アンはもうちょっと、こう……もう少し気をつけてもらって
「実は魔法を使えて髪の色を変える魔女の家とかあったりしませんこと?」
「だったら王家の権力がもっとあると思わないっすか?むしろ王家がもう倒れてるって思わないっすか?髪の色を変え続けるだけで破滅するっすよ?」
「……それもそうですわね」
「裏方をやりたくて……表に出たくないだけの家とか……?」
「わかったす、ちゃんと言うっす。そんな家は、存在、しない。いいっすか?」
残念ですわねぇ、魔女になって魔法をちらつかせて大陸制覇も楽しそうだったんですけど。
まぁ、おとぎ話や小説みたいにうまくはいきませんわね。
呪文を唱えるだけで顔を変えられれば好きに国家が混乱しますわね。
「バカ王子もきれいな金髪だしねぇ……。金髪の相手と不倫したんじゃないの?」
「先代国王とか?」
「そうなると先代国王は公爵家じゃなくて現国王に暗殺されたことになるな」
「先代国王はそこまでバカではないっす。王宮部署の差配や、グリゼルダ妃閥になるはずだった集団の牽制で息子まで敵に回してたらどうやっても壊れるっす」
「そもそも、ジョージ第2王子を賜死させる理由もありませんし、決定になってる当たりなにかはあったのでしょうしね……。ベス?キャス?一応聞いておきたいんですけど国王相談役会議のメンバーが先代国王がうっかり息子の嫁に手を出して妊娠させたからもうひとりの息子に責任を押し付けてしまおうなんて提案を……」
「ない」
「ありません」
まぁ、そうでしょうね……。我ながらアホなこと聞いた自覚がありますわね……。
「ですわよね、王を機密漏洩で立件したようなアルベルド・ゲルラッハ司法大臣もおりますし……」
「少なくともフリードリヒ第1王子が生まれる前に賜死っすから……」
「なんで生まれるまで待てなかったんだ?それから見極めれば容易かろう?髪色なんてだいたい両親のどちらかの色だろう」
「最近は……黒が増えてるらしい……」
「ああ、裕福な商人の娘と婚姻を結ぶ貴族が増えてるしな。まぁ……そんなもんやろ?準貴族の士爵くらいなら金貨でも積めばなれるしな」
「騎士と商人が同格か……」
「別にいんじゃね?戦うしか能が無いのと金稼いで経済回せるやつはどっちも必要っしょ。軽んじてたらどっちか終わるよ?別にまともに功績上げれば男爵位くらいはくれるっしー?」
「いや、別に軽んじてたわけではない。ただ我々の目的では……」
「かまいませんわ、功績があれば爵位なんてくれてやればいい、なければ下げるか奪えばいい。教育をしっかり出来てないほうが悪いんですわ。平民が腕っぷし以外でも優秀で……成り上がる先というものはどの職種にも作っておくべきですわ。平和が続くと戦時の人材があぶれて崩壊のフラグになるのなんてよくあること。そうでしょう?」
「法はどの地位でも平等だぞ(小声)」
「覚えることが多いから平民が司法省に入るには法律書やら何やら必要ですわねぇ……。カベが高過ぎますわ」
「まぁ、学ぶヒマがないな……(小声)」
「私達でも深いところは……出来ませんからね」
「読んでも……知識が身につくわけでは……ない……」
「読むだけで身につくならどれだけ楽か、暇な貴族の三男坊はみんな司法省で働いているでしょう」
「そして汚職で死ぬと(小声)」
「そして騎士が儲かる、手当出るしね」
「国は損をするんですが……」
「賄賂送った側も損はしてるやろ、そのあと摘発して財産盗られるんやろうけども……」
「ろくでもないことに変わりはないっす」
「それもそうね」
そのための教育ですしねぇ……。でも学院に平民ってそこまで入ってこないですし、生活あってこそですからねぇ……。
シャーリーといい金と時間があって自分を磨き上げなければ難しいとこですわね。誰でもいいわけではありませんし……。
ああ、そうだララ。なんであんな迂闊そうなのが入れたんだろうなんて思いましたけど……。公爵派閥の冬の命運を握っていた大金持ちですからね。
アーデルハイド達が推薦を、いや推薦を書いたのは第1王子だったかしら?なるほど推薦する価値はありましたわね。
でも本当に必要なのは、そんな裕福な成功者の平民の声ではなく……本当に平凡な平民の声なんですけどね。
そろそろ……あちらとも向き合わなければなりません。
エリーゼ・ライヒベルクとして……。
「まぁ、何にせよ……。どっちも国王の子どもだったってことっすね、疑われてはいたっすけど」
「そもそもなんでバカ王子の懐妊時に疑われたのかは一切不明か……」
「覚えがなかったとか?」
「神の使いじゃん、え?あれが?ないわ~」
「それこそ話が早いだろう、腹の子どもごと病死だ病死!」
「アンは不倫には厳しい……」
「貴族令嬢が不倫に甘いほうが危ないだろう!」
「既婚者……不仲な夫婦……恋に落ちるその旦那……相手は凛々しい軍人の令嬢……それがアン……」
「ふん、そんな不誠実な男についていくわけ無いだろう」
「送られる宝石」
「囁く愛」
「凛々しいね……。妻はおしとやかで散財ばかり……君は質実剛健そうだ、そして……」
「東屋に行かないか?」
「詩集が好きなんだ?君は?」
「視察に行くんだ……海の方なんだけど……」
「僕と遠乗りしないか?」
「…………」
これはダメそうですわね、ひょっとしてグリゼルダ妃ってこんな人だったのかしら?
ギャルゲ主人公「アンはかわいいよ」
ギャルゲ版アン「な、なんだと!そんな言葉で絆されると思うなよ!」
ギャルゲ主人公「ご、ごめん……でも嘘はないから……」
ギャルゲ版アン「…………そ、そうか、うん、褒められておこう」
ギャルゲ版エリー「うっわ……」
ギャルゲ版アーデル「処す?処す?」




