そう言えば忘れてましたわね、その人
「とにかく第2王子の冤罪が判明したから和解を模索した、ってことでいいっしょ?」
「そうですわね。公爵家がガリシア帝国と結びついたから慌てたとも取れますけど」
「実際ガリシア帝国は王国に影響力を発揮しているのですか?」
「だとしたらもっと楽ですけど、未来は真っ暗ですわね。属国として歩むだなんてそんな……。そもそも……ワタクシが顔も知らない祖父のために働きアリのように動くわけ無いでしょう?ワタクシはワタクシ、ガリシアなんてどうでもいいですわ。滅んだところで連中が愚かだっただけ、亡命すら拒否しますわ。まぁ、大人しくしているのなら小銭と家くらいやってもいいですけどね」
「これが従順だったらサミュエル王国は終わってたな……。俺もエリーはこの性格で良かったと思うよ」
「一歩間違えたらもうあったこともないお祖父様に頼みますわ!とかやってたのかもしれないのか……」
「その性格でするとしたらよっぽどの小物だな」
「使い捨て悪役……」
「三下やな」
「本当にこの性格で良かったと言うべきかは悩みどころです」
「キャスが冷たいですわ……」
「もう少し、こう……いやダメですね。そのままでいいです」
「そうでしょう?ワタクシは今が一番ですわ!」
「……まぁいいとして」
あら?もっと喜ぶところでは?
「王家からしたら第1王子を袖にされて公爵家に嫁ぐわけだから理由としては十分あるな。帝国の皇女でしかも長女が西の果ての国家の公爵家に嫁ぐわけだ。俺ならこんな面倒な……ゴホッゴホッ」
「無理しなくても大事なこと以外は小声で大丈夫ですわ」
「ありがとう(小声)」
「まぁ、ワタクシを王家に入れたがるのもわかりますわね。公爵家との手打ち、蛮族関連を王家がワタクシの下で主導できる、ガリシア帝国の血筋、遠いとは言え皇位継承に関われますしね。最も遠すぎて高位の継承順の人間からも軽視されるでしょうけどね。実際特に働きかけはありませんわ、こちらもあちらも」
まぁ、第1王子との婚約者の奪い合いで負けた敗北者くらいの情報は入ってるかもしれませんわ。バカ王子の婚約者になったから王妃が確定したとかも入ってるかもしれませんけど。
お母様がそのへんをどううまく扱ってるかまではわかりませんわね。
なにせお母様ですし。
「実際……大事だったらしい……。国王相談役の集まりで今後どうするかを話し合った……とか……」
「それはそうなるでしょうね、敵が大きな味方を得たわけですし」
「その後……グリゼルダ妃の懐妊もあって……公爵家で生まれる子供の性別で悩んでいた……らしい」
「生まれる子ども次第だからな、第1王女が生まれたら公爵家に嫡男が生まれたら嫁がせられる、公爵家が嫡女であればどちらにとつがせてもいい(小声)」
「まさかこんな公爵令嬢が生まれるとは思わんかったやろ」
「私はお祖父様やお母様に比べたら温和で平和主義ですわ」
「そんなわけあらんやろ」
「まぁ……否定はしないっす……」
「だから父も公爵夫人に国外に仕事を任せたわけですしね、後ろ指と嘲笑を背に受けてまで」
「聞かんでおくわ、話がぶれそうやしな」
「賢明ですわ、夕飯前に聞く話ではないですしね」
正直話したくもないですしね。過激すぎますわ、ワタクシのように優しい人間は胃がが痛くなりますわね。
「と言うか疑った割にあっさり2人目は作るんだな」
「子作りも公務だし?しゃーないんじゃね?」
「空白期間が怪しいな」
「さすがにそんな疑惑があった後では警備も厳しいでしょう、冤罪が晴れても疑われたに違いないですわ。まぁ……実際疑われたみたいですけど」
「疑われとるやないか」
「懲りろ」
「最も証明はできなかったみたいですわ、一番怪しかった人物が先代国王が送り込んだ監視役だったらしくて他にいないなら問題ないと」
「そいつの子じゃないか(小声)」
「そうだったの……?」
「ベス?」
「その人物の不義密通だと思ってた……。それだけ……」
「もっと早く話してほしかったな、いや……状況証拠だけか?」
「少なくとも……関係者から名指しで言われたことはない……」
「言えないでしょうしね、もっともベスですら漏らされてないのなら当該人物は国王以外には伏せられてたか、そのことを説明されて伏せられたかと言ったところでしょう、ああいや……伏せて当然ですわね」
「それは誰なんですか?」
「そうや、誰なんや?」
「現王宮医師筆頭ジャック・リッパーの子息ですわ。そう考えるとちゃんと裏で仕事はしてたんですわね。リッパー男爵家として追放されたから王宮部署に所属できずにそのように働いていたんでしょうけど。そう考えると色々理解できますわね、名前はしりませんけど」
「ジキル・リッパー」
「ありがとうクラウ、ジキル・リッパーは第1王子妃の不貞を監視して、もしかしたらジョージ第2王子をハメたのかもしれませんわね、それで第1王子妃の妊娠と出産を機に処断されたとか。あちらも急死ですからね」
「グリゼルダ妃の不貞を監視していた人間が急死した時点でおかしいやろ」
「なくはないですわ、先代国王はともかく第1王子の方は最初の不義密通疑惑の時点で、大事になったことを恨んだでしょうし、あるいは第1王子について第2王子を賜死に追い込んだから口封じをしたか。あるいは生まれた子どもが確実に不貞の子だから責任を取って始末されたか、もっとも帰ってきて調子を崩して亡くなったあたり毒殺だと思いますけどね。これほどの不始末なら同じように不義密通でもかけて殺したほうがいいと思いますけどね。ああ、ジャック・リッパーが友人だからかしら?でも子息の死後医師として王宮部署に医師として復帰してますしね、この頃には追放は解かれていたのか、別仕事だから問題なしと解釈したか、あるいはリッパー子息の働きで復職させたと見るべきかしら?」
「……それでもグリゼルダ妃が不貞の疑惑があってお腹の子どもが王家の血をついでいない疑惑があったからとも言えるっす」
「そういえばその説明をした時点で疑惑自体はかかってるわけですしね。口さがない話ではなく確実に囁かれるものはあったわけですわね」
蛮族化しない世界線のエリー「順当に第1王子婚約者になったしこのまま王妃になって立て直す」
ガリシア帝国「お前の婚約者側室持ってそっちを後継にするかもしれないぞ」
蛮族化しない世界線のエリー「やりようはいくらでもある、あと皇位継承権は私も持っていることを忘れるな。これ以上介入するようなら……」
ガリシア帝国「娘も手強いのか……」




