揺るぎなく
「もはや……揺るぎない。あとはどう勝ち切るかだけの話、そうでしょう?」
「なにかあればダメージは与えられるし、あればあるほど良いだろう」
「全部が全部ではないですけど……数が多ければ多いほど与える痛手は大きくなります」
「そうですわね……致命的な一撃は?」
「残念ながら超法規的措置の証言はいまだ取れない、残念だな」
「どうせバカ王子の私室で言っていたのでしょう?だれかバカの取り巻きでまともな人間から吐かせ……」
「まともなら取り巻きに残らねーし……」
「親の都合もあるけど……そろそろ離れるかも……」
あらまぁ、泥舟と心中するのではなくって?
それとも今日の出来事が予想より痛手だったのか、わかりはしませんが……。
「子どもまで殺されたら流石に覚悟決めるっすよ……」
あーそれ……。
ふーん、自分の子供は可愛いんですのね?
むしろ、なぜ今の今まで自分も家族も狙われないと?
超法規的措置なんて使えもしないものをちらつかせて使いっ走りが処刑されたのに?それで溜飲を下げてよかったよかった、どうせ王子は殺せまいとでも?
ワタクシ達が?
仮に殺せないとしてもあなた達を見逃す理由にはなりませんけども?
応じでも殺すし、あなた達が王子より殺してはいけない理由はありますの?
このご時世で離れられないような無能共が?消したほうが国家国民のためでしょう。
勝手に自裁していただけないかしら?ダメ?残念ですわね……。
「子どもですか?」
「今日の裁判で一緒にアウストリ死刑囚がな」
「えーと次長検事の?」
「元な」
「ええ、元次長検事の、どうして息子さんまで?」
「父の罪が重すぎたのですわ……。王家は救いの手を差し伸べなかった、それだけですわ」
まぁ、族滅決定後も不貞やら何やらでっち上げた後ではねぇ……。
むしろ生きていたほうが辛いことになったと思いますけど、生きていれば復権できるとは言え……流石に厳しいか。
家ごとなかったことにはなってしまったわけですし……。
本意ではありませんけど致し方なし、まぁ見せしめで犠牲が減るのならそれもそれでいいか……。
と、思いましたけどバカ王子側近衆の家は消えて貰う予定だから今更ですわね。明日の今頃はそれで終わり、というか側近もあまり寄り付かない。
制御が効かないんですわ、止められる上位者もいない、国王は制御してるんだかしてないんだか……。放任か、いまさら親として接することができない負い目か……。
まぁ、知ったことではありませんけども。
第1王子がなまじ優秀……いえ、超優秀だったからこその悲劇ですわね。
あれが100点だとするなら過大評価でも30点か40点……。王族としてもちょっとダメですわ。
そんなイマイチな人間を50点に引き上げるよりも100点を150点にしたほうがよっぽど有意義でしょうね。
というかアーデルハイドの評価もあまりよろしくはない方でしたし、惚れた女の前ですらよろしくない評価って多分取り繕いもできてないから本当に、本当に見放されていたんですわね……。
本当にあれをどう教育するつもりだったのか?無理では……?
どうあがいてもワタクシがバカ王子の婚約者にならざるをえなかった、それはそれとしていろんな手を使ってきたでしょう。アレを婿にして乗っ取るにしろ何にしろ。対策は大体ありましたけど、あれでは……いっそすり替えるくらいしか思いつかないんですけど?
母の不義密通疑惑もあるし別に誰でも同じとか振り切ってたらどうしましょう?
意外と第1王子はそのへん調べたうえで割り切ってそうですし……。
流石にそんなことアーデルハイドにも言わないでしょうしね、むしろ積極的に公表してしまって王位から逃れてアーデルハイドと逃避行くらいするか……?
いや、流石に…………。ねぇ?
少なくともそんな話は聞かされてないからアーデルハイドに入ってないはず、アーデルハイドがワタクシに伝えてない可能性もないわけではないですが……。
アレが黙ってられるかしら?こんな面白いこと。
結局、2人が亡くならなくても遅かれ早かれゴールは同じだったと思いますわ。
この1年で思ったより王家も宰相も人が離れてしまった。宰相もこちらについてしまった。
もはや逆転の目は公爵家含むワタクシ達の家を一撃で当主令嬢に至るまで殺すくらいしかない。
流石に一撃では無理ですわ、誰かが生き残れば意思を継いでくれる。
キサルピナもいる。いいえ、キサルピナがいる。
ワタクシの意思を継ぐのはキサルピナ、救世も救済も平和も繁栄も平等もワタクシが倒れたらトップとして……そう、頂点ではなくトップとして振る舞ってくれるはず。
あの娘の原初の願いをワタクシが叶える、もしもワタクシが叶えられなかったらあの娘が……我が娘が叶える。
なんの問題もない、計画を根底からひっくり返す出来事が起きてもここまで来た。
子どもを処刑したワタクシが我が娘に期待するのは滑稽な気もしますがね……。
「私のように助命はされなかったのですね」
「されるほどのことでもなく、されるほどの親しさもなく、されるほどの人間関係もなく、されるほど可愛がられていなかったのですわ」
そう、分家ですらなくなったとはいえゲルラッハ伯爵も手を伸ばさなかった。
随分と可愛げのない子供だったのかもしれませんわね、あるいは斬首が精一杯の温情だったのか……。
王太子の儀の前
ヴィルヘルム「踏み倒し!女!」
アーデルハイド「なんかすごい荒れてるのよね、ヴィリー」
フリードリヒ「そうだね(僕と君との婚約が正式に決まったからね)」
アーデルハイド「エリーが婚約者になったら1日で死ぬんじゃないかしら」
フリードリヒ「あはは、流石にそれはないよ」
アーデルハイド「そうね、数時間ね」
フリードリヒ「……」
アーデルハイド「……」
フリードリヒ「……教育しようか」
ゲーム世界
ヴィルヘルム「私は第2王子、兄上の不出来な弟です」
アーデルハイド「どうにかなったわ」
フリードリヒ「やはり体に教え込むのが一番だったね」
エリー「腐ったゲロの匂いみたいな人間性の香りがしますわね、あれか」
アーデルハイド「(ダメかぁ……)」




