はい、話してくださいまし
「はいっす……」
めっちゃ嫌がってますわねぇ……。そこまで伏せることあるのかしら?
「リッパー男爵家が王宮部署監督官を家職としていた。そこまでは聞きましたわ。追放理由が先代のアストレア王妃であったことも、で?どれから話していただけますの?追放に関して?」
「じゃあ話してたからそこから話すっす……」
ベスをチラチラ見ながらそう返答するクラウ。何か言われて困ることでも?
「まず、アストレア先代王妃の母国はオーランデルクっす」
「あれ?ロバツの腰巾着国家じゃん?元気してた?」
「事実上の属国だな、あれはロバツとの戦争で泳がせるべきだな。役に立たないからロバツ軍を引っ掻き回してくれるだろう」
「ろくな産業があらへん国やな」
「ああ、あの自称王国。滑稽国家から産まれたのですか?それまた結構な……」
「エリー?滑ってね?」
「ん?……違いますわよ!これは偶然……」
「いや、いきなり前王妃の母国の話から入るのは話ずらそうとしてね?ってことなんだけど」
「まぁいつも滑ってるとは思うけど(小声)」
「ああ、そういうことですのね」
ワタクシ、言ってもいないダジャレで変に見られるのに今とーっても敏感なんですわ、やめてくださいまし!
あと、ジーナ?いつも滑ってるってどう言うことですの?何が滑ってますの?後で教えて下さいます?
「いや、背景事情を説明しようかと思ってたっす」
「どうせロバツの阿呆どもとの共闘路線での婚姻同盟でしょう?いや正式にはなかったはずですわね……前段階交渉ですわね。第1王子こと現国王がその地位になる前に関係を改善していってとか甘っちょろい判断をしてたんでしょう?」
「その通りっす」
「それでアストレア王妃の病死で影響力の行使ができなくなったということでしょう」
「よくある話だな」
「ありすぎて飽き飽きするような話っすね」
「陰謀説……はなかった。おそらく……病死……のはず」
「それどころか今のオーランデルクは敵国やしなぁ、影響力を行使できたとしても祖国がロバツに屈した時点で王妃としてはなぁ……」
「当時はまだ屈してなかった(小声)」
ベスがそういうということはおそらく本当に病死なんでしょうねぇ……。
「それで?」
「側室の血筋の問題っす……」
「ああ、なるほどね、そういうことですのね」
「ああ……そういうことですか」
王国で次期宰相の呼び声高いシャルロット・ライエン侯爵の夫がバンサ伯爵家に連なるものである以上は警戒してしかるべきだったということですわね。
ああ、それとアガサ・キンゼー男爵令嬢の叔父がジャック・リッパー男爵ですものね。
政敵になりうる側室の叔父が王宮部署を牛耳っているというのは政治的に看過し得ない出来事ですわね、実行に移したということは明確に関係性は悪かったのかもしれませんわね。
あそこは血族主義ですからね、自分とは血の繋がらない第2王子なんて王族とすら認めなかったのかもしれません。
そうなるとアガサ・キンゼー男爵令嬢が暗殺した疑惑もありますけども……。王妃が死ぬなんて大問題もいいとこですからね、徹底的に調査されたはずですわ。
そもそも警備も厳重だったでしょうし、側室がそれを害するのは不可能に近いでしょう。王家も護衛をどうにか出来てもオーランデルクからついてきた侍女たちもいるわけですしね。
単純に不祥事になるし、当時の王国もロバツに対しては押される一方でしたし……。オーランデルクとのパイプも切れてしまいますしね。仮に暗殺に成功したとしてもオーランデルクの耄碌爺が第1王子の祖父として、近い未来で国家方針を指示して内政干渉をバリバリやってくる可能性だったってあったわけですわ。
そうしたら、どちらにせよ母のアガサ・キンゼー男爵令嬢もジョージ第2王子も処分されるでしょうね。自分で自分の首を絞める可能性が高まりますわ。
その後勘違いして王国名乗って国王になってましたけど、現国王がああ言う性格でなかったら従ってたかもしれませんわね、そうしたらどれだけお祖父様達が苦労したか気になるところですわ。
とにかく先代王妃は生かしておいたほうがいいですからね、仮に亡くならずにジョージ第2王子が頭角を現した後で王妃が側室を処断した、もしくはしようとしているなんて馬鹿げたことになればそれこそ国内の反発が強まりますし、ロバツの危機に見捨てるべしとなるでしょうからね。
オーランデルクの国家規模からしても、そのような真似をしたら王妃を廃妃は確実、ロバツ戦線で多少の地位ある協力国ではなく、使い捨てる駒以下の存在が出来上がるだけですわね。
なりふり構わずと言っても限度というものはありますわ。当時は正式には公国だったのですからあちらのほうが下なんですもの。いまでも自称王国で公国だと思いますけど役立たずに国家の地位はいりませんわね。
爵位はともかく有力貴族の一族、それを迂闊に処断して殺すような真似をしたらそれこそロバツの方に情報を流す連中もいるでしょうね。
敵国に情報を流して溜飲を下げるくらいお茶の子さいさいですわ。
うーん、貴族らしいですわねぇ……。
オーランデルク先代国王(耄碌爺)「支援せよ、予はそなたの祖父である、家長の言うことは絶対だ」
現国王「何を抜かすか、役立たずの害虫が!貴様が余の上に立ったことなぞないわ!」
オーランデルク新国王「ロバツの属国化してるし、サミュエル王国は先代が命令権を使って内政干渉をしていたせいで外交が終わってる……」




