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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
突撃!売却!バンサ伯爵邸

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235/561

謎の売買記録ですわね

「先々代伯爵のオズワルド様の奥方様の肖像は?」

「バンサ伯爵家がこうなった際に御実家が肖像画を買い取っていかれたそうです、家族肖像も含めて」

「奥方様はどこの出身でしたの?」

「シュライヒャー伯爵家です。マリーナ・バンサ先々代伯爵夫人です」

「ああ……そこで繋がっているのか……」


 こんなところで関わってくるんじゃないですわよ……。

 まぁ世代的にはシュライヒャーの叔母でしょうね。年の差のある姉だとしたら相当離れてるでしょうし。

 まぁこれに関してはどっちでもいいと言えばどっちでもいいですわね。


「シュライヒャー伯爵家は謀反疑惑や当主逃亡により取り潰されたので絵画の行方は不明っすね」

「家族肖像ごとねぇ……」

「余り聞いたことはないな」

「大体そんなときはろくなことじゃないっすからね」

「そらそうや」


 きな臭いことこの上ないですわね、まぁどうせ大した……。


「バンサ伯爵家の家督が空位になってから1年後ほどで買い取ったそうですね。羽振りがよかったんでしょうか?」

「一年?変なの……」

「いや、単に……1年後?あれ?バンサ伯爵空位で……シャルロット・ライエン侯爵が亡くなったのは……?」

「同時期っすね、この後に当時第1王子の現国王が何度も告発をし続けて……最後には部下に家臣に財産を持ってユークリウッド・シュライヒャー伯爵はどこぞへと逃亡してるっす」


 ということは……裏がありますわね。

 執拗な第1王子の陰謀告発にかけられ続けて潰されることを察して手を回した、ということは結構いやらしい一手だと思いますわ。

 まぁ、わかりませんけど。


「マリーナ様の姿を推測できるものはありますか?」


 何かあるんでしょうね、あるいは推測で悩ませたいだけでなにもないかもしれないですけど。そうだとしたら今まさに手のひらで踊っている最中ですわね。

 流石にジョージ第2王子の最側近でルーデンドルフ侯爵やゲルラッハ伯爵が恐れていただけはありますわ、彼らをしてもろくに会話できなかったというくらいですもの。


「売り損じた家族肖像とかないん?」

「それかロマンスは……」

「アン……」

「ベス……すまない……」

「それであるのですか?」

「さぁ……。当時はジャックさんが管理してたのか、シャルロットお祖母様かお父様が管理してたのかもよくはわかりませんし……。ただこの話はジャックさんから聞いていたので当事者だったのではとは思いますが、どうも他人事のようで……事後通達か何かだったのではないでしょうか?」

「ちなみに絵画の所有権は?」

「法的にはバンサ伯爵家だろう、もっとも娘の思い出の品を売って欲しいと言われた場合は配慮はいる。高い指輪や宝石とかなら考えることは増えるが……たかだか絵画だからな、よほどの画家が書いたものでもないのならごねるほうが不思議だ。俺でも適正価格なら売れと調停する。それが唯一でもない限りな」

「ではなぜ全部売ったのでしょう?ジャック・リッパー男爵からしてもご母堂でしょうに」

「バンサ伯爵家に借金でもあったとかか?」

「多分ですが貴族間の資金洗浄の一環だったのではないでしょうか?」

「ふーん、めんどくさいね~」

「そうなるとまたややこしいな」


 ああ、なるほど。金を動かす際にものを買う形にしただけですわね。

 確かにそれなら話は通りますけども……。


「その資金はバンサ伯爵家のなにに使われたのですか?」

「ジャックさんが言うには基本的には維持費らしいです」

「まぁ、そうでしょうね……」

「そう考えると……単純な資金洗浄ではなくバンサ伯爵家の維持費をジャック・リッパー男爵が捻出できず母の実家に頼ったということでしょうか?彼が管理者だった場合ですが……。そしてシュライヒャー伯爵が姉か叔母の絵画を買うことで支援したと」

「多分、年齢的に叔母だと思いますわよ」

「そうなんですか?」

「多分ですわ、多分」


 シュライヒャーの年齢からして多分ですけどね。

 そうなると結構結びついてますわね。シャルロット・ライエン侯爵とユークリウッド・シュライヒャー伯爵と共同でリッパー男爵家の王宮部署復帰を阻止しながら、叔母の嫁いだバンサ伯爵家をシャルロット様が潰すのを放置して、おそらく管理していたジャック・リッパーが横領する可能性もあるのに資金を与えた形になりますけど。

 なにがしたいんですのこの集団……?

 と言ってもジャック自身は関わってない可能性もある。しかし血筋の面では一番関わるべき人間だし物理的な意味でなければ排斥することは不可能なのでは?


「その時の売買取り引きの書類はありますの?」

「執務室に保管されているそうですが……」

「シャーリー……はだめですわね、忙しいから。貴族内の取引の齟齬はキャスに任せますわ」

「わかりました」


 多分変なミスはないはず。

 最も裏帳簿があるわけもないでしょうし、適正な価格か、異常な価格かだけわかればいいんですけどね。

 それにしても……。


「だから家族肖像がないんですのね……」


 ワタクシもなにか変だと思っていましたけど、ホールに先代も先々代のものすら全く見当たらない家族肖像に引っかかってましたのね。

公爵家玄関ホール正面に決めポーズで肖像画がある先代公爵

はしっこにある内務大臣就任時に描かれた当代公爵

階段にある公爵令嬢の彫像

客間の前にある先代公爵夫妻から公爵令嬢が揃った家族肖像


アーデルハイド「公爵閣下だけ可哀想じゃない?」

エリー「お母様と初めての肖像画を描く約束をしてたのにそれを破って描いたからですわ。でもあの肖像画を小さくしたものはお母様もロケットに入れて持ち歩いてますわよ」

アーデルハイド「あーはいはい……」

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