ジキル・リッパーの死と報復がなかった理由
「正直、リッパー男爵家の人間を殺せただけで驚愕なんっすけどね。それも王妃の……第1王子妃にして次期王太子妃の監視役っすから」
「監視仲間……とか……?」
「ああ、それもありますわね」
「ジキル・リッパー以外報告に上がってないということは多分いないっすよ?調査したのルーデンドルフ侯爵っすよね?先代がジョージ第2王子賜死王城警護職を辞任したから多分必死っすよ?他に出てこないとしたら間違いなくいないとは思うっす」
「じゃあやはり市井の娘か?」
「残念ながら死ぬ前にどこで何してたかも不明らしいですわ」
「…………不明?そう言ってたんっすか?」
「何もおかしいことではあるまい?そういうこともあるだろう」
「監視されてるわけでもないしな(小声)」
「馬車もつかってなかったってことっすか?」
「そこまでは知りませんけど……。でも不明だったとはいってましたわ」
「どちらにせよおかしいっすね……。馬車を使ったならどこから来たか、せめて方角もわかるし目撃もあるはず、馬車でもないとしても目撃はあるはず……。つまり変装していた……?怪しくない貴族に見せないような?……なんで?いや監視役としてもすぐ出てくるくらいだからきちんと出仕する立場だったはず……。それがわからない?貴族の毒殺で?子息を毒殺した相手が平民の可能性がるのに?」
すごい考えてますわね。
ワタクシは別にジキル・リッパーのことなんてどうでもいいんですけども。
平民相手に毒殺されたのなら、間抜けでアホのろくでなし程度の扱いでひっそり片がつけられるかもしれませんけど、足取り不明の時点でおかしいですからね。まさかハニートラップにかかってしまったなんてこともないでしょう。というか遊ぶ女の事情くらいは調査するでしょう。仮に警察の調査を上回るスパイだとしたらもっと狙うやつがいるだろうという話ですしねぇ……。
先程も言いましたけど貴族に毒殺されたとして報復行為がないのはおかしいですからね。自業自得で殺されたとしても毒殺、そもそも暗殺なら報復するでしょう。飲み込む?まさか?貴族ですわよ?
王宮部署の監督官を家職にして暗殺者を率いるような連中が?何をどうしたら息子が暗殺されて仕方ないねで済ますっていうんですの?公爵家でも豊富クスrんじゃないですの?並みの家なら強い相手にやり返さないもあるでしょうけども……。
そんなふうに引き下がるような相手がどこに…………。
────いましたわね、唯一リッパー男爵家が引き下がる相手が。
王家とかいうとんでもないのが。
でもそれってどうなんですの?先代国王が亡くなるくなる前ですわよね?王宮医師にに復帰したの、いや王宮部署に復帰したんですわね。医師団の一人として。もっとも地位は違いますけど、それも多分王の頼みで。
えっ?どっちも頭おかしいんですの?
息子殺しておいて、父親を復職させて、父親が受け入れた?
…………は?なんですのそれ?
いやいやいや、流石に意味がわかりませんわ。
どっちも狂ってますの?
お前の息子を殺したけどちょっと医師として復職して護衛してくれ、息子殺されたけどいいよ。
なんですのこれ?流石に頭がおかしくなる話ですわね。
ないない。
いや、殺したのが現国王こと第1王子だったら?
引き下がるしかないですわね、唯一の後継ですし。
あれ?グリゼルダ妃ってリッパー医師が復職したときには亡くなっていたんですわよね?
じゃあ別に殺してもいいか、第1王子もいるし、バカ王子もいるし……。
最悪の場合、先代国王が適当に嫁を取って子ども作ればいい話ですし。
というか、それを望まれてたんじゃないかしら?第1王子であった現国王の当時の評判を考えると……。
第3王子で第1王子より優秀なら良しって感じで。
なんでかしら?やはり政治かしら?でも今更負け犬降伏国家の自称王国のオーランデルク公国に配慮なんていらないでしょう?刺激してまずいこともないし……。
グリゼルダ妃?だったら不義密通が漏れるヘマはしないか、アストレア妃の派閥?亡霊ごときがよくもまぁそこまで力を発揮できると思いましたけど派閥でまとめた時点で手強い既得権益化しますわね。
なんていやらしい敵でしょう、さんざん引っ掻き回して死んだアストレア王妃には先代国王も腸煮えくり返る思いだったんじゃないかしら?
やっぱり考えすぎですわね。
リッパー男爵家が敗北者に異様に冷たい可能性だってありますしね、毒殺された愚か者、我が家にふさわしくない、負けたほうが悪い、相手を讃えろ!みたいな過激な家かもしれませんしね。
暗殺者の家なんてそんなものでしょう、知りませんけど。
あるいは個人の行動として判断するから復讐行動には一切でない可能性だってありますわよね、貴族としてではなく暗殺集団のトップとして判断した場合ですけど。
何だこっちのほうがよく考えたらあり得るじゃありませんの。
王家がジキル・リッパーを殺して、ジャック・リッパーがしれっと医師になったよりはよほど……。
これ……ジャック・リッパーが息子の敵を討とうと医師で復帰してたりしないですわよね?
「いや、それはない……。ジャック・リッパーが友人である先代国王を殺す理由はない……。仮に不義密通相手が息子の場合流石に飲み込む……。あの時点では再婚して後継を作ることだって……何ら今でも……男は年をとっても子どもを作れるし……。うーん……。結局足取りを掴めないから殺した相手が上手で報復できなかった?」
というのがクラウの結論らしいですわね。
まぁ、それもありえますわね。
クラウ「いや……でも……」
アン「こうなると時間がかかる」
ピア「ポーカーやってるときもこんな感じですね」
ベス「へぇ……」
キャス「エリー、どうしま……」
エリー「…………」
ジーナ「時間がかかるな(小声)」




