誤魔化しますわ、何が何でも有耶無耶にしますわ
「つまり、キサルピナ様はエリーに報告するまでもなく勝ってきたってことですか!」
「そういうことになりますわね!」
乗るしかないですわ、この流れに。
なんかワタクシがめちゃくちゃ責められてる流れから逃げますわよ!
「キサルピナにとってはお茶の子さいさい、まぁ?昼下がりのティータイムみたいなもんですわ。なんか挑発されたって行ってましたし、きっと雑魚にでも煽られてうっかり?優勝したんでしょう」
「あーしのパパは女性に挑発しないタイプだしねー。むしろされる側?」
「へぇ……そうなんだ……」
「私の父上は雑魚か……」
「なに人の娘挑発してんですの?舐めてんですの?女だって舐めて負けたほうが悪いんじゃないですの!?よほどのことがなければ女性当主は領軍を率いる際は戦場に出るもんですわよ、舐めてんじゃねぇですわ!」
「それに関しては何も言えない……父が悪い……母にもまぁ、こう……怒られた……うん、怒られてたな、甘やかされて、怒られてたな」
「そう言えば御礼状が来た記憶がありますわ、舞踏会のことだと思って普通に返しましたけど……。まぁ当主が喝を入れたのならワタクシから言うことは何もありませんわ」
「いや、キサルピナ騎士長を舐めた父上が悪い、悪いんだが……。舞踏会と武闘会を間違えて参加してあっさり勝たれたのか……。そもそも舞踏会といって武闘会だと思われる普段のエリーの言動に問題があるんじゃないか?」
「え、淑女的でしょう?」
「えー……パパもそれで負けたのかぁ……。どうでも良かったけど複雑な気分?っていうか……う~ん、まぁいいや……ママ喜んでたし……」
「さすがギャル伯爵だな。騎士としての誇りか、負けたということは自分より強い、強者がいるということ。そういえばギャル伯爵は最近は……」
「最近はバルカレス男爵夫人として働いてるよ~……」
「ほう、夫の敗北を喜ぶほどだ……。夫婦で己を鍛え上げているのだろう」
「あー……そうだね、そんな感じ……かなぁ……?」
なんかマーグの口が重いですわね。
キサルピナに2人で挑むとかかしら?まぁキサルピナならなんとかなるでしょう。
きっと勝てますわ。いや、勝ちますわ。
「キサルピナ様、やはりお強いのですね」
「ワタクシの騎士長ですからね、ワタクシにはまだ勝てませんが」
「純粋なルールの上ならキサルピナ騎士長にはエリーも勝てないだろ……」
「勝てますわよ?相手の癖を把握してるんだから、なんならキサルピナが剣でワタクシが素手でも勝てますわ。だってどう動くかわかるんですから当然でしょう?これはワタクシがキサルピナに彼女の父の戦法を教えたからですわ、あと基礎部分もちょっとだけ……まぁ本当にちょっとですわね、心構えとかそのへんですわ」
「ああ、なるほど……。師なら弟子の動きが読めると言うのはよくある話か……」
「弟子が師を超えるほうが格好いいっしょ」
「物語ではそうだけど……現実は師を超えることは……少ない……。師が老人になったから勝てた……ばかり……現実は……甘くない……」
「はー、さっぱりわからんけど武術ってそんなもんなんやな、商人だと師を超えるとかようあるけどな、大商会だったりすると難しいやろうけど」
「作家も難しい、簡単に超えられる人間はいない。たまに勘違した人間が後ろ足でっ砂かけて出ていくけど長続きしない。……と思う……よ……?」
ベスはなんだか見たことあるような感じですわね。やはり作家先生のそういう噂話も仕入れてるのかしら?
作品の面白さが第1だと思いますけど私生活に問題が起きてしまうのも考えものですわねぇ。非がないのなら助けて差し上げたいくらいですけども。
「私にはよくわかりませんね、父を何を持って超えるのかもわかりませんし……。そもそも父は師なのかもわかりかねます」
「私もむしろ没落してるので……そもそも親は師なんでしょうか……?」
「我が家も親が師かと言われるとな……」
「ジーナさんは……」
「ジーナでいい……。というかもうみんな呼び捨てでいいだろう」
「まぁいいんじゃないっすか?」
「クラウはもうそう呼ばれてるだろう」
「正直ここまで話せたらどうでもいいしね~」
「良いんですか?」
「いいですわ、ね?」
まぁ、正直赤の他人でもなければ対して面識がない相手ならともかく、庇護を求めて情報を開示した相手ですしね。しかも趣味が合う。
それに勘がすごそう、そして面白そう。こんな人材から距離を置くなんてナンセンス、距離を縮めてこそですわね。しかも趣味が合う。
そして切り札に鳴りうる可能性が高い。あと趣味が合う。
これで行かない訳が無いではありませんの。
「では改めまして、ジーナ。お父様の跡を継がない予定だったのですか?」
「ああ、正直……。俺よりベスのほうが向いてたからな……。知ってるか?ベスはイノシシに弓で打ち勝てるんだぞ?農林官僚は獣を狩れなければいけないが……なぁ?」
「ジーナもそこそこやれてるではありませんの」
「こんな小さなスリングじゃ不測の事態に対処できねぇよ。暗殺されかけた時は俺はマジで焦ったからな」
「そうか?冷静そうだったが」
「待ち構えてるより大臣室の俺を強襲すると思ってたからな、暗殺者がアホで助かった」
「一応窓から逃げるように待機はしてたが普通に省の扉から入ってきたからな。大臣室を襲撃するか、馬車の帰路を狙うかであんなところにでてくるとはなぁ……」
「ずっと暗殺の爪が甘いですわねぇ……」
ララ「なんか忘れられてる気がするな」
ララ「まぁいいや、編み物編み物」




