お祖父様が疑う気持ちもよくわかりますわね
「そもそもが迂遠すぎるのですわ。ジョージ第2王子は生前公爵家に対して直接的な害を与えましたの?」
「……知る限りではないっすけど、公爵家ではどうなんっすか?」
「先代国王暗殺ですら自慢する祖父から聞いたことはありませんわね。伏せるところは伏せる人ですけど。まったく、それどころか聞けば聞くほどそもそも関係してないことを確信したくらいですわ。政治的な行動をしてくるのならお父様でもけしかけていたでしょう。蛮族関係だったら間違いなく先代国王のように暗殺したはずですわ、賜死なんて迂遠な方法をとっても仕方がないでしょう。確かに、シャルロット・ライエン侯爵を権力者にして恩恵を得るためにそうした可能性はありますし、それが原因で友人が亡くなったから語らない可能性はありますけど……。完全に手を出される前にそこまでするのはお祖父様らしくはないですわ、レズリー伯爵家がなにもしていないのなら、リッパー男爵家も動いていないのなら王都の問題はお父様に投げていたはずですわ。そもそも公爵家も当時は蛮族対策で忙しかったはずですし、時期によっては対ロバツ戦争とかち合っています。役立たずのオーランデルクがロバツに屈して戦線が危険な直後にそんなくだらない陰謀をして公爵家が撤退したらサミュエル王国は終わりですわ。正直お祖父様がやった可能性もそれなりに考えていましたけど、レズリー伯爵家もリッパー男爵家も動いていないのなら間違いなくお祖父様がそこまでする理由はない、蛮族関係だとしたら賜死なんて甘い手段は取らない。先代国王陛下のようにわざと匂わせ喧伝するでしょう。もちろんそちらをしない理由もフリードリヒ王子が不義密通によって産まれた子どもであると面倒事になるから言わなかっただけか、冤罪が証明されたから失敗した陰謀と割り切って言わなかったとも思いましたけどね」
「ん、不義密通?」
「今は置いといてくださいまし」
「わかった……」
「つまり……ジョージ第2王子に関しては無関係ってことっすか?」
「クラウの言うことが本当なら王家もレズリー伯爵家もリッパー男爵家も動くわけがないのでそうですわね。そもそも王家が蛮族支援をし始めたのはおそらくジョージ第2王子の賜死後か、賜死が決定する前後ですわね」
「…………そうっすね」
「あら?当たったのね、意外とワタクシの勘もばかにならないわね」
「勘ですか?」
「野生の勘だね~」
「そう……その時期なんだね……」
「まぁお祖父様が悪しざまに言う話ってだいたいそのへんの時期ですからね、多分先代国王も公爵家を疑って工作をしたのでしょう。クラウ、ライエン侯爵家……シャルロット・ライエン侯爵はお祖父様を庇っていたのではなくて?」
「そうっす、和解の提案をしていたのは確かっす。その直後に第2王子領の解体などを指揮していた最中に……亡くなられたっす」
「そしてそれに関してはライヒベルク公爵家は一切関わり合いがありませんわね、交渉窓口になる王家に近い友人を殺しても仕方ないですし、むしろ王家が公爵派のシャルロット・ライエン侯爵を処理したとすら受け取ったでしょう。マルゴー・ライエン侯爵を祖父や父から紹介された覚えもありませんし、ワタクシが忘れてなければですが……接点は皆無ということは家の付き合いというより本当に友人だったんでしょうね。お祖父様は人間の好き嫌いが激しい方なので。マルゴー・ライエン侯爵に交代させることで公爵派の切り崩しを強引に進めたと解釈したんじゃないかしら?」
「たしかにタイミング最悪だな(小声)」
「王家が殺したと思われても仕方がないタイミングですね」
「お祖母様もこの時点で自分が死ぬとは思ってなさそうですね」
「王家直々の仕事の最中っすからね、発覚した場合は暗殺者も命じた家も族滅っすよ。貴族がやるわけがないと思うのは当然っすよ」
「結果として暗殺されたわけだがな」
「悲しい話ですわね。さて、アンが聞きたがってた不義密通の話でもしましょうか」
「そうだ!どう言うことなんだ!」
「単純な話、ジョージ第2王子の賜死の理由は第1王子婚約者グリゼルダ妃との不義密通ですわ。あら?意外と皆様知っていたんですのね?ワタクシつい数時間前に知ったばかりなんですけど」
「いや、驚いてるだけや。噂だけならあったけども荒唐無稽なもんも多かったからな」
「あーしは知ってるよ、その時代は騎士団も王宮に詰めてたしね。パパが王宮の警備してたんだよね、近衛騎士は重要区画と王族の部屋の周辺のみの少数精鋭だった時代だったらしいしねー。どこかで拡大したらしいけどね~」
「私は先程の反応通り初耳だ」
「私もです」
「俺は聞いたことはあった、冤罪として」
「私は……知りませんでした。父からは……」
「……ああ、そうですの。キャスには宰相も吹き込みづらいでしょうね、結果的に冤罪であったわけで吹聴したくなかったのかもしれません。ワタクシ達が生まれる前の話ですしね。ベスは?」
「知ってた……噂で」
「流石ですわ」
「ん?いや待て!それはどうやって冤罪の証明が出来たんだ?まさか潔癖だと言ってわかりましたと言ったわけではあるまい?」
「ああ、それは……」
「髪色っす」
取られましたわね……。
マーグ母「オタク(地方出身)くんさぁ……」
マーグ父「ギャ……ギャル(地方出身)さん……」
マーグ母「王宮警備真面目だよねー、あっ、ほらまた第1王子妃が癇癪起こしてる!ウケる~」
マーグ父「え、ええ……そうですね。宥める人をよんでこないと……」
マーグ母「別によくね?」
マーグ父「えぇ……?」
マーグ母「オタクくんさぁ……そろそろ名前お教えてよ、あーしはジャンヌっていうんだ~」
マーグ父「カリウスです」
ジョージ第2王子「こうして騎士がイチャイチャしてる間に癇癪がひどくなったグリゼルダを宥めるのに失敗してぶん殴られたのが俺ってわけ」
マーグ「こうしてその犠牲の上に産まれたのがあーしってワケ」




