあ本命。


「クラウ!」

「ないっす」

「なんでですの!」

「書庫なんかにレズリー伯爵家の記録を残せるわけないじゃないっすか」

「じゃあどこにありますの?」

「…………禁書庫?」

「書庫ではないですの」

「当主と直系しか入れない書庫はもう書庫ではないっす」

「そういうものですの?」

「そういうものっす」

「そうなのね……」


 困りましたわね、ベスは間違いなく持ってるでしょうし。

 基準が全くわからない……。


「そもそもエリーはどうなのですか?」

「書庫はあるけど元はなんだったか……。空いてる部屋を全部脚本……本をおいていったからなんなのかしら?あと演劇道具とか、一部は劇場設立で移動させましたけど」

「蔵書量はベス並みですね、もっとも種別はどうも偏ってますが」

「趣味のない貴族なんてパペットととなにが違いますの?」

「人生は演劇のよう、喜劇であり悲劇であり仮面劇であり人によってはマペットでしかない……でしょ?」

「そう、そんなもんですわ」


 さて、大した違いはないと思っておくべきか?

 こうやって軽視したときに限って刺してくるんですわよね。


「とりあえず本棚も売却でしょう、動かしましょう」

「かしっこまりました大公女殿下……おい!動かせ!」


 棚を動かすと隠し扉が……でてくることもなく。

 カーペットも引っ剥がしてもなにもなし、2階をひとつひとつ見ていきましょうか……。

 ああ、そうだベスに聞いておいてくださいまし。書庫と図書室ってなにが違うのかって

公爵「書庫どこ?」

執事「ここちょっと消えてますね……。お嬢様が来てからなんかこう……物置と言うか」

公爵「まぁ元から物置みたいなものだから良いか、公爵領の貿易の記録を」

執事「執務室の机の上です、去年は左手前書棚の一番上です」

公爵「うん、そうか……」

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