どこへ持って行く気までかは知りませんわ
「あー……だめっすね!何も理解できないっす!」
匙投げましたわね。まぁこれで話に戻れますわ。
ジキル・リッパーのことで王家を追い詰めることもダメージも負うこともないでしょうに。
ただのトカゲの尻尾切りかなんかで死んだ小物なんてどうでもいいですわ。
まぁ、ジャック・リッパー男爵が失脚してないあたり働いてはいたんでしょうけどね。
それより大事なのはすり合わせですしね。
「まぁなんだかんだあって国王が死ぬわけですけどね」
「なんだかんだって、原因は公爵家でしょう?いえ、そうなったきっかけは王家ですが……」
「正直、深堀りしても王家が公爵家に暗殺未遂を働いたことは周知の事実ですし、先代国王を暗殺して手打ちになったと言う認識ですわ」
「ん?その割に……」
「────他の貴族はですけど。実際は積もり積もったものがあるから全然手打ちではないですし、ワタクシ達が一度でも手打ちだと言ったことがありましたかしら?皆様は国王が対立路線を明言したから続いてると思ってますけど……暗殺未遂がなくて和解提案しても正直どうなったかは知りませんわね、賠償も何も出来ないでしょう?」
「…………公爵家はエリーの前から王家を倒そうと思ってたのですか?」
「さぁ?あるいはジョージ第2王子に期待してたのかも?もっとも反公爵家路線だったみたいですけどね。それに関してはお祖父様も喜んで乗っかていたんだか絶対に殺してやると思ったのか、所詮は王家だからどうでもいいと思ったのかまでは知りませんわ。お祖父様ですもの、ただ王家への恨みはあったことは明言しましょう」
「つまり、先代公爵の頃から政変を狙っていたというわけか」
「そこまでですか……」
「つくづく失敗してるな」
「まぁ、どこまで考えてたかは知りませんわ、適当な傀儡王子でも立てる予定だったのか、王位につくつもりだったのか。そもそも……何も感がてなかったかもしれません、お祖父様ですし」
「「「ああ~……」」」
納得されてますわね、まぁワタクシも理解しきれない方ですし仕方ありませんわ。やはり、長年色々とやっている方は違いますわね。
考えてるのか考えてないのか全くわからないのにうまくいかせている。
未来でもお見えてるのか、はたまた……神でも味方につけているんだか。
まるでご都合主義のごとくうまくいっている、大いなる意思というものがあるのなら間違いなくお祖父様達についていますわね、ワタクシには多分ついてないんでしょうけど。
「そうなるとやはり暗殺は読めんな……」
「確証があってやったわけでもないんでしょうしね、あるなら……」
「公表して……討伐する……」
「しかし、私も国家転覆の確実な計画があるとは父からも聞いたことがありません、あくまで王家を…………いえ、王国を守るための対立路線だと言われました」
「王国ごと潰すことはないですわ、いや名称は変わるかもしれませんが」
「えっ、エリーは王国を滅ぼすんですか?」
「滅ぼすといえばそうですが、生まれ変わるのですわ。新しい国家に……。よくあることです、政治的混乱をほとんど起こさずにひっくり返しますわ。貴族の皆様もお受けには愛想を尽かしていますの、数々の失政、反乱の予兆、超法規的措置を講師したバカ王子、バカ王子が唯一の王太子候補。はっきりいますけど失政がなければこうはなりませんわ、第1王子が生きていたらこうはなりませんでしたしね」
「エリーは第1王子を買ってたんすね……」
「当たり前でしょう?なんでそんなことを聞くんですの?」
「公爵家を蹴るくらいだから評価が低いと思ってました」
「公爵家の力を借りずに愛する人と逆境をひっくり返す気概がなくてはこんな国に立て直せませんわ、まぁワタクシとの婚約を保留という形で蹴った時に国の状況に気がついていたかは知りませんけど。安易な道に進まなかったことも、愛を取ったことも、それがアーデルハイドだったことは高く評価してますわ。実際能力はついてきてたみたいですしね。誰かさんと違って」
「でも、エリーはトップに立つんすよね?」
「……?ああ、そういうことですの。確かに婚約は近道でしたけど、別に力付くで奪い取ってもいいではありませんの。あれは国王夫妻という大層な地位の維持のために国家を潰すほどのアホではありませんわ。そのほうが国のためになるのならワタクシに渡すでしょう。その判断も出来ないとしたらアーデルハイドが婚約していたとしても……いや、そもそもアーデルハイドがそんなアホには惚れないか、そうだと思うわ」
あの娘、結構人を見る目あったしね……。
多分、私よりも……。
「エリー?」
「ん?なんですの?」
「…………いやなんでもないっす」
「まぁ、実際そう上手くは行かないでしょう。第1王子の能力を持ってすればと小物連中もでかい顔して闊歩するでしょうし、公爵家の利権目当てに政治劇を繰り広げていたんじゃないでしょうか?」
「そうですね、否定はできません」
「実際近衛騎士とか酷かったしねー」
「商圏も第1王子の見えない権力盾にされたらどうなったかわからんしな」
「父も派閥がめちゃめちゃになった今と強大化した未来だとどっちで苦労したのやら……」
「軍は第1王子支持のままだろうな、つまり王家支持だ」
「私は……わからない……家は中立……かな?」
「家柄的にな……(小声)我が家は中立だと思う」
「私は経緯が経緯ですから……別に親王家ではないかと……」
「ピア先輩の経緯だとそう思うっす、我が家はわかんないっすね。第1王子の条件次第だったと思うっす。ただ第1王子が亡くなる前にはすでにエリー派でしたから相当な条件でもないと無理っすね、私が認めないっす。たとえアーデルハイドの頼みであっても……私はエリー派っすね」
「それいうたら個人的には第1王子が事故死する前からウチは全部突っ込んでエリー派や」
「そうなると、わからないのは私だけでしょうね……」
「キャスはワタクシ派ですわ、ワタクシが保証します」
「私の指示する派閥のことを私に対して保証するのですか……。そうですね、本心からエリー派だったんでしょうね」
そうですわよ、ワタクシの友人たちはワタクシ派ですからね。
クラウ「何が会ってもエリー派っす」
アーデルハイド「本人に言ったら?」
クラウ「聞かれたら言うっすよ?」
アーデルハイド「(じゃあ、やっぱりエリーに乗っかる以外にないわね)」




