バンサ伯爵邸への道のり
きれいな夕焼けですわね。
雲がグラデーションの如く、淡いオレンジに色づきながらもその光は遮られることもなく照らす。街を、山を、城を、すべてを……。
それはまるでワタクシが目指ず為政者そのもの。まぁワタクシの美しさだけなら匹敵してるかもしれませんけど。
そう言うと皆様は揃いも揃って『は?』って顔されますけど、むしろ言った人もいますけど。
必ずそこに存在があって恩恵を与える存在って為政者であるべきだと思いませんか?……日照りとかはありますけどね。
でも日の出と夕焼けの美しさは民衆から見る為政者であるべきですわ、ああ良かったと思えることが常にある、代わり映えせずにいつも……たまにちょっと曇っていたり雲に覆い隠され切ったりもしますけども、大筋は変わりなく美しく人々を照らす。
日中の太陽は辛く、冬は隠れがちでも……必ず存在している。
喧騒にまみれた街も、酒場に人が増えて夜へと変容していくこの瞬間が一番好きかもしれませんわね。
あら?あの酒場……新メニューを出したみたいですわね。夜は余り動かないから楽しめるかわかりませんけど覚えておきましょう。
あの店も新しい料理を導入したみたいですわね。
同じ店でも昼と夜では出すものも客層も変わる。
あれも政治みたいなものですわね、適切な行動を起こせということでしょう。
こんな日々が崩壊せずに続けられるのなら国の一つや二つは挿げ変わっても問題ないですわね。
あまねく人々に幸福あれ。
本心ですわ。あんまり信じてもらえませんけど。
馬車の列はバンサ伯爵家に向かいながらも街を進む。皆様は我が家でのお茶会が終わるとこんな感じで帰ってたのかしら?
いや、公爵邸だと解散したら全員同じ道ではありませんわね。そう考えると珍しい光景ですわね。
これも堂々とバンサ伯爵に向かって見せびらかすため。本当は面倒くさいから相乗りにしようと思いましたけど、政治的に見せつけることの優位性は変えられませんわ。
明日広まるにしても朝一番というわけではないでしょうけども、勝手に判断してもらっても構わない。精々ワタクシ達が吹き込むまで踊って欲しいですわね。
どちらにせよバンサ伯爵がこちら側になったことはわかる。
その後どう動くかで貴方達が試されますのよ。
爵位ごと抵当に入れられたらもう派手に動くしかなかったワタクシのミスですけど……。
うーん、でもあの状況で断ることはどちらにせよ難しい……不可能だったと思いますわ。
断る正当な理由もないし、ここで断ったらワタクシ達は友人同士以外は、ワタクシ達以外はすべて阻害するという態度を見せるようなものですからね。
くらいがいきなりお金突っ込んだのも驚きましたけども……。なんで急に……。
いままで任せるっす!みたいな感じだったのに変なの……。
まぁ、クラウにはクラウの考え方がありますわ。
ワタクシに、ワタクシ達になにも言わないのであれば個人的な事情でしょうね。ちょっとお金がいっぱい入って貯めとくのが無駄だとか、まさかお金がないから投資するということはないでしょうし……。
投資の良さにでも目覚めたのかしら?投資なんかしないでもお金稼げるのが一番だと思いますけど。
そのうち競馬に手を出しますわね、あれは。
それにしてもバンサ伯爵邸は一等地ですわねぇ……。
貴族街にも男爵ばかりの地区やら何やらがありますけど、バンサ伯爵邸は公爵地区……。まぁ、今となっては公爵家はライヒベルク公爵家しかいないので公爵地区というべきか、ライヒベルク地区というべきか。
その近くですものね、伯爵で。侯爵ならまぁわからなくもないですけど……。
リッパー男爵家とかモレル伯爵邸とかはむしろ区分的には貴族街ではなく平民街だったりする家もありますしね、その中でもいい土地悪い土地はありますわ。
ライヒベルク地区はまぁ、可もなく不可もなくみたいな立地。一等地は適当に商会とかが入ってますわ。潰れた公爵家の数だけ土地が空くから仕方ありませんわね。一応ライヒベルク公爵邸も近隣公爵邸やその寄り子の側近貴族が取り潰された後で敷地を結構拡大したみたいですけど。流石に広すぎても意味がないですしね。敷地内に軍でも駐屯させるならちょーっとだけ手狭かもしれない程度ですけど。
そもそもこの地区って土地代が高いから一般の方々にはあんまり手が出せないですしね。
ですから店を出してる時点でなかなかのお金持ち、それを続けてる時点で商才もあるんですわ。
平民街から遊びに来る人も多いですしね、幸か不幸かバカ王子はこちらでは遊ばなかったみたいですけど……。
地区そのものがライヒベルク公爵家の息がかかっているから遊んでいたら死んでたかもしれませんわね。
娼婦として性病持ちで捨てられてる人間をあてがうとか、踏み倒した飲食店で王子が踏み倒すなんて思わないから殺してしまったとか如何様にもできたんですけどねぇ……。
だから来なかったんでしょうけどそういうところですわよ?
第1王子なら……まぁそもそもしないでしょうけども、堂々と振る舞って我が物顔でいるでしょうね。
そこで致命的に暗殺される隙は見せないくらいはしますわ。バカ王子のしでかしがこの地区ならとうの昔に死んでたでしょうし、第1王子が生きている頃なら誰も触れなかったでしょうね。
第1王子「絶対よりつくなよ?」
第2王子「頼まれてもいかない!」
第1王子「頼まれたらいけよ……」




