好き勝手妄想されてますわね
「そうですわ、それ以外に答えがあって?」
「いや、その……仮にも次期国王だぞ!王太子は確定しているも同然だったんだぞ!そんな国を背負うべき人間がそんな私利私欲に近い……」
「それをいったらアーデルハイドは次期王妃ですわよ?アーデルハイドが第1王子に同じように言い寄った相手がいたらどうすると思いますの?」
「ひと想いに殺してやれ!慈悲はないのか!」
「なにすると思ってますの!?」
暗殺よりひどいことすると思われてるじゃないですの!こんなときこそ普段の行いが重要ですわ。
アーデルハイドが聞いてたら起こりそうですわね、でもワタクシのほうが慈悲と優しさに溢れてますし……ねぇ?
「じゃあ逆にワタクシが……」
「するのか?誰にそれをやったらわざわざ殺しに行くんだ?アーデルハイドのときですら自分から殺しに行かなかったのに?」
「八つ当たりはしたじゃないですの」
「仮にエリーに好きな男ができたとしてそうする想像はつかないな」
貴女なら容易に想像がつくんですけどね、最終的に在学中に母親になる姿すら想像がつきますわ。
まぁ行動に出てない時点で婚約者の……元でしたっけ?また忘れましたわ、もうすぐ永久に消え去る人間ですしなんでもいいですわ、ポート伯爵子息のことは。
少なくともそこまで好きではなかったと思うんですわ。
でも、恋に身を焦がすのもよいのではなくって?人生で一度くらいそういう経験をしてみれば……。
”私が第1王子殿下のことを好きだから婚約したいの!”
6年経っても変わりませんでしたものね、案外人って簡単に変わるものなんでしょうか?それとも……。
まぁ、いいでしょう。愛を貫いて終わるもよし。
どうせ一度の人生、運が悪ければ死ぬだけということですわ。
「いや、こういうタイプが一番ムッツリでいきなり執事とかに任命してそのまま夜伽をさせるぞ」
「どっちかといえばアンがやりそうっす」
「あーしもそんな気がする」
「私は!段階を!踏む!」
「段階を踏むって退路を断つんだろう?(小声)」
「実際……エリーは……惚れたら相手に告白させそう……多分……」
「自分で行くと思ってました」
「ウチもそんな感じはする、変装してじっくりいくけど告白された後で実は公爵令嬢ですわー!とか多分やるやろ」
「あぁ……やりそうですね」
「ほら、今日会ったピアにも言われとるんやでそういうやつや、ピアでええか?」
「いいですよ」
「ほな自己紹介の時も言ったけどシャーリーでええよ、敬称はいらん」
「ありがとう、シャーリー」
なんだか感傷に浸ってる間に好き勝手言われてますわね……。
ふーん、でもいいんじゃないですの?変装して惚れられるならワタクシの魅力も本物ということでしょうしね。
「いーや、絶対無理やり押し倒して既成事実を作る、エリーはそういうことするぞ」
「それ、あーしのママのやり口」
「…………と、いうことはこの作戦はありか?」
「なしだと思うっす……」
めちゃくちゃ気になる話をしてますけど、これに首を突っ込むと惚れた相手を押し倒す公爵令嬢という噂が流れる気がするからやめておきますわ。
「はー遺品整理か、そうかライエン侯爵時代の財産や美術品もあるんやしな。ソレニバンサ伯爵のものもあるし……」
「そうなんですよ、処理したいのですがやはり私の立場と職が邪魔して」
「まぁ、友人のためやし一肌脱いだる、そのかわりマッセマー商会のウチの店舗で……」
「ええ、ぜひ」
「この後あいてるなら」
「そうですね、夕飯も作らねばならないので物品査定がてら夕飯でも」
「決まりやな、ほなちょっと外すわ。口硬い連中しかいないが信頼できるやつ声かけてくる、エリー数分外すで」
「はいですわー」
こちらはこちらで違う話をしてますわね。まぁ顧客の開拓もできて、処理に困る遺品も整理できて双方WINーWINですわね。
夕飯までに帰れなかったらどうなるかしら?話を引き伸ばしてみようかしら?
「それでは第1王子がベガ子爵令息を暗殺した話はこれでいいですね?」
キャスの呆れたような口調にアンもああ、そういえばそうかといった感じで頷く。
貴女が気にし始めた話ですわよ?
「そういえば……二省炎上事件でベガ子爵……ベガ元子爵は司法省に戻る話があった……らしい……。法務関係に戻る話があったけど……子息が死んだとかで……」
あーらまぁ徹底的だこと、なるほどね。牽制もあったかもしれませんわね。
もしくは自分で処断しないことに業を煮やしてたけど省復帰は逆鱗に触れたか、息子も裁けぬ人間が復帰するとは何事かといったところですか。
まぁこっちが建前で本音はよくも俺のアーデルハイドに言い寄りやがったなと言ったところでしょうけどね。
ほら、皆その話を聞いてもあーそういう建前ねみたいな顔してますわ。
アンですら先程の話のせいでああ、それで暗殺を命じてたんだなって顔をしてますわ。
まぁ、新しく婚約者になった相手に数年前言い寄ってたから殺せ、はいわかりましたとはいかないでしょうしね。
むしろ、理由ができたことにより第1王子の嫉妬深いなコイツ感が増しましたわね。
この国ってまともな王族はいませんの?
ライヒベルク公爵家(準王族)
ガルニ・ライヒベルク先代公爵「国王ぶっ殺そうぜ」
アザト・ライヒベルク公爵夫人(伯爵家出身)「じゃあツテを使って暗殺者送っておくわね」
ゲハルト・ライヒベルク公爵「…………(陰謀裏工作)」
アリア・ライヒベルク公爵夫人(帝国皇女)「この国は王家の質が低い、簒奪のほうが早いんじゃないの?」
エリーゼ・ライヒベルク公爵令嬢「ワタクシこそがトップに立つのですわー」




